つくろう、島の未来

2024年11月21日 木曜日

つくろう、島の未来

奄美大島(あまみおおしま|鹿児島県)と喜界島(きかいじま|鹿児島県)出身で音楽活動をする「みなみなみなみ」(我那覇美奈さん、城南海さん、牧岡奈美さんの3人のユニット)と奄美好きが高じて奄美はぶ大使を務めるスティーヴ・エトウさんに島への想いを伺いました。

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(聞き手・鯨本あつこ/写真・大久保昌宏)

奄美大島と喜界島出身で音楽活動をする我那覇美奈さん、城南海さん、牧岡奈美さん。
「みなみなみなみ」とはある日、奄美好きが高じて奄美はぶ大使としても活動する
スティーヴ・エトウさんが、3人の名前を並べたことからはじまった奄美の新ユニット。
4人に島への想いを伺いました。
タブロイド紙『季刊リトケイ』7号に掲載されたインタビューのロングバージョンです。

古き良き昔の日本を感じる奄美の島々

リトケイ

スティーヴさんとの出会いは、『季刊ritokei』創刊号に登場された篠原ともえさんが「奄美好き」としてリトケイに紹介してくださったのがきっかけでしたね。そんなスティーヴさん、奄美との出会いを教えてください。

スティーヴ

奄美大島にはじめて来島してからちょうど今年で10周年記念になりますね。もともとはハシケンのお姉さんが訪ねてきて「奄美大島にいきませんか?」からはじまって。大先輩のサックスの梅津和時さんも一緒にライブをやるために行ったんです。旅行じゃないので土地に関しても調べることもなく、お仕事の一貫でふらっと南の島にいくんだなという感じで。飛行機の中でマップを見て鹿児島県なんだぁと。当然、南の島だからどうせリゾートチックなのかなって思っていました。「どうせ」というのは私はリゾートが苦手なもので(笑)。

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一同

あぁ(共感)

スティーヴ

でも、奄美に到着すると「なにもない」。ほら、空港ってあれしろこれしろ見たいな看板がたくさんあるでしょ。でも、そういうのがない。それじゃあ街はぎらぎらしているのかなと思ったら、そうでもない。あれあれ?という感じでした。

一同

ふむふむ。

スティーヴ

ライブがスタートしても最初はみんな様子を伺っている感で。でも、ライブが終わってみんなでわぁぁっと飲んで、一晩で全員友達になって……。それから東京に帰ったら妙に気になる。「なんかあそこおかしいな」と。それから通いだして現在に至ります。

リトケイ

「みなみなみなみ」のみなさんはどちらのご出身ですか?

我那覇さん

私はそんな奄美のシティガールです(笑)。名瀬の屋仁川(やにがわ)、一番の繁華街に15歳まで住んでいました。屋仁側は東京でいえば歌舞伎町とか渋谷をぎゅっと凝縮した感じですね。

スティーヴ

対人口比率で飲み屋が九州一多いという。

我那覇さん

私は奄美でもマンモス中学校の出身で。当時、30人クラスが7クラスもあって。アーケードのあたりを街と呼んでて、青春でしたね。島というと海や山に住んでると思われるけど、私はシティガールなんです(笑)。

城さん

私は奄美大島のなかでもかなり移り住んでいて、北部の笠利(かさり)、名瀬(なぜ)、南部の古仁屋(こにや)、13歳で島をでて母の実家のある徳之島(とくのしま|鹿児島県)、鹿児島、東京と点々としていました。

リトケイ

島を渡り歩いてますね。

城さん

青春は名瀬と古仁屋で。集落ごとに言葉も全然違っていて。鹿児島いったときは怖かった。人の感じにあまり慣れなくて2週間くらい不登校になりましたね(笑)。

スティーヴ

意外と短い(笑)。

城さん

高校1年の終わりに歳の離れた兄のシマ唄を聞いたんです。島にいるときは興味がなかったけど、島を離れると懐かしくなって自分もシマ唄を唄うようになって。広めたいなと思うようになって、今に至っております。

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リトケイ

牧岡さんは??

牧岡さん

この中でも一番シティガールです(笑)。

一同

えええ??

牧岡さん

生まれた時から喜界島。喜界島のなかで一番都会の赤連(あがれん)という場所で、ドコモショップもあればスーパーもあります。

一同

ええ!!!ドコモショップとかあるの?!

牧岡さん

コンビニもあるんですよ。12時に閉まるけど(笑)。私の祖母が今でもシマ唄をしているんですが、おばあちゃんと一緒にという感じで小学校からシマ唄をはじめて、喜界高校を出て奄美の専門学校に通い、保育園に勤め、25歳で上京しました。

スティーヴ

上京はどういうきっかけが?

牧岡さん

一回も出た事がなかったので。高校の時に出たいと思ったけど、親の反対に合ったので一旦は奄美大島に上京して。やっぱり一度は行ってみたいなと思ったんです。

リトケイ

なるほど。みなさんに聞きたいのですが「島の面白いところ」は何でしょう?

スティーヴ

……なんでしょうね。未だに謎なんですよね。何が面白くて通っているのか。仕事柄、日本全都道府県に訪れているけど、県庁所在地のホールでライブをするだけで、地域に接したことはほぼなかったんですね。そこへきて、はじめて地域にべたっと手を染めたのが運の良い事に奄美だったのかな……。

みなみなみなみ

うれしいなあ。

スティーヴ

あと年齢。

リトケイ

年齢とは?

