つくろう、島の未来

2024年12月14日 土曜日

つくろう、島の未来

島の祭に魅せられたカメラマンの島祭コラム「百島百祭」。今回は、鹿児島の離島・奄美大島(あまみおおしま)の油井集落・豊年踊りの模様をお届けします。
油井の豊年踊り2はこちらから)

続いて色鮮やかな服装に身を包んだ女性たちが現れて「稲摺(いねす)り」が行われる。この演目は、脱穀された籾(もみ)を臼でひき、玄米にしていく稲すりの一連の動きを表現したもので、女性ばかり5人で踊る。臼役の女性は、赤い花模様の着物と青い帯という鮮やかな服装で、籾すりの様子を表現した赤い帯が宙をはためく様はとても幻想的だ。

まるで稲の精霊が踊っているようで、女性ならではの優雅な動きに、しばし目を奪われる。「油井の豊年踊り」の特徴の一つに、「女性が奉納芸能の演者となっている」ことが挙げられるが、稲の精霊のように流れるような美しい動きは、女性だからこそできるのではないだろうか。

その後、島のキュラニセ(美男子)による「米搗(こめつ)き」が行われ、「力飯(ちからめし)」が運ばれてくる。サンダンカの花が添えられた力飯は色鮮やかで、まさに南国・奄美の握り飯だ。女性たちがサンバラ(※)に力飯を乗せ、土俵を一周した後、力士たちの手に渡される。

※サンバラ……丸い竹製の箕(み)。

力士たちは掛け声と共に、土俵中央の紙垂(しで)に向け、力飯を頭上高く掲げる。力士から力飯をもらうと、一年間無病息災とのことで、皆こぞってもらっていた。

途中、新しく生まれた集落に縁のある子どもたちの「初土俵」が行われる。知らないおじさんに抱かれ、泣きじゃくる子どもや、どしっと風格がある子どもなど、反応は様々だが、どの子どもも可愛らしく、会場は温かい笑い声に包まれる。

そして「観音翁の土俵見舞い(ヒゲフッシュ)」と呼ばれる長い髭の観音翁と弁当持ち、長鎌持ちの滑稽な無言劇が演じられ、豊年踊りもいよいよ佳境を迎える。

鹿児島県奄美大島・油井の豊年踊り3へと続く

◆祭情報◆
日程 毎年旧暦8月15日
場所 奄美大島(鹿児島県瀬戸内町)

     

離島経済新聞 目次

【連載】百島百祭

野宿で日本各地の島を旅していた10年前、偶然出会った島の祭に魅せられたカメラマンの島祭コラム。島々に息衝く、祭の魅力をお届けします。

黒岩正和(くろいわ・まさかず)
写真家。21歳より、日本の島の風俗・祭事を撮影(2013年現在300島以上を撮影)。主な撮影テーマは、日本の島・山岳少数民族の風俗・メコン河流域の風俗・ 棚田などの稲作文化・戦国史跡など。
http://kuroiwamasakazu.com/

----------

関連する記事

ritokei特集