つくろう、島の未来

2024年10月03日 木曜日

つくろう、島の未来

「島々仕事人」は島々に携わる仕事人の想いを紹介する企画。今回は、インターネット関連サービスを提供するGMOペパボ株式会社が運営する国内最大のハンドメイドマーケット「minne(ミンネ)」を生み育ててきた、阿部雅幸さんが登場。2016年から続く、奄美市の「フリーランスが最も働きやすい島化計画」との提携事業について聞きました。

文・小野民 写真・矢郷桃

※この記事は『ritokei』28号(2019年5月発行号)掲載記事です。

お話を聞かせてくれた阿部雅幸さん

島のメディアの活躍で自治体との連携をスムーズに

ICT(インターネット通信)を活用して、フリーランスの働き手として離島に住むことを支援する、奄美市の「フリーランスが最も働きやすい島化計画」が始まったのは2015年。

インターネットを通じた業務委託(クラウドソーシング)のプラットフォーム「ランサーズ」や、オンラインで生放送の授業を提供する「スクー」、デジタル写真素材のプラットフォーム「ピクスタ」と共に、インターネット関連事業を行うGMOペパボも提携先に加わった。

どの企業も拠点は首都圏ながら、場所にとらわれない、むしろ距離のハンデを克服する事業を展開している会社だ。GMOペパボでは、ハンドメイドマーケットのミンネが主になり奄美市とタッグを組むことに。ミンネの生みの親でもある阿部雅幸さんは、「正直なところ、離島でできることって何だろうと、最初は半信半疑だったんです」と振り返る。

しかしその不安は、行政など島側との調整役を担当する「しーまブログ」の活躍により杞憂に終わった。

しーまブログは、奄美群島(あまみぐんとう|鹿児島県)の情報を発信するメディアを持ち、奄美を知り尽くした存在。「離島だからと気負うことなくミンネが培ってきたものを展開することに集中できました」(阿部さん)。

信頼する島のパートナーを得たこともあり、2016年から3年連続で、ハンドメイドセミナーやハンドメイドマーケットの開催にミンネが協力し、詳細な開催レポートがしーまブログから発信されている。

ハンドメイド作家の夢をミンネが後押し

ハンドメイド講座では、ミンネのサービスの説明だけでなく、実際に作品を売るための具体的なコツも指導。その後も、島内のハンドメイド作家が講師を務めるなどして講座は続いている。

「あまみハンドメイド大賞」は奄美の自然・豊かさ・時間を表現した作品であること、オリジナルのハンドメイド作品であることが審査基準。

第3回にあたる2019年3月の開催時には、会場も拡大し、来場者数も800人を超えた。毎年審査委員を務める阿部さんは「出品作品以外にもハンドメイド作品や飲食ブースが並び、すごく楽しい雰囲気」と喜ぶ。

今年も32名38作品もの応募作品を時間をかけて吟味し、「島らしさをうまく表現した作品が多く、年々クオリティも上がっています。

1年目に奄美在来の黒ウサギをモチーフにしたポーチを出品した中学2年生の子が今年、ミンネ賞を受賞したんです。泥染めのすてきな作品でした。物づくりを仕事にしていくのが夢だそうで僕らの取り組みが夢に繋がっていくと、とても嬉しいです」と話す。

ミンネを通じて生計を立てる作家も登場

島で活動する作家には、個人事業主が多い。そこでミンネは手助けとなる確定申告サービス「会計freeeforminne」を作家向けに提供。個人では取り組みが難しい世界的なキャラクターとのコラボ商品をつくる作家も現れている。

「ミンネはどんどん進化しています。ハンドメイドの作品が好き、作家さんを応援したいという、サービス開始時から持ち続けている想いを、これからもサービスに生かしていきたいです」(阿部さん)。

今や、52万人もの作家が利用し、968万点もの作品がミンネのプラットフォームに並ぶ。アプリのダウンロード数は1,059万件を超え、海外からも購入ができるようになった。奄美でもミンネを利用しながら、手づくり作品の売り上げで生計を立てる人も出てきている。

阿部さんは、奄美市に通うなかで、特定の地域に着目することは、作家や作品と出会うチャンスをつくる好機になると考えるようになったという。

「ミンネの全ての作家を対象に開催しているコンテスト『minneハンドメイドアワード』には1万4,000点以上もの作品が集まりますが、地域で区切って小規模なコンテストをする良さもあります。さまざまな場所でハンドメイドを楽しむ人が増えるような種まきをしていけたらという新しい目標ができました」(阿部さん)


プロフィール/
GMOペパボ株式会社
2003年創業。レンタルサーバーのロリポップ!やブログサービスのJUGEMなどのインターネット関連サービスを提供している。東京都渋谷区に本社、福岡県福岡市に支社を持ち、従業員数は250名を超える。

minne(ミンネ)by GMOペパボ
2012年に誕生した、個人間でハンドメイド作品の売買ができるプラットフォーム。現在、作品を出品する作家数は52万人を突破し、作品数は968万超。専用アプリの累計ダウンロード数1,059万を超す。URL:minne.com
※作家数、作品点数、アプリダウンロード件数は、2019年4月末時点のもの

【関連サイト】
GMOペパボ株式会社
minne(ミンネ)by GMOペパボ

     

離島経済新聞 目次

『季刊ritokei(リトケイ)』島々仕事人

「島々仕事人」は島と島をつなぐ仕事に携わる仕事人の想いを紹介する企画。日本全国の「島」にかかわる、さまざまな仕事人をご紹介します。

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