つくろう、島の未来

2024年12月09日 月曜日

つくろう、島の未来

島の祭に魅せられたカメラマンの島祭コラム「百島百祭」。今回は、本土から沖合2kmに位置し、島全体が、国の特別史跡・特別名勝に指定されている宮島(厳島)の管絃祭 後編。島々に息衝く、祭の魅力をお届けします。

広島・宮島(厳島)の管絃祭 2

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船上で祭典を執行した御座船は、管絃を奏でた後、江波の漕伝馬船(こぎでんません)に曳かれ、大鳥居の前で3回廻った後、対岸の地御前(じごぜん)神社へと向かう。江波・阿賀の漕伝馬船に曳かれ、管絃を奏でながら、瀬戸内海をゆっくり進む様は、さながら平安絵巻のようだ。宮島の浜で、御座船と漕伝馬船を見送る人々の姿も、とても微笑ましく美しかった。撮影している僕も、公家気分で撮影……と思ったが、干潮の浜での撮影は、アングルを探す中で足元が海水に浸かり、びちょびちょの不快感満載での撮影となったのが残念だ。

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管絃船を曳航するという名誉ある漕伝馬船だが、阿賀と江波の両村が担当している。その歴史は、1701年(元禄14年)に遡る。地御前神社から宮島・長浜神社へと帰る管絃船が途中暴風雨に遭遇し、転覆寸前となった。その時、危険を顧みず勇気ある行動で管絃船を救助したのが、阿賀と江波の両村の男だったのだ。そんな歴史を感じながら、漕伝馬船に曳かれる御座船を見送った。

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対岸の地御前神社で祭典を終えた御座船は、宮島へと向かい、長浜神社・大元神社・客神社で祭典を行った後、枡形へと入り、3回廻りながら管絃を奏でる。大きな御座船が狭い枡形で回転するのは、かなりの技術を要し、とてもダイナミックで迫力ある光景だ。今にもぶつかりそうなほど社殿すれすれで回転する妙技を、皆が息を呑みながら見守り、無事に廻り終えた瞬間、たくさんの拍手とねぎらいの言葉が飛び交った。こうして祭の盛り上がりは最高潮に達し、夏の瀬戸内を舞台に繰り広げられた一大平安絵巻の幕が降りた。

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◆祭情報◆
日程 毎年旧暦の6/17(※2015年は、8/1)
場所 宮島(広島県廿日市市)

     

離島経済新聞 目次

【連載】百島百祭

野宿で日本各地の島を旅していた10年前、偶然出会った島の祭に魅せられたカメラマンの島祭コラム。島々に息衝く、祭の魅力をお届けします。

黒岩正和(くろいわ・まさかず)
写真家。21歳より、日本の島の風俗・祭事を撮影(2013年現在300島以上を撮影)。主な撮影テーマは、日本の島・山岳少数民族の風俗・メコン河流域の風俗・ 棚田などの稲作文化・戦国史跡など。
http://kuroiwamasakazu.com/

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