つくろう、島の未来

2026年03月13日 金曜日

つくろう、島の未来

島国・日本には約420島の有人離島があり、その暮らしには船や飛行機が欠かせません。
近年、船価や燃料の高騰、船員不足などの問題により減便や廃業が増え、島の暮らしや経済に大きなインパクトを与えています。

こうした中、いかに「航路」を維持することができるか?
豊かな自然、多様な文化や産業が存在する島々の営みを守ることができるか?

航路維持のための「アイデア」と「お金」について、行政・研究者・民間企業・支援団体の皆さんと語り合いました。

協賛・株式会社キャンパスクリエイト

宮里哲
座間味村 村長
1967年座間味村出身。1994年に座間味村役場に就職。2009年より座間味村長となり現在5期目。沖縄県離島振興協議会会長、全国離島振興協議会理事等を兼務。趣味はノルディックウォーキングとマリンレジャー。


行平真也
九州産業大学 地域共創学部 地域づくり学科准教授
大分県出身、博士(工学)。大分県職員として8年間の勤務を経て、2017年4月〜2019年3月大島商船高等専門学校で教員を務め、2019年3月より九州産業大学講師、2024年4月より現職。フェリーや離島航路の研究を行う。離島航路関係の委員会や航路改善協議会などの委員として全国の島に関わる。
https://researchmap.jp/masaya-yukihira


野本圭介
海洋事業部 海洋船舶チーム 准チームリーダー
筑波大学理工学群卒業。日本財団ではパラリンピック関連団体の立ち上げや子ども第三の居場所事業などに携わり、現在は海洋事業部所属。造船貸付事業のほか、無人運航船プロジェクトMEGURI2040、水素を活用したゼロエミッション船プロジェクト、洋上風力人材育成、南鳥島の海底資源プロジェクトなどを担当。


木村裕人
株式会社エイトノット代表取締役CEO
カリフォルニア州立大学を卒業後、アップルジャパンを経てデアゴスティーニ・ジャパンでロボティクス事業の責任者を務める。バルミューダでの新規事業立ち上げやフリーランス活動を経て、2021年3月にエイトノットを設立。小型船舶の自律航行の技術開発に取り組む。
https://8kt.jp/


鯨本あつこ
認定NPO法人離島経済新聞社 代表理事・統括編集長
地方誌編集者、経済誌の広告ディレクター等を経て2010年に離島経済新聞社を設立。「島の宝を未来につなぐ」ことを目的に、国内400島余りの有人離島地域の情報発信および地域振興事業を行う。


深刻化する離島航路の現状

鯨本:
まずは離島航路を研究されている九州産業大学の行平真也さんより、現状と課題をご共有いただきたいと思います。

行平:
近年、離島航路を取り巻く状況は非常に厳しくなっています。隠岐諸島の隠岐汽船さんや奄美群島の奄美海運さんの「減便」や、広島市の似島(にのしま)のように事業者が「撤退」する事例が起きています。

隠岐諸島と本土を結ぶ隠岐汽船では、慢性的な船員不足から2025年6月より繁忙期を除き、3隻体制から2隻体制へと減便になった(写真:離島経済新聞社)

島〜本土間、あるいは島〜島間の移動が船しかない島では、船は文字通り「生活の足」であり、その確保・維持は極めて重要です。

現在、全国には276の離島航路があり(2024年4月現在)、そのうち126航路が「国庫補助航路」(唯一の航路かつ赤字状態にある航路を対象とした補助制度)として、運営補助金(欠損見込額の2分の1)を受けています。

離島航路と一口に言っても、本土から近い航路もあれば、奄美群島のような「遠い遠い航路」もあり、島の規模や人口、生活様式はさまざまです。しかしながら、共通する課題は「人口減少」です。

人口減少は利用者減少に直結し、特にコロナ禍の影響もあって多くの航路で経営が悪化、撤退・休止・減便につながっています。また、少子高齢化は経営者の高齢化や、さらには深刻な船員不足とリンクしています。

船員の有効求人倍率は非常に高く、さらに、始発港が離島である場合は居住も必要になるため、船員確保のハードルがさらにあがってしまいます。

こうした厳しい現状を打開するためのアイデアとして、私は以下の3つを提案しています。

【1】母港変更
船員が島側に居住する課題に対し、母港を「本土側」にすることで問題を改善しようとする試みです。三重県鳥羽市では2026年4月に航路の母港が本土側になる予定です。

