つくろう、島の未来

2024年10月15日 火曜日

つくろう、島の未来

島の祭に魅せられたカメラマンの島祭コラム「百島百祭」。今回は、古い漁村の面影を残した家並みがあり、香川県の県庁所在地高松市の約20km北東沖に位置する小豆島(しょうどしま)の虫送り(肥土山)後編。島々に息衝く、祭の魅力をお届けします。

香川・小豆島の虫送り(肥土山)2

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いよいよ火手(ほて)に火を移して、肥土山離宮八幡神社から田んぼの畦道を通り、ゆっくり蓬莱橋(ほうらいばし)まで歩く。昔は農村地帯が続く中山・肥土山(ひとやま)・黒岩・上庄と集落ごとに火をリレー方式で海まで繋ぎ、海の彼方に稲虫を追い払っていたとのこと。現在は、海に繋がる伝法川(でんぽうがわ)の蓬莱橋から火手を川に落とすようになったのだが、虫送りを行う地域が少なくなっても瀬戸内海に稲虫を送るという伝統を残しているのは流石だと思う。

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肥土山離宮八幡神社を借景にした火手の炎と、青々とした稲のコントラストがとても美しく、田んぼの畦を列になって歩く様は幻想的な光景だ。水田に映る炎も美しく、どこかセンチメンタルな気分にさせてくれる。小さな子どもは大人と一緒に火手を持ち、その様は親子の絆も確かめ合っているようで、夏の夕暮れの中、見ているこちらも幸せなひとときを味わった。約1キロに渡り行われた虫送りも、集落と集落の境目となる蓬莱橋で終わりとなる。伝法川へと投げられた火手が、行事の終わりを告げる炎となって燃えていた。

 

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300年以上も続いている肥土山の虫送り。何世代にも渡って受け継がれてきた農作物への感謝の想いが溢れた行事だった。長きに渡り、この幻想的な光景が続いてきたのだと思うと感慨深いものだ。復活した中山地区の虫送りと共に、これからもずっと続いていってほしいと願う。

 

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◆祭情報◆
日程 毎年半夏生の日(※2015年は7月2日)
場所 小豆島(香川県小豆島町)

     

離島経済新聞 目次

【連載】百島百祭

野宿で日本各地の島を旅していた10年前、偶然出会った島の祭に魅せられたカメラマンの島祭コラム。島々に息衝く、祭の魅力をお届けします。

黒岩正和(くろいわ・まさかず)
写真家。21歳より、日本の島の風俗・祭事を撮影(2013年現在300島以上を撮影)。主な撮影テーマは、日本の島・山岳少数民族の風俗・メコン河流域の風俗・ 棚田などの稲作文化・戦国史跡など。
http://kuroiwamasakazu.com/

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