つくろう、島の未来

2024年12月09日 月曜日

つくろう、島の未来

島の祭に魅せられたカメラマンの島祭コラム「百島百祭」。今回は、遣唐使の寄留地や倭寇の根拠地として、大陸との交流の中継基地として栄えた福江島(ふくえじま|長崎県五島市)の天下の奇祭「へトマト」全4編の第4編。島々に息衝く、祭の魅力をお届けします。

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長崎・福江島のへトマト4

大草履は集落内を進み、山城神社へと到着した。そこには昨年の「へトマト」に使用されたであろう大草履が、月日を感じる姿で鎮座しているのだが、そこへ今年の大草履を重ねるように奉納して「へトマト」は終了となる。野ざらしの状態なので、風雨に浸食され、数年経つと土へと還っていくのだろうが、その大草履の扱いも大雑把で、島の度量の深さを垣間見た。それこそが天下の奇祭たる姿なのだろう。

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怒涛の如く様々な行事を一度に行う、全国的に類例がほとんどない奇祭「へトマト」。もともと別々にやっていた行事を一日でやるようになった事で、奇祭のオンパレード状態になったらしいが、勇壮にして情味豊かな、それでいて笑顔のたくさん溢れる独特な民俗行事だった。変わった祭り名である「へトマト」の名の由来も起源も謎だらけの祭りだったが、参加している若者たちも起源や由緒に囚われず、よく分からないまま、全力で楽しみながら行っているのが、とても清々しくて、好感が持てる祭りだった。

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もちろん奇祭「へトマト」を撮影した私も、多くの見物人の中に含まれるので、若者たちにヘグラと呼ばれるススを顔中塗りたくられた。これで2015年の無病息災は約束されたようなものだし、良しとしよう。清々しさと幸福感に包まれて、奇祭「へトマト」が行われた冬の福江島を後にした。

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◆祭情報◆
日程 毎年1月第三日曜(※2016年は、1/17)
場所 福江島(長崎県五島市)

     

離島経済新聞 目次

【連載】百島百祭

野宿で日本各地の島を旅していた10年前、偶然出会った島の祭に魅せられたカメラマンの島祭コラム。島々に息衝く、祭の魅力をお届けします。

黒岩正和(くろいわ・まさかず)
写真家。21歳より、日本の島の風俗・祭事を撮影(2013年現在300島以上を撮影)。主な撮影テーマは、日本の島・山岳少数民族の風俗・メコン河流域の風俗・ 棚田などの稲作文化・戦国史跡など。
http://kuroiwamasakazu.com/

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