つくろう、島の未来

2024年10月15日 火曜日

つくろう、島の未来

野宿で日本各地の島を旅していた10年前、偶然出会った島の祭に魅せられたカメラマンの島祭コラム。島々に息衝く、祭の魅力をお届けします。

香川・小豆島の農村歌舞伎(肥土山)1

0031-609x456

香川県の県庁所在地高松市の約20km北東沖に位置する小豆島(しょうどしま)。非架橋の島としては、瀬戸内海で一番大きなこの小豆島には、300年以上の歴史を誇る農村歌舞伎が伝承されている。肥土山地区の農村歌舞伎を見るため、2013年のゴールデンウィークに日生港(ひなせこう)からフェリーで小豆島・大部港へと入った。

0011-609x456

江戸時代前期、水不足に悩む農家の苦しみを救おうと、庄屋・太田伊左衛門(おおたいざえもん)典徳が私財を投じて、農業用のため池「蛙子池(かえるごいけ)」の築造をはじめ、3年という月日をかけ1686年(貞享3年)に完成。「肥土山農村歌舞伎」は、池から肥土山離宮八幡宮まで水が流れてきたことを喜んだ村人たちが、神社の境内に仮小屋を建て芝居を奉納したのが始まりだとされている。以来、約330年絶えることなく伝承されてきた。島の方に聞いた話では、まだ町ではなく、小さな村だった時代、村の数より歌舞伎舞台(小屋)の数の方が多かったというから、かなり盛んだったのだろう。

0021-609x456

お昼頃から、色鮮やかな御花の札が掲げられ、役者達が準備の間に可愛らしい化粧顔を出したりと、とても和やかな雰囲気の中、準備作業が続いていく。徐々に人が集まりはじめ、段々になった寄席は前の方から埋まり始め、15時くらいには満席となった。そして15時30分頃、今も昔も変わらない青天井の芝生にムシロ敷きの中、300年以上の歴史を誇る歌舞伎が始まった。

(「小豆島の農村歌舞伎(肥土山)2」へ続く)

◆祭情報◆

日程 毎年5月3日

場所 小豆島(香川県土庄町)

     

離島経済新聞 目次

【連載】百島百祭

野宿で日本各地の島を旅していた10年前、偶然出会った島の祭に魅せられたカメラマンの島祭コラム。島々に息衝く、祭の魅力をお届けします。

黒岩正和(くろいわ・まさかず)
写真家。21歳より、日本の島の風俗・祭事を撮影(2013年現在300島以上を撮影)。主な撮影テーマは、日本の島・山岳少数民族の風俗・メコン河流域の風俗・ 棚田などの稲作文化・戦国史跡など。
http://kuroiwamasakazu.com/

----------

関連する記事

ritokei特集