つくろう、島の未来

2022年07月06日 水曜日

つくろう、島の未来

「島々仕事人」は島々に携わる仕事人の想いを紹介する企画。南の島を中心にしたツアーを提供する旅行会社、南西旅行開発株式会社の内山貴之さんが登場。旅行の企画や手配を主軸に据えつつ、今年からは、離島の生活文化を紹介するメディア『しまのま』の企画・運営の役目も担う。多様な経験や、島と旅人をつなぐ仕事のなかで育まれた想いを聞いた。

※この記事は『季刊ritokei』36号(2021年11月発行号)掲載記事です。フリーペーパー版は全国の設置ポイントにてご覧いただけます。

取材・小野民

お話を聞かせてくれた南西旅行開発株式会社 代表取締役 内山貴之さん

国際協力から家業への転職 やるべきことは地続きだった

東京育ちの内山貴之さんが代表を務める南西旅行開発は、鹿児島出身の両親が渋谷区で創業した旅行会社だ。共働き家庭で、夏休みは両親の実家がある鹿児島県へ。地方でのびのび過ごした幼少期の経験も、内山さんが島や地方と関係を深めるきっかけだった。大学卒業後は「国際協力を仕事に」と就職したが、大きな公的組織ゆえの難しさを感じ5年弱で退職。以後、国際協力はライフワークとし、一番身近な家業を継ぐことに。

「世界の子どもたちを支援するチャリティーマラソンの運営に携わったり、バングラデシュに学校を建設したり。転職後も国際協力へのモチベーションは持続しています。そしてこの経験は今の仕事にもつながっています」。

島へ行き、充足感を得てくれる旅行者はどんな人たちか。島の環境や人が歓迎する旅行者はどんな人か。「島への持続可能な旅行の形を考えられるコーディネーターであれ」という考えが内山さんの指針になっていった。

内山さんの姿勢をより強化したのは、かつて国際協力のプロジェクトを共にしていた仲間、大野佳祐さんと2017年に立ち上げた「株式会社余白探究集団」での経験によるところも大きい。

余白探究集団で手がけた海士町でのツアー

島根県海士町に移住し、隠岐島前高校魅力化プロジェクトに魅力化コーディネーター(現在は学校経営補佐官)として参画する大野さんと手がけたのは、海士町の情報や暮らしを発信するウェブメディア『amatte』の運営や、オフシーズンの誘客策を考えることなど。この経験を経て、さらに離島専門の旅行会社としてできることを考えるようになったと言う。

ウェブメディア『amatte(あまって)』

島の人口は分母が小さいその分、個の力が大きくなる

「(小さな島では)個々の事業者の担う役割りが大きい、すなわち1つの事業者が欠けると打撃も大きい。それはどこの島でもいえることだと気づきました。幸い、私たちがツアーなどで繋がっている事業者さんたちは、『南西さんが送ってくれる人なら間違いない』と信頼してくれている。ならば旅行者にも、私たちがしてもらいたい旅のかたちをしっかり発信していかなければなりません」。

南西旅行開発株式会社のホームページを見ると、ツアーの案内、訪問先の島の楽しみ方など、分かりやすい語り口に親しみを覚える。島への旅は交通費も高くなるが、そのハードルを超えて旅行をする人だからこそ、どんな心構えで旅をしてほしいか、「打ち出しのトーン」は常に意識しているという。

『しまのま』が届ける風土ツーリズムのヒント

旅のあり方は時代によって変化していくもので、現在は、島の暮らしや環境を守っていくこと、島に息づく風土を大切にすることが重要だと内山さんは考えている。

屋久島の北部にある漁師町。一湊(いっそう)集落

「例えば、土地のキャパシティを超えてハイシーズンに観光客が押し寄せるオーバーツーリズムの問題を抱えている地域もある。一方、実はオフシーズンにこそ島の魅力を体験できることもあるんです」。

内山さんが2月の屋久島(やくしま|鹿児島県)を訪問した時の宿泊先の朝ごはん。並んだ食パン、たんかんジャム、紅茶は全部島のもので「これぞ島の集落の景色だ」と感じたという。伝えたいのは、島にある普段の生活文化。島の暮らしの一端をお裾分けしてもらうような目線を提案したいと考え、ウェブメディア『しまのま』を立ち上げた。取材するのは島在住のライターたち。彼らが綴る記事からは、観光案内とは一線を画す島の日常や風土が垣間見られる。

ウェブメディア『しまのま』

「『しまのま』では、今後失われて欲しくない島の風土のストックをしていると思っています。これからの旅は、風土ツーリズムの時代。島の日常は、旅人にとっては異日常だから、こういう生き方もあるんだと知って、色々な豊かさに思いを馳せてもらえる機会をつくっていきたいですね」。


内山貴之(うちやま・たかゆき)さん
1978年生まれ。東京育ち。大学で国際関係について学んだのちJICAに5年弱勤務後、家業の南の離島専門の旅行会社・南西旅行開発を継ぐ。2017年、株式会社余白探究集団を起業。

【関連サイト】
南西旅行開発株式会社
内山さんの父が沖縄専門の旅行会社から独立し、1988年に会社化。主に沖縄、南西諸島、九州の旅が専門。島の暮らしや環境に寄り添った旅行の提案をモットーとする。

しまのま
島の生活文化をすくい上げ、とどめておく「島の間」を目指して2021年に誕生したウェブメディア。島在住のライターたちが取材・執筆しているからこその視点が魅力だ。

離島経済新聞 目次

『季刊ritokei(リトケイ)』島々仕事人

離島経済新聞社が発行している 全国418島の有人離島情報専門のタブロイド紙『季刊ritokei(リトケイ)』 本紙の中から選りすぐりのコンテンツをお届けします。 「島々仕事人」は島と島をつなぐ仕事に携わる仕事人の想いを紹介する企画。 日本全国の「島」にかかわる、さまざまな仕事人をご紹介します。

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