人気バンド・ウルフルズのギタリストとして活躍するウルフルケイスケさんは、ギターを片手に単独地方ライブ活動へ出掛け、離島地域にも足を運んでいます。北海道は利尻島(りしりとう)の利尻町観光大使でもあるウルフルケイスケさんに、島との出会いやエピソードについて伺いました。タブロイド紙『季刊リトケイ』11号に掲載されたインタビューをお届けします。(聞き手・鯨本あつこ/写真・大久保昌宏)
ウルフルケイスケさん「ギター片手に離島まで」
ーウルフルズの活動の傍ら、単独での地方ライブをはじめたきっかけは?
ウルフルズは一旦、活動休止していて、単独ライブは4年半の活動休止中にはじめました。今はどちらも並行してやっています。
ーギターを片手に離島まで行かれているんですね。
そうですね(笑)。自分ひとりでギター背負ってライブに出掛けています。ウルフルズだと大都市でのライブが多いんですが、ひとりのライブだと30〜40人規模。島だと、利尻島のほかは石垣島(いしがきじま|沖縄県)とか黒島(くろしま|沖縄県竹富町)とか……。黒島には島に嫁いだ後輩がいたので、会いに行ったんです。
ー行き先はそんなご縁がある場所が多いんですか?
そうそう。その場所に行ったミュージシャン仲間が「いいよ〜」と言ってくれたり、紹介の紹介だったりで、行き先が決まっていますね。普段は東京で暮らしていて、東京中心でいるうちは分からなかったんですが、田舎とか離島とかにも音楽好きの人が集る場所はあって、そこにはすごいマニアックな音楽好きとか熱心な人がいるんですよ。単独ライブを始めて、そういうのがあることとか、日本のことを全然知らなかったことに気付きました。
ー利尻島には度々訪れていらっしゃいますが、最初のきっかけは?
劇団四季が地方をまわって子どもたちに向けた公演(※)をしているんですが、そこで広報担当をしている知り合いとたまたま話をしているときに「利尻島に行く」と聞いて。僕は全然関係なかったんですけど、利尻島に行く機会はほかにないと思って「一緒にいくー!」って。北海道へライブツアーに行くことはあっても、利尻島まで行けることはなかったので、ついて行きましたね(笑)。
※劇団四季が主催する「こころの劇場」。北は利尻島から南は石垣島まで、日本全国の子どもたちを無料で劇場に招待し演劇の感動を届けている。
ーそれで利尻島へ行かれたんですね。
でも僕がやることはないので、地元の人とごはんを食べたり酒を飲んだりして(笑)。役場の方や青年団の方と話をしていると、みんな音楽好きだと言う。「それなら今度ライブに来ます!」っていうところから始まりました。
ーそれで2度目はライブへ?
そう、次はライブで。今から2年半前ですね。利尻島には市民会館はあるんですが、ライブハウスはないんです。なので、どこでライブをするかという話で、島の人がカラオケスナックを借し切ってくれて、持っている機材を集めてくれました。
ーこれまでスナックでライブされることもあったんですか?
バーやカフェとかはあるけど、スナックはなかったですね(笑)。会場は「うに丸」っていって40人くらいでいっぱいになるんですが、行ってみたら、音楽が好きで見に来る若い人もいるんですけど、カラオケスナックの常連さんらしい漁師さんたちも、後ろのほうにばあーっとおったんです。ライブ会場にはいわゆる「ロックマナー」みたなのあるじゃないですか。携帯は切ろうとか、いらない私語は控えようみたいな、ちょっと気を使うところが。でも、漁師さんたちは全然気にしないんですね。ばんばん携帯に電話がかかってくるし、後ろのほうで別で盛り上がっているし。
ー島らしいですね。
それでだんだん萎えてきてね……。いろんなライブをやってきたけど、ここはどうやろう……って。主催してくれた方も経験が少なかったので機材トラブルとか色々あって、うわぁ〜ぐちゃぐちゃや〜、でもなんとか最後までやろう〜と思ってライブを続けて。それで一旦終わって、アンコールがかかった時、一番騒いでいた漁師の方が「おまえすごくいいなー!」って言ってくれたんです。「最後に盛り上がろうぜー」って。それで最後はみんなでものすごく盛り上がって終わったんです。
ーいいお話ですね。
なんかね、それまで自分が「音楽って自由や!」って言っていたのが、そうではなかった気がしたんです。漁師さんとかは自分自身も自由にしていて、自分らが本当にいいと思ったから、いいと言ってくれて。そういうのがほんまの自由なのかなあ?おれが普段思っている自由ってなんやろう?って、思ったんです。
ー漁師さんは「自由」だったんですね。
そう!すごく自由で自然。それからその漁師さんとはすごい仲良くなって、毎年ライブに来てくれるようになって。冬場になったら毎年アワビとかウニとかを箱でどわーっと送ってきてくれたり(笑)。
ー島でのライブではお客さんの層も幅広いんですか?