【2】小型船舶化
九州では現在6航路が小型船舶に切り替わっており、運営の効率化を目指します。

【3】共通予備船の建造
福岡県では複数の航路運営事業者が互いに使用できる「共通予備船」の建造の計画が進められています。

まずは島の方々が自らの航路の現状を知ることが、問題解決の第一歩だと考えています。

鯨本:
ありがとうございました。

行政の立場から見た航路維持のリアルと財政的な課題

鯨本:
続いて、有人離島の暮らしを守る行政の立場から、沖縄県座間味村の宮里哲村長に、村での取り組みと財政的な課題についてお話しいただきたいと思います。

宮里:
座間味村は沖縄本島から西に約40kmに位置し、有人島を3つ抱える離島自治体です。産業構造の91.7%が第三次産業、つまり観光産業に特化しています。

美しい海が広がる座間味村。座間味島、阿嘉島、慶留間島の3島に約830人が暮らす(提供:座間味村)

かつては「貨客船1隻」体制でしたが、平成10年にフェリーに切り替え、その後「高速船クイーンざまみ」を就航させ、現在はフェリー2代目、高速船3代目、そして島間を走る小型船「みつしま」の3隻体制で運航しています。

沖縄本島の泊港から高速船またはフェリーで50〜120分で渡ることができる(座間味村ホームページより)

高速船の導入によって、観光客は年間8万人前後から直近では12万人を超え、人口800名強の村に12万人超の観光客が訪れるという、非常に大きな経済効果を生んでいます。

高速船の就航は観光産業の活性化だけでなく、島民の生活様式も大きく変えました。それまでは那覇での通院や用事に2泊3日を要しましたが、高速船のおかげで日帰りが可能になり、住民の利便性が向上しました。

財政面では、沖縄県全体の離島航路に対して、国の「沖縄振興予算」を活用した「離島住民割引制度」を導入しています。これは、船をJR並み、飛行機を新幹線並みという基本的な考え方のもと、割引後の金額以外を国費で賄う制度です。

座間味村〜沖縄本島を約50〜70分でつなぐ「高速船クイーンざまみ」(提供:座間味村)

しかし、物価高騰、特に燃料費の高騰、ドック費用や修繕費の増加により、経営は厳しさを増しています。ドック費用は前年度の1.5倍など、想像を超える値上がり幅になっています。座間味村では今年1月1日から運賃を約35%改定せざるを得ませんでした。ただし、離島住民割引の金額はJR並みという大前提があるため、国や県との交渉を経て、割引制度の金額を変えることなく運航を継続しています。

運賃改定の背景には、親会計、いわゆる一般会計からの持ち出しの増加があります。昨年は約2億円、その前の年が1億9000万円程度の持ち出しがあり、これが続くと一般行政経費が減り、行政サービスに支障をきたす、さらには財政調整基金(普通預金)が減るという厳しい状況に直面します。

座間味村内の島々をつなぐ「村内航路みつしま」(提供:座間味村)

また、現行の赤字補填制度である「事前内定方式」にも課題を感じています。翌年度の赤字額を仮計算して承認をもらう制度ですが、昨今の物価高騰の中では次年度の計算が難しく、一旦黒字で計上し承認されると、後で赤字に転落しても国の補助金がないなど、制度設計に無理が生じているのではないかと考えています。

ぜひ現状を踏まえた制度への見直しを検討していただきたいというのが行政の現場からの強い要望です。

鯨本:
ありがとうございます。一般会計からの持ち出しが増えるということは、自治体運営そのものの難しさにつながり、航路維持が行政の大きな負担になるという、まさに「お金」の問題が浮き彫りになりました。

民間技術が切り拓く自律航行船の可能性とインパクト

鯨本:
続いては、「アイデア」の部分、特に民間技術による解決策として、船舶の自動運転技術を開発されているエイトノット代表の木村裕人さんにお話を伺います。

木村:
エイトノットは、船舶の「自動運転」技術開発を行っている会社です。海の道を守るために、今の形のままで存続できるのかという問題意識のもと、技術の力で支援できないかと活動しています。創業5年で、既に一部離島航路でも技術を活用いただいています。

株式会社わっか(愛媛県今治市)は、エイトノットの自律航行技術を採用することで、「ひとりの船長」でも観光船や海上タクシーとしてできるサービスの幅を増やしている(写真提供:エイトノット)

