野宿で日本各地の島を旅していた10年前、偶然出会った島の祭に魅せられたカメラマンの島祭コラム。島々に息衝く、祭の魅力をお届けします。
香川・小豆島の農村歌舞伎(肥土山)2
小豆島・肥土山地区の農村歌舞伎の醍醐味、それは、舞台と観客が一つになれること。演者も観客も互いをよく知る親しき仲。地域ならではの掛け合いが飛び交い、笑いが広がる。会場全体が盛り上がり、温かい雰囲気の中、演目は進行していく。
夜まで続く農村歌舞伎には、幕間の楽しみがある。それが屋外で食べる「わりご弁当」だ。「わりご(破籠)」は、今でいう弁当箱のことで、台形型のわりごが2個1組で長方形になる造りをしており、小豆島(しょうどしま)では出前に使う岡持ちのような木箱に家族分のわりごを詰めて桟敷まで運ぶ。家々によっての特色も垣間見ることができる小豆島の伝統的な郷土料理だ。観客たちは思い思いにお弁当を食べたり、お酒を飲んだりしながら楽しい一日を過ごしていく。
わりご弁当を食べながら、酒を酌み交わし、家族とともに観る歌舞伎。娯楽が少なかった時代、農村歌舞伎の楽しさは、島人にとってかけがえのないものだったのであろう。そんな事を思いながら撮影していると、日も沈み夜の帳が下りてきた。暗闇の中、舞台で演じられる歌舞伎は、風情が感じられ見応えがある。
長らく天領であった小豆島で、島人たちによって大切に受け継がれてきた農村歌舞伎。和やかな雰囲気の中演じられる歌舞伎に、島特有の温かみを感じる祭だった。今回、肥土山地区の農村歌舞伎を訪れたので、次はもう一つの中山地区の農村歌舞伎も見てみたいなぁと思いながら小豆島を後にした。
◆祭情報◆
日程 毎年5月3日
場所 小豆島(香川県土庄町)