つくろう、島の未来

2024年11月21日 木曜日

つくろう、島の未来

島の祭に魅せられたカメラマンの島祭コラム「百島百祭」。今回は、長崎市の離島・伊王島(いおうじま|長崎県長崎市)の船漕ぎ競争「ペーロン大会」の模様をお届けします。

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伊王島ペーロン大会は、伊王島と沖之島内にある、船津・大明寺・塩町・馬込という4つの地区に分かれて争われる。

どのチームも、地区の誇りをかけて、これまで練習してきた成果を出すために、皆で力を合わせて真剣に櫂を漕いでいく。レースが終わった後の全身びしょ濡れの勇姿が、負けてなるものかという心意気を物語っていた。

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レースは片道450メートル、往復900メートルのコースで行われ、1レース終えるごとに腕はパンパンに疲れるだろうが、皆そんなことは感じさせない気勢を上げている。元気あふれる子どもたちから、熟練の中高年まで、幅広い年代の人達が参加するのも伊王島ペーロン大会の特徴。皆が全力でペーロンを進めることで、熱い想いが受け継がれていくのだろうと感じ、胸が熱くなった。

レースが終了すると、1位から3位までの順位を記した旗をつけた竹を、着順に合わせて受け取る。1位の旗がつけられた竹を受け取る漕ぎ手は、とても誇らしそうだった。

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夏の晴れ渡った空の下、竹につけられた旗が、漕ぎ手達のがんばりを讃えるように、やさしく風に舞っていた。途中、観光客も含めた一般の人もペーロンに乗れる「体験ペーロン」も開催され、笑顔と笑い声が溢れていた。

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激しいレースを繰り広げた漕ぎ手達も、陸に上がれば共に全力を出し合った仲間として、お互いの健闘を讃え合い、和やかな雰囲気の中で、大会は幕を閉じる。

突堤に立て掛けられていたさまざまな長さの櫂が、年齢も性別もバラバラの同士が力を合わせた姿を、そのまま写し出しているように感じられた。

◆祭情報◆
日程 毎年8月第一日曜日
場所 伊王島(長崎県長崎市)

     

離島経済新聞 目次

【連載】百島百祭

野宿で日本各地の島を旅していた10年前、偶然出会った島の祭に魅せられたカメラマンの島祭コラム。島々に息衝く、祭の魅力をお届けします。

黒岩正和(くろいわ・まさかず)
写真家。21歳より、日本の島の風俗・祭事を撮影(2013年現在300島以上を撮影)。主な撮影テーマは、日本の島・山岳少数民族の風俗・メコン河流域の風俗・ 棚田などの稲作文化・戦国史跡など。
http://kuroiwamasakazu.com/

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