つくろう、島の未来

2024年10月15日 火曜日

つくろう、島の未来

島の祭に魅せられたカメラマンの島祭コラム「百島百祭」。今回は、周囲1.7kmの小さな島・奥武島(おうじま|沖縄県南城市)の海神祭 後編。島々に息衝く、祭の魅力をお届けします。

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沖縄・奧武島の海神祭3

七番勝負の三番目に行われる「流れ船」は、飛び込みハーリーと呼ばれ、奥武島・海神祭のハーリー競漕の特徴的なハーリーのひとつだ。高所が苦手な私からは信じられないが、高さ5メートルはあろうかという奥武橋の上から海へと飛び込み、そのまま船に乗り込みハーリー競漕するというものだ。観客の熱気も上がるこの大一番を前に、円陣を組んで拳を合わせ、心を一つにして気持ちを盛り上げ、漕ぎ手たちは橋へと向かった。撮っているこちらが緊張する中、見事な飛び込みを見せ、迫力のある一番となった。

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奥武島・海神祭のハーリー競漕のもう一つの特徴的なハーリーは、六番目に行われる「クンケーラーシー」だ。奥武島の方言で、ひっくり返すことを「クンケーラス」と言い、審判の合図で船をひっくり返し、海に投げ出された漕ぎ手たちは、上手に櫂を使って船を起こし、体勢を立て直し競い合う。何が起こるか分からない海上を生業とする海人たちの生活が垣間見れるハーリー競漕だった。古来より海上訓練を兼ねて続けられてきた行事だからこそ、ただのスピード勝負だけでなく、こうような実際の海で必要となる技術も、勝負に含まれているのだろう。

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私が訪れた2015年のハーリー競漕は、六番目まで三勝ずつを取り合い、最後の七番で西が勝ち、接戦となった勝負を制し幕を閉じた。海への感謝と航海安全・大漁祈願行事として、大切に引き継がれてきた奥武島・海神祭は、海人たちの魂を感じる勇壮な海の祭りだった。

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◆祭情報◆
日程 旧暦5/4(2016年は、6/8)
場所 奧武島(沖縄県南城市)

     

離島経済新聞 目次

【連載】百島百祭

野宿で日本各地の島を旅していた10年前、偶然出会った島の祭に魅せられたカメラマンの島祭コラム。島々に息衝く、祭の魅力をお届けします。

黒岩正和(くろいわ・まさかず)
写真家。21歳より、日本の島の風俗・祭事を撮影(2013年現在300島以上を撮影)。主な撮影テーマは、日本の島・山岳少数民族の風俗・メコン河流域の風俗・ 棚田などの稲作文化・戦国史跡など。
http://kuroiwamasakazu.com/

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