つくろう、島の未来

2024年11月21日 木曜日

つくろう、島の未来

島の祭に魅せられたカメラマンの島祭コラム「百島百祭」。今回は、沖縄県とともに琉球文化圏を構成し、九州以北や中国大陸、東南アジアの影響も色濃く残る奄美大島(あまみおおしま|鹿児島県)の秋名アラセツ行事(ショチョガマ) 前編。島々に息衝く、祭の魅力をお届けします。

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鹿児島・奄美大島 秋名アラセツ行事(ショチョガマ)2

グージ(男性の神役)が稲霊(いなだま)を招くと、70~80人の男たちが藁葺き小屋に乗り、太鼓に合わせて豊年歌を歌い始める。古の時代より、小屋に乗り豊年歌を歌えるのは男性のみとされており、朝日に照らされる壮観な様は、歴史の重みを感じる光景だ。

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豊年歌を歌い終わる度に、「ユラ!メラ!」の掛け声と共に激しく小屋を左右に揺らしていく。これを何度も繰り返し、ちょうど太陽が東の山上に顔を出す直前に、完全に小屋を揺り倒すのだが、南側に倒れると豊作ということで、皆南側に倒す様、重心をかける位置に気を付けながら揺らしている。

私が訪れた2015年のショチョガマの結果は……。

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とにかく無事に藁葺き小屋が倒れると、チヂンを鳴らしながら、皆で八月踊り(はちがつおどり)を踊る。藁葺き小屋が倒れる様子は、来年の稲穂が畦畔にひれ伏すほど実るようにとの意味が込められており、八月踊りは五穀豊穣を祈るとともに、稲霊の恵みに感謝する踊りとなっている。倒れた藁葺き小屋の土台部分を見ると、土が深い部分までえぐり取られており、倒した男たちの心意気が感じられる。

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夕刻にはネリヤカナヤの神を招き、豊作を祈る平瀬マンカイが行われ、秋名アラセツ行事は幕を閉じる。自然の恩恵が溢れる奄美の島に残る、山や海に感謝する祭事は、藁葺き小屋を揺り倒す激しさと、自然に対する穏やかな感謝の気持ちが共存し、そこに暮らす人々の魂を感じる祭事だった。

◆祭情報◆
日程 旧暦8月初丙の日(2016年は9月11日)
場所 奄美大島(鹿児島県龍郷町)

     

離島経済新聞 目次

【連載】百島百祭

野宿で日本各地の島を旅していた10年前、偶然出会った島の祭に魅せられたカメラマンの島祭コラム。島々に息衝く、祭の魅力をお届けします。

黒岩正和(くろいわ・まさかず)
写真家。21歳より、日本の島の風俗・祭事を撮影(2013年現在300島以上を撮影)。主な撮影テーマは、日本の島・山岳少数民族の風俗・メコン河流域の風俗・ 棚田などの稲作文化・戦国史跡など。
http://kuroiwamasakazu.com/

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