つくろう、島の未来

2024年12月03日 火曜日

つくろう、島の未来

島の祭に魅せられたカメラマンの島祭コラム「百島百祭」。今回は、周囲1.7kmの小さな島・奥武島(おうじま|沖縄県南城市)の海神祭 前編。島々に息衝く、祭の魅力をお届けします。

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沖縄・奧武島の海神祭1

旧暦で祭事を行う風習が残る沖縄の島々。ユッカヌヒーと呼ばれる旧暦の5月4日(2016年は6月8日)は豊漁や航海無事を祈願するためのハーリーが県内各地で行われる。ハーリーとは伝統漁船の爬竜船(はりゅうせん・サバニ)を使った競漕で、古来より海上訓練を兼ねて続けられてきた海人の伝統行事だ。

以前からその存在は知っており、ずっと撮影したいと思っていた沖縄のハーリーを、2015年、初めて撮影するということで、意気揚々と南城市の奥武島へ向かった。そう言えば、旧正月の祭事を初めて撮影したのも、この奥武島だったので、私にとっては非常に思い入れのある島だ。

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周囲1.7kmの小さな島・奥武島に奥武橋を渡って入ると、カラフルな祭衣装に身を包んだ乗り手たちが集落の中心にある観音堂に集まっていた。奥武島・海神祭は、島人たちの信仰厚いこの観音堂での御願(うがん)から始まる。奥武島の人たちに助けられ、無事帰国した唐船の乗員がお礼に贈った観音像が奉られている観音堂は、奥武島の人々にとって大切な聖地となっているのだ。

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観音堂での御願を終えると、爬竜船を観音堂から海へと担ぎ運び、西(いり)と東(あがり)に分かれ、七番勝負の本バーリーへと進んでいく。この爬竜船を海に運ぶ時、次世代の漕ぎ手となる子どもたちを爬竜船に乗せるのだが、今は運ぶ側の大人たちも、子どもの頃にこうして乗せてもらっていたのかと思うと、私には祭りの想いを次世代に受け継いでいる光景に見え、とても大切な時間に思えた。

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沖縄・奧武島の海神祭2へとつづく

◆祭情報◆
日程 旧暦5月4日(2016年は、6月8日)
場所 奧武島(沖縄県南城市)

     

離島経済新聞 目次

【連載】百島百祭

野宿で日本各地の島を旅していた10年前、偶然出会った島の祭に魅せられたカメラマンの島祭コラム。島々に息衝く、祭の魅力をお届けします。

黒岩正和(くろいわ・まさかず)
写真家。21歳より、日本の島の風俗・祭事を撮影(2013年現在300島以上を撮影)。主な撮影テーマは、日本の島・山岳少数民族の風俗・メコン河流域の風俗・ 棚田などの稲作文化・戦国史跡など。
http://kuroiwamasakazu.com/

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