私自身の原体験は、海が好きでボートを運転する中で感じた「操船の難しさ」です。この難しさが、船員不足が懸念される中で採用の間口を狭め、定着率を下げている一因だと考えました。 船舶事故の多くは「ヒューマンエラー」が占めており、他の船の見落としや操船コントロールの失敗が主な原因です。現在の船の安全は、長年の経験を積んだベテラン船員のスキルに完全に依存しており、ミスが事故につながっています。

小型船舶が関係する事故のうち約72%がヒューマンエラーによって起きている(提供:エイトノット)

我々の技術は、そうしたヒューマンエラーをカバーし、誰でも安全な航行を可能にすることを目指しています。事故の減少、船員不足の緩和、船の利活用幅の拡大を実現したいと考えています。

我々が開発した「エイトノット AI CAPTAIN」は、既存の船に「後付け」が可能で、カーナビのように目的地を指定するだけで船舶が自動で動きます。 道中の他の船や障害物もセンサーで検出し、自動で避航し、着岸まで自動で行います。これにより、船長さんは周辺の「安全監視」にフォーカスでき、船員さんの業務負荷を大幅に低減できます。

「エイトノット AI CAPTAIN」では、AI技術で他船や障害物を回避。最適なルートを選び航行する(写真提供:エイトノット)

広島県の大崎上島での事例では、自律航行船を使った夜間・早朝の輸送サービスや二次離島への物資配送サービスを実施しました。

これは試験営業航行として実際に旅客を乗せて運航しており、夜間でも安定して走れるため、フェリーが走っていない時間帯も島と本土を行き来できる環境づくりができました。

AI技術による自動航行システム「エイトノット AI CAPTAIN」を活用したスマート海上バス「ゆき姫」の夜間運航風景。実証期間中は、定期便が運行しない夜10時以降に大崎上島〜本土に移動できる貴重な足として活用された(写真提供:エイトノット)

船長さんからは、「人の経験」と「システムがセーフティーネットになる」ことで、2人体制で安全を監視監督できるのが非常に良いというフィードバックをいただいています。 また、熟練者と未経験者の間でばらつきがある操船スキルが、システムで均一になることも運航管理側から高く評価されています。

エイトノットが提供する「エイトノット AI CAPTAIN」はほぼ全ての小型船舶に後付けができる(提供:エイトノット)

現行の法改正上、「無人」での運航はまだ無理ですが、次のステップとしては、我々のシステムを導入することで、人員が足りなくても動かせるような環境づくりを、国と連携しながら制度の面からも進めていきたいと考えています。

鯨本:
ありがとうございました。

国際競争を意識した無人運航船開発プロジェクト「MEGURI2040」

鯨本:
続いて、こうした先進的な取り組みを支援されている、日本財団海洋事業部の野本圭介さんに、無人運航船プロジェクト「MEGURI2040」についてご紹介いただきます。

野本:
日本財団はボートレースの売上金を元に、助成を中心とした公益活動を行っており、予算の半分を海や船の分野に充てるという使命を持っています。

私どもが今進めているのは、無人運航船プロジェクト「MEGURI2040」です。背景にある課題は木村さんのお話と全く同じで、内航海運の人口減少、物流と有人離島の足の維持の課題、そしてヒューマンエラーによる海難事故の多さです。この社会課題に対し、技術開発で挑んでいます。

無人化・自動化の動きは世界中で進んでいますが、個社の開発では時間がかかり、国際的なルール作りで日本が遅れを取るリスクがあります。

そのため、競争領域と強調領域を分け、「オールジャパン」で取り組むことが重要だと考え、このプロジェクトを立ち上げました。既存の造船・海運企業だけでなく、通信、AI、商社といったイノベーションを起こす企業も含めた53社が参画しています。

「MEGURI2040」に参加する離島航路旅客船「おりんぴあどりーむせと」は2025年12月5日、国内初となる「自動運航船」として国の船舶検査に合格。一般旅客が乗船する定期船としては世界で初めて、自動運航機能(自動運転レベル4※2相当)を活用した“商用運航”を開始した(提供:日本財団)

2022年に6隻の船で「社会実証(ステージ1)」を行い成功を収め、現在は「社会実装(ステージ2)」として実用化に取り組んでいます。

ステージ2では、国土交通省、海上保安庁と連携し、国内法令上の位置づけや保険などについても議論を進めています。また、ロンドンの国際海事機関での議論に繋げるなど、国際ルール作りにも貢献しています。

