島の祭に魅せられたカメラマンの島祭コラム「百島百祭」。今回は、瀬戸内海東部、家島群島の中部に位置する坊勢島で行われる恵美酒(えびす)神社の秋祭り(宵宮)の前編。島々に息衝く、祭の魅力をお届けします。
兵庫・坊勢島 恵美酒神社の秋祭り(宵宮)1
瀬戸内海東部、家島群島の中部に位置する坊勢島。883年(元慶7年)、比叡山の寺から覚円という僧侶が配流され、弟子数十人が師の覚円を慕って、島に来住したことからその名がついたと言われている。全国の島嶼(とうしょ)部では、過疎化や高齢化が目立つ中、この坊勢島は人口増加の傾向を見せ、若手漁師たちが活躍する島だ。そんな活気のある坊勢島が、一年で一番熱気に包まれる夜、それが恵美酒神社秋祭り・宵宮の幟練り(のぼりねり)の日だと聞いて、姫路港から島へと渡った。
宵宮が佳境を迎えるという午後7時過ぎまで、まだ少しの時間があったので、夕暮れ時の島内を散策して、祭りの日の独特な空気感を楽しむことにした。漁港には、大漁旗をはためかせた漁船が停泊し、祭気分を盛り上げてくれ、島の氏神・恵美酒神社も煌々と輝き、宮入を今か今かと待ち構えているようだった。
午後6時になると、公民館に続々と練子達が集まってきた。これから激しい宮入を行う練子たちの腕には、刺繍を施した青や紫といった組紐の中に、お守りが縫い込まれた「腕守(うでまもり)」が巻かれており、愛する人の安全を願い、練子の母親や恋人が毎年つくるのだという。「おかんに腕守を縫ってもらっているうちは半人前、彼女や嫁さんに縫ってもらって初めて一人前になるんやぁ」と、ある練子が話してくれた。なんか妙に初々しくて、聞いた私が照れてしまった。そんな心温まる話を聞いていると、島の役員たちの列が練子を迎えに来て、幟練りが始まった。
「兵庫・坊勢島 恵美酒神社の秋祭り(宵宮)2」へと続く
◆祭情報◆
日程 毎年11月3・4日(宵宮・幟練りは3日)
場所 坊勢島(兵庫県姫路市)