エレキギターで弾き語りをやっているんですが、お客さんは、子どもさんとか、娘さんと来ているおばあちゃんとか、幅広いですね。カラオケスナックのママさんがいてね、1回目のライブの後にアンケートを書いてもらったんです。それを帰りのフェリーで読んだら「すごく素敵なライブでした」と達筆で書かれていて。それがほんまにうれしかったですね。
ー島でのライブの楽しさは?
お客さんとすごい近いんです。大きい夏フェスとかだとお客さんが2万人とかいるんですけど、近いほうがかえって緊張しますね。反応がダイレクトやから。面白くないと面白くない感じが伝わってくるし、いい意味で緊張感がありますね。
ーライブのほか、島ではどんなことを楽しまれているんですか?
普段からランニングをしているので、朝起きたら走りますね。最初に行ったときは島の人に案内してもらったりもして。利尻島はなんだか「大陸的」ですよね。5月くらいでしたが、まだ雪もあるし緑もあるし。日本にもこんなとこがあるんやー!という景色。
あと、バーベキューがすごい!アワビとか毛ガニをぼんぼん盛って。それが普通で、ちょっと焦がしたらぽいって放って、えええー!東京で食べたらこんなんっ!みたいな(笑)。その代わりなのか、誰かが買ってきた唐揚げがあったら、みんな「唐揚げやー!」って飛びついて。え!そんなん?あわびのほうが……って(笑)。
ー贅沢ですね(笑)
あと「たちかま(白子のかまぼこ)」ですよ。あれおいしいですよね。はじめて食べたとき、この新食感なに?!こんなものがあったん??って、びっくりしました。
ーそんな流れで利尻島では観光大使にもなられたんですよね。
ライブに3回行って、行くたびに地元の方と夜はバーベキューしていたんですが、3年連続利尻でライブしている人なんていないって言われて。役場の方が「観光大使になりませんか」と言ってくださって。デビュー前はフリーターでしたし、生まれてはじめての名刺をいただきました(笑)。それが利尻の観光大使の名刺でうれしいですね。
僕はいつもフェリーで島に行きます。丘珠(おかだま)空港からはオフシーズンでも飛行機が飛んでいるみたいなんですけど、稚内(わっかない)からフェリーで行くんです。船には酔わないほうですが、北の海は相当で……。ひさびさに立っていられないくらいの揺れでした(笑)。それでも、だんだん島に近づいていって、利尻富士がばあーっと見えてくるのが良いんです。
ー利尻島のほかに島へ行くこともありますか?
ライブ以外だったら屋久島(やくしま|鹿児島県)に2回、山登りに行きました。どちらも6月に行っていて、夏場とかゴールデンウィークとかは登山客で渋滞するっていうんですが、オフシーズンだから2時間くらい誰にも会わなくて…この道で合ってるのか?って不安になったり(笑)。
ー利尻島や屋久島など島のどんなところをいいなと思いますか?
島は「時間」が違う感じですよね。南も北も感じは違うけど、どちらもゆっくりで。あんまり細かいことを気にしていないというか。いきなり「家に泊まれ!」「ごはん食べていき!」「じゃあ泊めてもらいます〜」とか(笑)。細かいことは全然気にしていない。あれがすごくいいと思います。
ーそれでは最後に、利尻島観光大使として利尻島のPRをお願いします。
まず、自然がとてもきれいです。日本的ではない大陸的な自然があって、海産物が非常においしい!僕はライブのほかは何もしないで過ごすんですが、利尻島ではゆっくりとした時間を過ごしやすいように思います。わざわざスケジュールをきめて観光をしなくても、のんびりしているだけでもすごくいい。あと「たちかま」です!あれはぜひ食べてください。なかなか味わえない、ほんま新食感ですから!
(お話しを聞いた人)
ウルフルケイスケさん
1965年5月23日生まれ。ウルフルズのギタリストとして1992年にデビュー。「ミスタースマイル」の異名を持ち、2009年のウルフルズ活動休止後よりソロ活動を展開。2014年2月のウルフルズ再開後もバンド活動と並行してソロでも活動中。
オフィシャルウェブサイト >> http://www.ulfulkeisuke.com/
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『MAGICAL CHAIN BOX』
過去にリリースされた個人名義のアルバム『MAGICAL CHAIN CARAVAN VOL.1〜3』をまとめた3枚組CDボックスを2014年10月4日に発売。¥3,000(税込)/MAGICAL CHAIN RECORDS



離島経済新聞 目次
『季刊ritokei(リトケイ)』インタビュー
離島経済新聞社が発行している 全国418島の有人離島情報専門のタブロイド紙『季刊ritokei(リトケイ)』 本紙の中から選りすぐりのコンテンツをお届けします。 島から受けるさまざまな創作活動のインスピレーションや大切な人との思い出など、 島に縁のある著名人に、島への想いを伺います。
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