事業を通じて四方八方を 「よし」 とする。 そんな動きが全国規模で推進されています。キーワードは「ゼブラ企業」。2024年度に「地域課題解決事業推進に向けた基本指針」を策定した中小企業庁も、ローカル・ゼブラ企業(※)の創出・育成に力をいれています。ゼブラ企業とはなにか?米国で生まれた「ゼブラ企業」 の概念を日本に導入した Zebras and Company 共同創業者の阿座上陽平さんに伺います。
※ビジネスの手法で地域課題の解決にポジティブに取り組み、社会的インパクト (事業活動や投資によって生み出される社会的・環境的変化)を生み出しながら、 収益を確保する企業
仲間と生きるシマウマのように
ゼブラは和名で「シマウマ」。ゼブラ企業は「評価額1,000億円以上の未上場企業」を意味する「ユニコーン企業」の対極として、2017年に米国で生まれた概念です。お金や規模を追い求めるのではなく、社会性と経済性という白黒の両方を追求する企業を意味します。
ゼブラ企業の特徴(Zebras and Company ホームページより)
1 社会性と経済性の両方を追求するとともに、相利共生(集団・群れとしての共存) を大切にしている
2 社会的な認知度理解の向上が必要な「社会的に複雑な」課題に挑戦している
3 既存の金融の仕組みにマッチせず、新たなお金の流れを求めている
阿座上(あざがみ)さん曰く、ゼブラ企業は「売れれば売れるほど何かがよくなる会社」。ゆっくり成長して負を生み出さない。群れで行動するシマウマのように意図的に仲間をつくり、1社が強くなるのではなく、みんなで課題を解決する。あえて時間をかけて、わくわくを生み出す。 未来をみながら自分たちだけではなく、子や孫の時代も見据えて意思決定するという、まさに八方よしの企業です。
離島地域の事業者とも数多く出会ってきた阿座上さん。ゼブラ企業を目指す第1歩は「大きなものから変えようとせず、大きな地図を描いた上で、1つのポイントからはじめること」と説明します。
Zebras and Company 共同創業者/代表取締役 阿座上陽平さん
「お金」は「関わりしろ」
人々の支え合いや自然と寄り添う暮らしが根付く離島地域には、社会性の追求は得意でも経済性の追求に苦手意識を持つ人が少なくありません。資本主義社会のなかゼブラ企業として経済性を追求することは「資本主義の仕組みを使って守りたいものを守ること」でもあると阿座上さん。
「例えば、みんなでつくりたい未来を掲げるときには、出資者やお客さんにとっては『お金』 がそのプロジェクトに関われる『関わりしろ』になります。お金はもともとまわっていくもの。止まっていたら何も生み出さない『循環しなければならないもの』です。『渡す』『取られる』『貯める』といった一方通行ではなく、どんな循環をつくっていけるとよいかが、これからのキーワードになります」。
どういう色のお金を集めるか
お金や資本主義社会とつながるすべを知り経済性の追求も得意とできたなら、社会性の追求が得意な島々はゼブラだらけになるはず。そのため阿座上さんがおすすめするのは「融資・投資・売上・助成金・寄付など、お金の集め方にもいろいろあるので、まずは選択肢を学ぶこと。
そして、どんな変化をつくりたいかを可視化し、共有し、事業者側とお金を出す側の意図に共通項を見つけて、同じ色のお金を集めることです」。島にぴったりなゼブラを増やせるよう、皆で学んでいきましょう。