つくろう、島の未来

2024年04月20日 土曜日

つくろう、島の未来

島の祭に魅せられたカメラマンの島祭コラム「百島百祭」。今回は、遣唐使の寄留地や倭寇の根拠地として、大陸との交流の中継基地として栄えた福江島の天下の奇祭「へトマト」全4編の第3編。島々に息衝く、祭の魅力をお届けします。

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長崎・福江島のへトマト3

ススを持った若者たちが見物人を追い回す様子は、祭の本質を見たような気分にさせてくれる。その後、青年団と消防団による綱引きが行われ、いよいよ長さ3.5メートル、重さ350キログラムの大草履が登場すると、奇祭「へトマト」の盛り上がりは最高潮に達した。大草履には、本来の大きさの草履も付けられているのだが、大草履の前ではミニマムサイズで、まるでかわいい携帯ストラップのように見える。その対比から大草履の大きさがよく分かって、それを担ぐ男たちの凄さが目に見えて感じることができた。

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島の屈強な若者たちに担がれた大草履が集落内を練り歩くと、見物人の女性たちが逃げるのだが、最終的には捕まり、大草履に乗せられ、胴上げをされる。大草履に乗せられる女性は、未婚の女性というルールがあるが、逃げまどう女性たちを見ていると、プライベートを知られたくない……という気持ちがあるのかも知れない。それでも大草履に乗ると子宝に恵まれるといわれているので、多くの女性たちが乗っていった。

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多くの女性たちを乗せながら、集落内を大草履が練り歩く様は、なんとも異様で、見ごたえのある島の祭らしい面白い光景だ。それでも、ずっと昔からこの光景が続いてきたのだろうなぁと思うと、とても由緒あるモノに見えてくるから不思議なものだ。

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「長崎・福江島のへトマト4」へと続く

◆祭情報◆
日程 毎年1月第三日曜(※2016年は、1/17)
場所 福江島(長崎県五島市)

離島経済新聞 目次

【連載】百島百祭

野宿で日本各地の島を旅していた10年前、偶然出会った島の祭に魅せられたカメラマンの島祭コラム。島々に息衝く、祭の魅力をお届けします。

黒岩正和(くろいわ・まさかず)
写真家。21歳より、日本の島の風俗・祭事を撮影(2013年現在300島以上を撮影)。主な撮影テーマは、日本の島・山岳少数民族の風俗・メコン河流域の風俗・ 棚田などの稲作文化・戦国史跡など。
http://kuroiwamasakazu.com/

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