スティーヴ

その時が45歳でしたから、もうがしゃがしゃしたところに興味がなく。そもそも私は「ふるさと」がないので、そういうのを求めていたのもあるんでしょうね。そこにおかしい人たちがたくさんいるという(笑)。

我那覇さん

妙にぎらぎらしてない感じがよいのかもね。別にふぬけているという意味ではなく熱いのにぎらぎらしてない。

スティーヴ

一番感じたのは、サモガリ(※)のサーモンと宇検村(うけんそん)に行ったときで、夜の10時くらいから太鼓を叩いて踊りだす風景に、日本昔話のなかに入ってしまったような気がして。「あれ、ここは日本なんだ」と。(※サーモン&ガーリック……2001年8月、先輩の結婚披露宴の余興から活動を開始した、シマ唄のような、そうでないような、唄かベシャリかわからないような2人組アーティスト)

我那覇さん

うんうん。南の島じゃない。昔の日本にきているような。

スティーヴ

そう、遠藤ミチロウさんも同じようなことを言ってたんですが、南の島に来たというよりは「昔の日本」に来ているような。自分の田舎にかえってきたような気がするって。古きよき日本があるっていうことが、おかしなことなんじゃないかなと。……なんか良い話になっちゃったな。

一同

ははははは。

スティーヴ

奄美の場合は調べていくと言葉も古い日本語がルーツにあるらしいと。

城さん

卒論で調べたことがあって。奄美の方言の7割は日本の古語、2割が琉球、1割が奄美の独自の言葉みたい。本土でなくなてしまった昔の日本の美しい言葉たちが奄美に残っていて、それを奄美の言葉としてみんな普通に使っているから、どこか懐かしさを感じたりとか、音楽にしてもそうだけど、すごい残っている。

リトケイ

確かにそうですね。喜界島と奄美では方言は違うんですか?

牧岡さん

全然ちがいますね。奄美大島だと「ちゃー」って使うでしょ?喜界では使わない。喜界島の方言は沖縄と似ているんですよ。おばあちゃんのしゃべる方言は沖縄の言葉に似ていますね。

リトケイ

沖縄の島で、かつて喜界島と交流していたと聞いたことがあります。関連があるんでしょうね。

スティーヴ

すると奄美大島に関しては、基本的に琉球言葉があったところに日本の古い言葉が入ってきたのかな?

城さん

奄美大島には壇ノ浦の戦いで逃れてきた人たちがいっぱいいるから?

我那覇さん

最初は琉球だったのかなぁ。

スティーヴ

遣唐使も立ち寄ってたんでしょ。あそこ(奄美大島)でいろいろ補給して本土の方に行ったとか。

我那覇さん

逃れてきた人とか逃げてきた人がいっぱい集まって来ても、島の人は嫌とは言わずに、来るものは拒まず、また去る者も追わず……「港の女」みたいな??

リトケイ

良い女ですね(笑)。

我那覇さん

シマ唄の歌詞にもあって。「いかないで~っ」ではなく「いつでもどうぞ」と。でもすごく想いはあるわけ。そんな大きいところにスティーヴさんは惚れたのかな……。

スティーヴ

あぁー!それ(女性関係)だけは無理ですね(笑)。そんなこと言ったら一瞬でうわさが広がります。島の伝播力は、Twitterの比じゃないので。

我那覇さん

そう、こないだ島でお母さんとランチしていたら東京にいる妹からメールが入って「いま◎◎でランチしてるでしょ!」って。誰かがみている(笑)。

スティーヴ

都会の監視カメラの比ではない(笑)。

>> 「島で話題?「みなみなみなみ」とスティーヴ・エトウ #02」へ続く


(お話を聞いた人)

スティーヴ・エトウさん
1958年L.A.生まれ。国内外で活躍する打楽器奏者。45歳で奄美大島に出逢い10年通い続ける。現在は「原ハブ屋奄美」公認はぶ大使として奄美のPRにも関わる。
♪お知らせ >> 今日の奄美群島をお届けする情報ライヴ しーまブログプレゼンツ「Dear どぅし でぃや」を不定期開催しています。次回は12月21日(土)に西麻布の新世界にて。

我那覇美奈(がなは・みな)さん
奄美大島名瀬出身のシティーガール。『終わらない夏』、映画「あずみ」主題歌『ねがい』、『月の雫』などをリリース。スティーヴさんと奄美イベント「Dear どぅし でぃあ」も開催中。
♪お知らせ >> デビュー15周年記念ベストアルバム ゴールデン☆ベスト「初心忘ルベカラズ」発売中。奄美関連ライブイベントも積極的に行ってます。詳しくはオフィシャルブログetc..まで。

城南海(きづき・みなみ)さん
奄美大島生まれ。2009年「アイツムギ」でデビュー。NHKドラマ「八日目の蝉」の主題歌『童神~私の宝物~』などを担当。米国・Japan Dayや、中国・上海万博に参加するなど、国境を越え活躍の場を広げている。
♪お知らせ >> 11月20日にニューシングル「チョネジア~天崖至睋~」発売。毎週水曜21時 BSジャパン「徳光和夫の名曲にっぽん~昭和歌謡人」にレギュラー出演中。

牧岡奈美(まきおか・なみ)さん
喜界島出身。25歳で上京し、唄者として活動。18歳の時に奄美民謡大会で最高賞の大賞を受賞。鹿児島県民謡王座決定戦大会では3年連続優勝受賞し、名人位を与えられる。
♪お知らせ >> アルバム『シツルシマ』は、祖母・盛スミ子の出身地でもある喜界島の上嘉鉄(かみかてつ)の旧名。喜界島の八月踊りを収録する作品としては史上初。

     

離島経済新聞 目次

『季刊ritokei(リトケイ)』インタビュー

離島経済新聞社が発行している 全国418島の有人離島情報専門のタブロイド紙『季刊ritokei(リトケイ)』 本紙の中から選りすぐりのコンテンツをお届けします。 島から受けるさまざまな創作活動のインスピレーションや大切な人との思い出など、 島に縁のある著名人に、島への想いを伺います。

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