つくろう、島の未来

2024年11月21日 木曜日

つくろう、島の未来

「島々仕事人」は島々に携わる仕事人の想いを紹介する企画。今回は、電気通信事業者大手のKDDIがルクサ(KDDIグループ会社)や離島経済新聞社と共に取り組む「しまものプロジェクト」を推進するチームの担当者にご登場いただきました。プロジェクトが始まって4年。その発端からこれまでの歩みを、振り返っていただきました。

※この記事は『ritokei』27号(2019年2月発行号)掲載記事です。

文・小野 民 写真・矢郷 桃

お話を聞かせてくれた(左から)KDDIサステナビリティ推進室の佐賀真弓さん
同じく鳥光健太郎さん、ルクサの山中竜太さん

関わりしろの多い離島と通信事業

しまものプロジェクトを主導するKDDIの佐賀さんが、離島と出会ったのは2014年3月。
沖縄の離島地域で育った中学生が親元を離れる「15の春」を応援する趣旨で、教育環境と情報リテラシーの向上をサポートするために南・北大東島(みなみだいとうじま|沖縄県)(きただいとうじま|沖縄県)へ足を運び、島の人々とふれあった。

「普段都会にいる私たちの暮らしとはまったく違うニーズがあることを知りました。そして、そこに必要なサポートは、弊社が得意とする分野かもしれないと思うようになりました」(佐賀さん)。

その後、離島地域の課題を解決するため、離島経済新聞社と協業し2015年12月からサステナビリティ活動の一環として、「しまものプロジェクト」を開始。

auやルクサが展開するECサイトで離島産品を販売する「しまものマルシェ」と、販路拡大や商品PRを目的とした離島事業者向けの講座「しまものラボ」の二本柱で、KDDIが培ってきた技術や全国規模のプラットフォームが活かされる。

「しまものラボ」は、これまでに喜界島(きかいじま|鹿児島県)を皮切りに、利尻島(りしりとう|北海道)、伊豆大島(いずおおしま|東京都)、壱岐島(いきのしま|長崎県)と続き、家島(いえしま|兵庫県)や坊勢島(ぼうぜじま|兵庫県)を有する兵庫県姫路市の計6島5自治体で開催してきた。

自治体や商工会などを通じて参加者を募り、全5回の講座を実施。離島産品の販路拡大を図る一助となるべく、全国のauユーザーがアンケートに答え商品を試すauスマートパス「商品モニター」やKDDI社員がモニターとなる「社員モニター」、商品の魅力が伝わる原稿づくりや商品写真の撮り方などを学ぶ講座を経て、希望の事業者は「しまものマルシェ」に出品するゴールを設けている。

「流通の難しさ」は「特別な一品」になる

「弊社は本社ビルだけでも約7,000人の社員がいます。離島産品の『社員モニター』は人気で、いつも100~150人が参加してくれますよ」(佐賀さん)。

アンケートでは商品自体へのフィードバックだけでなく、島自体の認知度やイメージを聞くことも。開催実績を重ねてきて、自治体から「我が島でも」と声が掛かることも増えてきたそうだ。

しまものラボ終了後の販路支援にもなっている「しまものマルシェ」では、これまでに21島33商品の取り扱い実績がある。「しまものマルシェ」はauユーザーにとって、特別感のある商品を購入できる場としてのニーズがあるそうで、「携帯電話などの利用で貯まるポイントも利用できるので、少し高級なものを、ごほうびやプレゼントとして購入される方も多いですね」と鳥光さん。

離島地域には少量かつ生産時期が不安定な商品も多いため、ECサイトでの取り扱いが難しい商品もあるが、限定商品の販売に特化するECサイト「LUXA」では販売が可能。「船が欠航してしまうと予定通り届かないといった離島ならではの課題もあります。

でも、そんな事情も織り込み済みで購入してもらえるようにきちんと説明すれば、それは、当サイトのテーマである『お得に贅沢体験』になると思うのです」(山中さん)。

マルシェを通して、「行ってみたい」を育む

しまものラボの開催地に何度となく足を運んできた3人は、商品への理解と共に、島々の特性にもリアリティを感じている。山中さんは、「LUXAでは、『実際に商品が生まれる場所に行ってみたい』と思って足を運んでもらうのが目標」と言う。

「同じ離島といっても、規模や立地条件によって、いろいろな産品が生まれることを知りました。私自身も、島に行くといつもお土産をたくさん買ってしまいます(笑)」(鳥光さん)。様々な離島と縁ができたことで、当初予想しなかったうれしい展開も。

毎年、KDDIの本社ビルで実施している「離島応援マルシェ」は社員にも好評で、リピーターもできている。プロジェクトが、草の根で島と社員たちとをつなぐきっかけになっているのだ。

「不便と思われている場所でこそ『通信』にできることがあります。可能性は今後さらに広がっていくはずです。しまものマルシェやしまものラボに限らず、私たちの技術をどう活かしていくかを、探っていきたいですね」(佐賀さん)。


プロフィール/
KDDI株式会社
日本国内における電気通信事業の大手。「通信とライフデザインの融合」を推進し、”ワクワクを提案し続ける会社”として、「au」ブランドの移動通信と固定通信に加え、コマース・金融・エネルギー・エンターテインメント・教育など、さまざまなサービスを提供。auユーザー向けのショッピングサイトauWALLETMarketで「しまものマルシェ」を展開している。

しまものプロジェクト
KDDIが2015年に開始した地方創生施策。離島事業者向けの講座「しまものラボ」はこれまで、鹿児島県喜界町、北海道利尻町、東京都大島町、長崎県壱岐市、兵庫県姫路市で開催。

【関連サイト】
KDDI株式会社
しまものプロジェクト

     

離島経済新聞 目次

『季刊ritokei(リトケイ)』島々仕事人

「島々仕事人」は島と島をつなぐ仕事に携わる仕事人の想いを紹介する企画。日本全国の「島」にかかわる、さまざまな仕事人をご紹介します。

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