島の祭に魅せられたカメラマンの島祭コラム「百島百祭」。今回は三重県鳥羽市沖、伊勢湾口に位置する東西に長い島・菅島(すがしま)に伝わる盆送りの行事「じんかん舟」の後編をご紹介します。島々に息衝く、祭の魅力をお届けします。
三重・菅島のじんかん舟 2
若い衆に担がれた「じんかん舟」は、住職や島の長老たちとともに島内を一巡し、菅島漁港前に置かれた。すると島人たちが、オヒネリを持って舟にお参りをする。オヒネリの中には、おはぎが包まれていて、多くのおはぎが舟に積まれていく。家族の身体の悪いところを擦って、悪霊をおはぎと一緒に舟に乗せる。
島人たちは先祖の霊を送るとともに、今年あった嫌なことや悪霊を沖合へ退散させるため、「じんかん舟」に向かって両手を合わせる。その想いに応えるように、夕陽が島人たちを包んでいく。斜光に照らされる島人たちの姿は、フォトジェニックで美しい光景だ。
その後「じんかん舟」は、漁船に乗せられ沖合へと進む。漁船が沖合へゆっくりと進んでいく様は、夏の終わりの物悲しさと合い重なって、少し切ない気分にさせる。鉦や太鼓がカーンカーン・ドンドンドンと叩かれる中、オレンジ色に染まった海面に「じんかん舟」を乗せた漁船の波紋が広がっていき、先祖の霊との別れを惜しむかのように、島人はいつまでもその光景を見つめていた。
230年以上続く伝統行事だが、島人たちの大切な想いが長い年月も続く原動力になったのだろう。「じんかん舟」が終わると、菅島には秋の気配がやってくる。一つの季節の変わり目を感じながら、本土へと戻った。
◆祭情報◆
日程 毎年8月31日
場所 菅島(三重県鳥羽市)