具体的な開発目標として、離島航路船「おりんぴあどりーむせと」を含む4隻の自動運航化を進めており、「おりんぴあどりーむせと」は昨年12月5日に自動運航船の証書を取得し、ルール上、自動運航が可能な船として動き始めています。

国際両備フェリー(株)が運航する「おりんぴあどりーむせと」は、全長約66メートル・旅客定員数500名。新岡山港(岡山市)から土庄港(香川県・小豆島)を結んでいる(提供:日本財団)

ただし、我々の目的は「無人」にすることではなく、「船員の働き方改革と安全性」の向上、ひいては「物流と有人離島の足の維持」に繋げることです。

自動運転は、自動車でいう「レベル4相当」を目標としており、風速や波高などの「ODD(運行設計領域)」といった特定条件下で完全自動運転が可能となります。システムには、人が注意すべき事象が発生した場合に船長に「アラートが出る」機能も搭載されています。

「おりんぴあどりーむせと」に搭載される自動運行装備(提供:日本財団)

さらに、船員不足や拘束時間という課題に対し、船から船員を減らすのではなく、「陸上から複数の船を同時に監視・航行支援を行う」ための「陸上支援センター」の開発も進めています。

鯨本:ありがとうございます。「MEGURI2040」プロジェクトは、技術開発だけでなく、制度設計や国際ルール、そして船員の働き方改革という、航路維持に不可欠な要素を総合的に捉えた取り組みだと感じました。

制度の課題と超高額な船舶更新費用の捻出

鯨本:
ここからはトークセッションに移り、事前に参加者の皆様からいただいた質問にもお答えいただきたいと思います。まずは日本財団の野本さんに、離島航路維持のための新しい助成プログラムのご検討について伺います。

野本:
現状では、私どもが直接新しい助成プログラムを作っているというよりは、既存の支援パッケージを活用していただいています。

例えば、船や港のバリアフリー整備については「エコモ財団(交通エコロジー・モビリティ財団)」を通じて、九州圏に関しては「九州運輸振興センター」を通じて冷凍コンテナやタラップなどの整備を進めています。

令和7年12月に鹿児島新港旅客ターミナルで行われた日本財団の助成を受け製作した冷凍コンテナの引渡し式風景。(提供:公益財団法人九州運輸振興センター)

また、造船関連事業者への低利貸付事業の一環として、「JRTT(鉄道建設・運輸施設整備支援機構)」の共有建造を利用された場合の自己負担分について、日本財団が貸付制度を行うという制度もあります。

ステージ2の後に続く「ステージ3的な取り組み」については、今まさに何をすべきか、何ができるのかを議論している段階です。現場の「こういうニーズがある」という情報は極めて重要ですので、ぜひお寄せいただけると今後の事業設計に活かせます。この議論は国土交通省とも連携して進めているところです。

鯨本:
自律航行技術の導入費用も課題です。例えば、エイトノットさんのような小型船舶向けの自律航行技術の導入費用について、日本財団さんの助成プログラムを活用することは可能でしょうか。

野本:
その通り、資金の部分では技術を積むことによる「果実」よりも「コスト」が上回ってしまっては意味がありません。費用設計は各開発企業が今まさに検討しているところだと思います。もちろん、支援については何らかの形で考えていきたいと思っています。

鯨本:
ありがとうございます。チャットで佐渡島の方から質問をいただいています。「船舶の更新自体が課題。カーフェリーで100億円もの更新費用が捻出できない。国に新たな補助制度の創設を求めているが良い案はあるか?」というものです。宮里村長、座間味村でも船の更新は多額の費用がかかったかと思いますが、どのように対応されたのでしょうか。

宮里:
船の更新、いわゆる買い替えは非常に多額の費用がかかります。座間味村の場合、高速船(196トン、200名乗り)は8年前に11億5000万円、フェリー(669トン、400名乗り)は10年前に18億5000万円かかりました。そして、これらの費用がたった10年で1.5倍になっているのが現状です。

2021年11月に就航を開始した新造船「クイーン座間味」の進水式風景。当時の更新費用は11億5000万円(提供:座間味村)

座間味村ではコロナ前に収益を上げて、財政調整基金に集めていた資金があったのですが、コロナでそれが吹き飛びました。そこで、沖縄県と国の「一括交付金」という制度を活用し、8割補助のような形で船を購入することができました。ほとんどの離島航路の船は「リース物件」が多いと思いますが、そのリース料も高額です。

