野宿で日本各地の島を旅していた10年前、偶然出会った島の祭に魅せられたカメラマンの島祭コラム。島々に息衝く、祭の魅力をお届けします。
和歌山・紀伊大島の水門祭1(宵宮)
「ここは串本 向かいは大島 仲を取り持つ巡航船」という串本節が名高い南紀の島・紀伊大島。現在は、本土との間に串本大橋が通り、気軽に訪れることができようになった。黒潮が流れるこの島に、春の訪れを告げる祭、それが毎年2月11日に行われる水門祭(みなとまつり)だ。
島人から聞いた話によると、神功皇后と幼い皇子(後の応神天皇)が新羅遠征の帰り、身内の謀反により、難を逃れるためこの地を訪れた際、近くの住民達(大島浦・串本浦・出雲浦)が船を出してお迎えしたところ、大島浦の船に乗られたというのが由来の祭なのだという。その由来もあって、「鳳」「隼」という二艘の船による迫力ある櫂伝馬競争が行われる。
和歌山出身の私にとっては、一番身近な有人島でもあり、初めて訪れた島でもある紀伊大島に、水門祭の宵宮が行われる2月10日に入った。櫂伝馬競争が行われる大島港には、櫓を組み小さな山を模った「お山」が立ち、ご神体が乗る当船が停泊しており、宵宮独特の雰囲気に包まれていた。
夕方6時半頃、獅子屋台を先頭に氏子たちが、水門神社へと向かい神事と獅子神楽を奉納する。厳かな雰囲気漂う中の獅子神楽は、見ているこちらも背筋が伸び、身が引き締まる思いだ。宵宮の雰囲気を見ても、古からの想いが若い人達に確実に伝承されているのが伺える。その後、獅子神楽が集落の家々を周り、明日の本祭への期待とともに、宵宮の夜は流れていく。
(紀伊大島の水門祭 2へとつづく)
◆祭情報◆
日程 2月11日(櫂伝馬競争など。宵宮は2月10日)
場所 紀伊大島(和歌山県串本町)