「島々仕事人」は島々に携わる仕事人の想いを紹介する企画。今回「定額で、世界中住み放題」という新たなサービス「HafH(ハフ)」を運営する株式会社カブクスタイル(長崎市)の大瀬良亮さんが登場。日本の島々にも拠点を広げるHafHと、有人離島数では日本一の長崎で生まれ育ち、ふるさとを愛する大瀬良さんに話を聞いた。
※この記事は『季刊ritokei』32号(2020年8月発行号)掲載記事です。フリーペーパー版は全国の設置ポイントにてご覧いただけます。
取材・離島経済新聞社 写真・橋本賢太
お話を聞かせてくれたKabuK Style Co-CEO 大瀬良亮さん
地球を15周しながら「世界中、住み放題」を構想
「ワーケーション」という言葉を耳にする機会が増えてきた。もはや暮らしの隅々まで浸透するインターネットと、パソコンさえあればどこでも仕事ができる人も増え、そんな人々が求める「ひとつの場所にとらわれずに、働きながら暮らせる」ことの代名詞として、ワーク(仕事)とバケーション(休暇)を組み合わせた新語が生まれたのだ。とはいえ、そんな人も拠点がなければ動きづらい。そこで広がっているのが、多拠点居住を叶える「住み放題」のサービスだ。
そのひとつ、2018年に長崎からスタートしたHafHは、世界中のゲストハウス等と提携しながら拠点を増やし、わずか2年で世界176都市300拠点超にサービスを拡大。五島列島(ごとうれっとう|長崎県)や宮古島(みやこじま|沖縄県)、東京の神津島(こうづしま)などにも拠点を広げている。設立者である大瀬良亮さんは「僕らが目指しているのは暮らす感覚。拠点づくりでも『普通に仕事ができるね』と感じられることを大事にしています」と話す。
長崎市内で育った大瀬良さんは、大学進学後、東京の大手広告代理店に就職。プライベートでは、長崎出身の若手を集める県人会を立ち上げ、仕事では、ソーシャルメディアスタッフとして政府に出向。世界中を飛び回る稀有な経験に恵まれ、地球15周分を移動する日々のなか「これならどこでも仕事ができる」と感じたことから、仲間とともにHafHを構想。クラウドファンディング等で多くの方に支援をいただきながら、サービスを立ち上げた。
島々にも広がるHafH 福江島には直営拠点も誕生
それにしても、好きな場所に移動しながら働き、暮らす人とはどんな人なのだろうか。大瀬良さんはHafHのユーザー層を「7割が20〜30代で、フリーランスや個人事業主もいますが、意外にも会社員が多いんです」と話す。そして新型コロナウイルスの影響から、企業のテレワーク推進が加速する今、会社員の登録はさらに増えているという。
それまで決まったオフィスに出勤することが日常だった会社員にしてみれば、HafHのウェブサイトから登録するだけで、世界中の拠点で暮らせるチケットが手に入るのは夢のよう。そしてその拠点には、島も含まれる。
300を超えるHafH拠点のうち、長崎市、東京、福岡、マレーシア、そして五島列島の福江島(ふくえじま)には直営施設が存在する。
今年4月にオープンした福江島の「HafH Goto The Pier」は会員限定で、1カ月単位で居住できる「職住近接のコミュニティハウス」だ。「長期滞在を前提とするコリビング(※)プロジェクトとして、1期、2期と振り返られるようにしていて、住民票を置くこともできる特別なプランにしています」と大瀬良さん。「人気が高い」というその拠点は、開始前から全6室が満室となり、入居者のなかには1期で終わらず2期目以降も延長して暮らす人も。さながら「お試し移住」拠点である。
※コワーキングスペースのようにさまざまな業種の人が仕事をしながら一緒に過ごせる職住一体型の施設
島からすれば移住候補者が集う拠点としても期待できる。しかし大瀬良さんは「逃げ場のある距離感を保つことができる」ことが新しいライフスタイルを求める人々のニーズを掴んでいると読む。滞在の結果として、土地との縁を深める人が現れることはあっても、誰もが観光や移住を求めていないという、絶妙な空気感を大瀬良さんは大事にする。
新たなライフスタイルとつながる「第二のふるさと」
福江島に直営拠点が生まれた背景には、島に信頼できる人々が存在することや、有人国境離島法による補助金が活用できるなどのポイントもあるが、世界中を旅する大瀬良さんにとって、五島が「第二のふるさと」と感じられる場所であったことも大きかっただろう。
「五島は自分の生命力が120%になるような場所です。瀬戸内海の島や、伊豆諸島(いずしょとう|東京都)、小笠原諸島(おがさわらしょとう|東京都)、佐渡島(さどがしま|新潟県)など、島に行くと自分の心のふるさとである五島とつい比較してしまいます。でも実際、それぞれに違う魅力があり、違う意味を持つ海がありますよね」。
HafHは「Home away from Home」の頭文字であり、その意味は「第二のふるさと」。大瀬良さんは、新たなライフスタイルを求める人々が、第二のふるさとと出会い、つながるきっかけもつくっている。
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HafH(ハフ)
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