島の祭に魅せられたカメラマンの島祭コラム「百島百祭」。今回は、沖縄県とともに琉球文化圏を構成し、九州以北や中国大陸、東南アジアの影響も色濃く残る奄美大島(あまみおおしま|鹿児島県)の秋名アラセツ行事(ショチョガマ) 前編。島々に息衝く、祭の魅力をお届けします。
鹿児島・奄美大島 秋名アラセツ行事(ショチョガマ)1
鹿児島から南に約380km離れた奄美大島。沖縄県とともに琉球文化圏を構成し、九州以北や中国大陸、東南アジアの影響も色濃く残る。さらに、壇ノ浦の戦いで敗れ逃げ落ちた平家の落人によってもたらされたとされる本土の文化と相まって、独特の文化を感じることができる島だ。そんな奄美大島北部の町・龍郷町(たつごうちょう)秋名(あきな)集落にて、400年以上の伝統を誇るアラセツ(新節)行事が行われると聞いて、大阪伊丹空港より奄美空港へと飛んだ。
アラセツ行事が行われる前日に島に入ると、レンタカーを借り、秋名集落へと向かった。秋名集落は、奄美で一番広い田袋(水田)を持ち、昔から稲作が盛んなことから、農業と関わりのある祭が多く、稲霊(いなだま)信仰に結び付く農耕儀礼が、古の姿のまま残っている。
国の重要無形民俗文化財に指定されている秋名のアラセツ行事、ショチョガマや平瀬マンカイも、山と海から稲霊を招いて五穀豊穣に感謝し、来年の豊作祈願をする祭事だ。秋名集落に着くと、集落南西部の田袋を見下ろせる山の中腹に藁葺き小屋(ショチョガマ)が設置され、翌日に行われる祭事を今か今かと待ちわびている様だ。
翌日未明、再び秋名集落に向かうと、午前4時過ぎという早い時間にも関わらず、すでに多くの人が集まっていた。近くには、たわわに実った稲穂も置かれ、稲霊信仰を身近に感じることができる。午前5時を過ぎる頃からチヂン(太鼓)を鳴らし、日の出を待つ男たちが集まり出した。ショチョガマの前方左右に置かれたワラ枕の祭壇には、カシキ(赤飯)、焼酎、ミキ(カライモと米を発酵させた奄美大島の伝統的な飲料)が供えられ、グージ(男性の神役)が豊作祈願の祝詞を唱えると、ショチョガマも佳境を迎える。
鹿児島・奄美大島 秋名アラセツ行事(ショチョガマ)2へとつづく
◆祭情報◆
日程 旧暦8月初丙の日(2016年は9月11日)
場所 奄美大島(鹿児島県龍郷町)