島の祭に魅せられたカメラマンの島祭コラム「百島百祭」。今回は三重県鳥羽市沖、伊勢湾口に位置する東西に長い島・菅島に伝わる盆送りの行事「じんかん舟」をご紹介します。島々に息衝く、祭の魅力をお届けします。
三重・菅島のじんかん舟 1
三重県鳥羽市沖、伊勢湾口に位置する東西に長い島・菅島。鳥羽湾に浮かぶ菅島で、盆送りの行事として、8月31日に「じんかん舟」が行われると聞いて、佐田浜桟橋から菅島へと渡った。
「じんかん舟」とは、木と竹と藁で作った舟を海に流し、先祖の霊を送るとともに、悪霊も沖へ退散させようというもの。「じんじん舟」・「おんやれ舟」とも呼ばれ、安永9年(1780年)、悪疫の流行を防ぐために始まったと言われている。同じような行事は、伊勢志摩地方の数ヶ所の漁村に残されており、鳥羽市の神島ではヤリマショ舟、安楽島ではオンヤレ舟、答志島の桃取地区ではオイヤレ船など呼び方は違うが、伊勢志摩の伝統行事として息衝いている。
島へ入ると、冷泉寺に島の長老たちが集まっていた。本堂には長さ2mほどの「じんかん舟」が置かれており、舟内には12体の武者人形(閏年は13体)と小豆、もち米が乗せられている。この武者人形の表情がかわいくて、1体1体の表情も微妙に異なり、それぞれの人形の性格が想像できて、とても和む。愛らしい表情も好ましい。そんな武者人形に心奪われていると、本堂内には島人達が集まってきて、大きな数珠をまわして悪霊を追い払う神事を行い始めた。
冷泉寺の本堂内で悪霊払いが行われた後、「じんかん舟」は境内へと移され、島内を巡っていく。
(「三重・菅島のじんかん舟(おんやれ舟)2」へと続く)
◆祭情報◆
日程 毎年8月31日
場所 菅島(三重県鳥羽市)