島々仕事人 #026 上場企業を育てあげ、ふるさとの島に新会社を設立　サンフロンティア不動産株式会社堀口智顕さん

「島々仕事人」は島々に携わる仕事人の想いを紹介する企画。今回は、佐渡島で生まれ育ち、不動産再生を中心とした不動産事業やホテル事業を展開する上場企業・サンフロンティア不動産を立ち上げた代表取締役社長の堀口智顕さんが登場。ふるさとに貢献するべく、2017年に設立したサンフロンティア佐渡についてお話を伺いました。

※この記事は『ritokei』30号（2019年11月発行号）掲載記事です。

取材・離島経済新聞社　写真・牧野珠美

サンフロンティア不動産株式会社_堀口さん

お話を聞かせてくれたサンフロンティア不動産代表取締役社長堀口智顕さん

上場企業を育てあげふるさとの島に新会社を設立

東京の中心部、皇居を眺望するビル群が立ち並ぶ有楽町に本店を構えるサンフロンティア不動産は、1999年に堀口智顕さんが立ち上げた会社だ。

堀口さんの生まれは佐渡島南端にある港町・小木。「一人っ子ゆえ、親からも大事に育ててもらった」と笑顔をみせ、ふるさとの魅力を、ありありと語りはじめる。

その言葉を借りると、佐渡島は「海と山しかない」けれど「面白いところ」。その昔、島流しにあった政治犯や思想犯、貴族や天皇などが次々とやってきた佐渡島には、京都や奈良に類する神社仏閣がある一方、金山を中心に培われた武家文化に、北前船の寄港地として栄えた商人文化と、3つの文化が残っている。

そんな魅力的な町を知ってもらうため、堀口さんは2017年にサンフロンティア佐渡も立ち上げた。

（提供：サンフロンティア不動産）

「旅に出るときに絵葉書を持ち歩くと何かが見えます。何が見えると思いますか？」。堀口さんは取材中にそう問い「ポスト」と答えた。

ポストは普段、目にしている景色のなかにあっても、絵葉書を持たなければその位置すら考えない存在である。堀口さんは「絵葉書を持つことで見える世界の違い」を意識し、佐渡島の「旅の仕方」を提案したいと考えている。

遡れるだけでも佐渡島には1300年の文化がある。

世阿弥が流されてきたことで育った能文化では、国内に存在する能舞台の3分の1があり、集落ごとに異なる鬼太鼓（おんでこ）は120種ほど存在。佐渡おけさや人形芝居があり、農業も盛ん。「ひとつの島ですが、多様性に富んだ島なんです」。

どんなことでも一生懸命やり続ける

高校卒業まで佐渡島で暮らしていた堀口さんは、島で大工をしていたおじさんの背中に憧れ、建築士を志して上京。しかし、その進路には進むことができず、新宿の地下にあるカフェで店長を務めていた。そして7年間が過ぎようとする頃、一念発起して株に手を出した。

「当時の貯金100万円を先物取引屋に全部つぎ込んだら、1ヶ月そこそこですかんぴんにされてしまったんです」。という堀口さんはしかし「この歳でこんな経験をさせてもらってなんて幸せなんだと思った」と言い、これを契機に人生をやり直そうと、建築事務所へ就職。26歳だった。

再就職した小さな建築事務所は、建築とは名ばかりで実態は不動産屋だったが、「全部、自己責任と思っているので、なんでも前向きに受け止める」という堀口さんは宅建の資格を取り、不動産仲介業務を行ううち、空間デザインを企画してお客様に提供するというビジネスを作り上げ、独立の道を歩んだ。

「なんでも一生懸命やると上手になる。上手になると頼りにされ、もっと一生懸命やると結果が出てくる」。そう信じながら立ち上げたサンフロンティア不動産では、売上高4500万、経常利益400万円の状態を8年目で売上50億まで成長させ、9年目に上場企業となった。

「島には何もなかったので、ちょっとしたものでもお金にするという考え・商才というのは元来からあったのかもしれません」。

人口減少著しい島ににぎわいをつくりたい

リーマンショックなど経済の荒波を乗り越えた後、旅行好きだったこともありホテル事業に乗り出した。

宮古島の特産品「雪塩」で知られるパラダイスプランが運営する「島の駅みやこ」や、宮古島のにぎわいを視察したことをきっかけに、サンフロンティア佐渡を設立。100年近い歴史を誇る老舗旅館「ホテル吾妻」の経営を譲りうけ、市街地では「たびのホテル佐渡」を運営し、タクシーやバスも保有しながら観光で島を元気にしようと邁進している。