つくろう、島の未来

2024年12月11日 水曜日

つくろう、島の未来

島の祭に魅せられたカメラマンの島祭コラム「百島百祭」。今回は、沖縄県とともに琉球文化圏を構成し、九州以北や中国大陸、東南アジアの影響も色濃く残る奄美大島(あまみおおしま|鹿児島県)の、秋名アラセツ行事(平瀬マンカイ) を3回にわたりお届けします。
(「平瀬マンカイ」第2回目はこちらから)

鹿児島・奄美大島 秋名アラセツ行事(平瀬マンカイ)2

海のかなたの楽園・ネリヤカナヤから神様(稲霊)を迎え五穀豊穣を祈願した後は、浜辺へと降り、「八月踊り」を皆で踊る。

砂浜というより、足場も不安定な小石も散らばる浜で踊る八月踊りは難しいと推測するのだが、皆幼い頃から体に染みついているのか、軽快なチヂン(太鼓)のリズムに合わせた見事な踊りだった。

八月踊りは古くから奄美大島で受け継がれてきた、豊年を感謝する踊りだ。昔は八月踊りと島唄が奄美の人々の二大娯楽だったという。今でも大人から子どもへとその踊りは伝えられ、地域住民は皆、当たり前のように踊ることができる。

八月踊りの後、浜に集まった秋名集落の人々達の宴会が始まる。一汁一瓶(いちじゅういちびん)といって、皆が食べ物やお酒などを持ち寄って、宴をする。

お重などに盛り付けられたご飯やお惣菜はどれも美味しそうで、みるみる内に無くなっていく。いたるところで笑い声がおこり、皆来年の五穀豊穣を楽しみにしているかのような笑顔が溢れていた。

400年以上、大切に受け継がれてきた秋名アラセツ行事は、海と山、自然の恩恵が溢れる奄美の島だからこそ残る、感謝の気持ちが溢れていた。

400年以上の間、代々のノロが立ち、祈りを捧げてきた神平瀬は、重ねられてきた祈と感謝の深さを物語るように、神々しく見える。自然に対する穏やかな感謝の気持ちが共存し、そこに暮らす人々の魂を感じる秋名アラセツ行事撮影旅だった。

◆祭情報◆
日程 旧暦8月初丙の日(2018年は9月11日)
場所 奄美大島(鹿児島県龍郷町)

     

離島経済新聞 目次

【連載】百島百祭

野宿で日本各地の島を旅していた10年前、偶然出会った島の祭に魅せられたカメラマンの島祭コラム。島々に息衝く、祭の魅力をお届けします。

黒岩正和(くろいわ・まさかず)
写真家。21歳より、日本の島の風俗・祭事を撮影(2013年現在300島以上を撮影)。主な撮影テーマは、日本の島・山岳少数民族の風俗・メコン河流域の風俗・ 棚田などの稲作文化・戦国史跡など。
http://kuroiwamasakazu.com/

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