つくろう、島の未来

2024年04月13日 土曜日

つくろう、島の未来

「島々仕事人」は島々に携わる仕事人の想いを紹介する企画。今回は、“お手伝い”をしに“旅する”サービス「おてつたび」を運営する会社の代表永岡里菜さんに取材。「うちの地域には来ないよ」と言われる場所に人を呼ぶ新しい仕組みを軸に、描く未来について伺いました。

※この記事は『季刊ritokei』41号(2023年2月発行号)掲載記事です。フリーペーパー版は全国の設置ポイントにてご覧いただけます。

取材・小野民 写真・牧野珠美(メイン)

お話を聞かせてくれた株式会社おてつたび代表取締役の永岡里菜さん。事業者がいる壱岐島をはじめ、伊豆諸島、笠岡諸島、佐木島……と次々に行ったことのある島の名前があがった。

「売り先がない」ならつくる解決に向けて、勢いで起業

「お手伝いをしながら知らない地域を旅する」マッチングサービス「おてつたび」のWebサイトを開き募集先一覧を見ると、宿泊施設や農家など季節によって人手を必要としている全国の事業者がずらりと並ぶ。現在、募集先は47都道府県の900事業者、対して応募資格を有するユーザーは3万人になり、増加を続けている。

戸馳島(とばせじま|熊本県)では「宮川洋蘭」でおてつたびが行われている。そのほか全国で、農業、旅館の手伝いはじめ、多岐にわたるおてつたびを実施中だ。

このサービスを使っておてつたびをすれば、寝床は提供され最低賃金以上の報酬を得られる。交通費が浮くので地方へも渡航しやすく、「離島地域の募集があるとすぐ埋まりますよ」とのこと。壱岐島(いきのしま|長崎県)の旅館に始まり、複数の島に受け入れ先は広がっている。

賃金を得て働くことは前提ながら、受け入れ側がおてつたびの地域サポートチームと共に練り上げる募集プランは、風土を味わい人と触れ合う余白も魅力だ。

「ユーザーの半分が20代ですが、60〜70代のシニアも珍しくなく、おてつたび先での世代間交流の話も聞きます。私が大学生のときにこのサービスがあれば利用したのに」と永岡さんは笑う。

この事業を立ち上げた永岡さん自身は、三重県尾鷲市出身。自己紹介すると「どこ、そこ?」と言われ、魅力はあるのに有名じゃない地方の課題を感じていたという。社会人になってから全国を旅した経験からも、過疎地の交流人口を増やしたい想いが起業につながった。

口コミや紹介が担う受け入れ先の拡大

他に類をみないサービスは、当初説明が難しく受け入れ事業者の拡大に苦労したが、実際におてつたびを受け入れた体験によって風向きは変わっていったという。

「地域に受け入れ先が一つできると周囲にも広がっていく例が多いです。特に人の流動性が少ない地域では、自治体、JA、NPOなどの団体が核となって説明会を開いてくださるとスムーズにいく場合が多いです」と永岡さん。最近は各地のJAや自治体が募集先になる例も増えていて、離島地域では南大東島観光協会が募集窓口となる例がある。

「最初はみなさん『うちの地域で募集しても人は来ないよ』と言いますが、私たちが一緒に魅力的なおてつたびプランを考えていきます。鍵は、受け入れ側の人となりを伝えること。

担い手不足などのいわば『弱み』も見せた方が、ユーザーは『手伝いに行こう』と思う。『草むしりに応募が来るなんて』と驚かれますが、課題は人を呼ぶチャンスなんです」(永岡さん)

「かかりつけ地域」をつくり関係人口を増加させたい

受け入れ事業者も順調に増えているが、「日本国内の市町村数は1,724(R5年1月時点)、集落単位でみればさらに膨大な地域があります。選択肢を増やして、さらにたくさんの魅力的な地域との出合いにつなげていきたい」と永岡さんの目標は高い。

おてつたびを軸に目指すのは、過疎化、少子高齢化が不可避な地方の関係人口を増やすこと。たやすいことではないが、ユーザーや事業者から届く生の声から手応えも感じている。

「例えば、大三島(おおみしま|愛媛県)の旅館さわきさんへのおてつたび後、観光で再訪したり、その土地を気に入って東京との2拠点居住先に選んだ方がいるそうです。こういう話はすごくうれしいですね」と言い、他にもユーザーや事業者からの反応を教えてくれた。

おてつたびをきっかけに地域と縁ができ、かかりつけ医のように『かかりつけ地域』を持つ人が増えていく未来が、永岡さんが描く理想の世界。「休みがあったら『旅行に行く?それともおてつたびに行く?』という会話が、当たり前になるような新しい価値観をつくっていきたいです」(永岡さん)


永岡里菜(ながおか・りな)さん
1990年、三重県尾鷲市出身。千葉大学教育学部を卒業後、イベント企画・制作会社を経て独立。半年間の地方巡りの経験も生かして、2018年に株式会社おてつたびを起業。

【関連サイト】
おてつたび株式会社
「日本各地にある本当にいい人、いいもの、いい地域がしっかり評価される地域を目指す」が目標。運営する「おてつたび」は運用3年弱の2022年末時点でユーザー数3万人、登録事業者数900を誇るサービスに急成長。

離島経済新聞 目次

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