島の祭に魅せられたカメラマンの島祭コラム「百島百祭」。今回は、芸予諸島の中心・生口島(いくちじま|広島県)の、古き良き伝統に素朴さが交わる「名荷神楽」をお届けします。
三原市の南東約12km、芸予諸島の中心に位置する生口島は、古くは製塩・海運業が盛んで、物資の集散地として栄えた島だ。
近年は、瀬戸田のレモンや、ミカンをはじめとする柑橘栽培や、「島ごと美術館」など芸術の島としても有名。瀬戸内海に浮かぶ島々を7つの橋で結んだ「瀬戸内しまなみ海道」の中間に位置する。そんな島で伝統的な神楽(かぐら)が行われるということで、桜の咲くさわやかな気候のなか、しまなみ海道を渡り、生口島へと渡った。
因島から生口橋を渡ってすぐの「生口島北IC」を降り、対岸に流れる、因島の景色を眺めながら、海岸線を走り、名荷集落へと向かう。
名荷(みょうが)集落を見渡せる高台に、今回の神楽が行われる名荷神社があった。名荷神楽は毎年4月の第1日曜日に奉納されており、訪れた2017年の第1日曜日に当たる4月2日は、ちょうど桜も満開。春の麗らかな陽気が境内にあふれていた。
名荷神楽の舞は13部からなり、演目も古式を伝えているものが多く、「悪魔祓い」、「三宝荒神宮御縄(さんぽうこうじんぐうおんなわ)」、「剣舞」、「王子舞」などは特に伝統的な舞である。
明治元年までは「荒神舞」と称し、4年に1度の託宣をともなう荒神社の式年神事であった。しかし明治5年の太政官符で、神職の託宣関与が禁じられたため、神楽から託宣を除き、民間の人々によって十二神祇(じゅうにじんぎ)神楽として今日まで受け継がれてきた。
神社に着くと、太鼓や笛の音が聞こえ、すでに名荷神楽の演目が行われていることに気づく。慌てて機材を準備し、撮影を始めた。
◆祭情報◆
日程 毎年4月第一日曜日
場所 生口島(広島県尾道市)