大きな金額を動かすためには、やはり都道府県や国の支援が一番大きいです。単なる離島振興という話ではなく、排他的経済水域(EEZ)や国益を考える観点も含めて、離島の重要性を総合的に認識していただく中で、国や県、地元自治体の理解を得て船を作っていくのが最も早いスキームだと思います。100億円規模の費用を動かすのは、それ以外では難しいのが現実です。

鯨本:
規模によっては企業版ふるさと納税のような民間の力も活用できそうですが、大規模な費用になると国の制度が不可欠だと改めて認識できました。

博多と五島列島の島々をつなぐフェリー太古。さまざまな船や航路が離島の暮らしを支えている(写真:離島経済新聞社)

技術と制度で支える離島航路の未来

鯨本:
皆さんのアイデアやご意見を受けて、最後にお一人ずつ、今後の離島航路の未来に向けたメッセージをいただきたいと思います。

宮里:
自律航行の技術には非常に興味があります。船員の皆さんの負担軽減は非常に大切だと感じています。

行平さんの話は現場サイドの課題がしっかり聴取されていると感じ、特に母港変更というアイデアは素晴らしいと思いますが、行政としてはすぐに給与を上げたり、居住地の問題を変えるのは難しい側面もあります。しかし、そうした提言を踏まえて、私たちの立場から様々な働きかけをすることができます。非常に勉強になりました。

行平:
宮里村長のお話からは、沖縄県の住民割引制度や、物価高騰が一般会計に与える影響、事前内定方式という補助制度の課題など、現場のリアルを学ぶことができました。

また、エイトノットさんや日本財団さんの自動航行技術は、船員不足で航路維持が厳しい離島住民にとって「いつ導入されるのだろうか」という大きな期待と関心があります。ゲームチェンジャーになることは間違いありません。

今はルール上、人は乗らなければなりませんが、安全性が担保されることから導入が進めば、安全面も運航のしやすさも大きく向上するでしょう。

木村:
我々は株式会社としてビジネスとしてこの技術を推進していますが、離島航路の課題は一筋縄ではいかないと、様々な離島を巡って痛感しています。しかし、船は絶対になくてはならない大切な移動・輸送手段です。

我々はできるフィールドで最大限努力をさせていただきたい。本日集まったような産官学の皆様が、離島航路の維持存続と安定的移動手段の供給は絶対的に必要だという認識をすり合わせた上で、個別最適ではなく全員で議論していくことが必要だと改めて感じました。

日本らしい「暮らし方の自由」を担保するためにも、この議論をさらに進めていきたいと思っています。

属人化されていた船舶の操船技術をAIがアシストすることで、事故が減少し、船員不足が緩和される未来を見据える(提供:エイトノット)

野本:
個人的にも島旅が好きなので、ひとりのリスナーとしても皆さんの意見を興味深く拝聴しました。課題感はそれぞれが持っている中で、まだ具体的な行動が大きなうねりになっていない現状があります。

船の自律化はもちろん大きな解決策ですが、人口減少などの複合的な課題を解決するためには、地域における暮らしや交通を踏まえた上で、手段として自律航行を導入していくというプロセスが重要。まずはモデル的に実践を積み重ねることが大切だと思います。

また、船員の待遇改善という点で付け加えると、「MEGURI2040」では、船から船員をなくすのではなく、「陸上支援センター」を開発し、陸上から複数の船を同時に監視・支援することで、「陸で働く船員」を増やします。

複数の無人運航船を同時に支援できる移動型陸上支援センター。こうした技術の導入が船員の多様な働き方の実現やより安全な運航を実現する(提供:日本財団)

これにより、子育てや介護といった、これからの社会で増えるニーズにも対応できる多様な働き方を提供し、船員の魅力向上に繋げたいと考えています。 この技術が社会に普及していくことが最も重要だと考えていますので、現場の具体的なニーズをぜひお寄せいただければ幸いです。

鯨本:
本日、4名の方をゲストにお迎えし、離島航路維持のための「アイデア」と「お金」について、産官学、支援団体の視点から深く議論することができました。

技術革新による船員の負担軽減や安全性向上、そして沖縄振興予算や一括交付金など、国の制度を活用した財源確保、さらには既存制度の見直し要望といった、多岐にわたるヒントを得ることができました。
離島経済新聞社でも、引き続き離島航路を守るヒントやアイデアを共有できる場を作っていきたいと思います。皆様、本日はありがとうございました。

<完>


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