つくろう、島の未来

2022年11月29日 火曜日

つくろう、島の未来

「島々仕事人」は島々に携わる仕事人の想いを紹介する企画。今回は、玄界灘に浮かぶ島々で「オーガニックアイランドプロジェクト」を進めるリトコスの三田かおりさんが登場。耕作放棄地を開墾し化粧品の原材料を栽培する活動から、離島留学の受け入れサポートまで、精力的な取り組みの背景にある思いを伺いました。

※この記事は『季刊ritokei』38号(2022年5月発行号)掲載記事です。フリーペーパー版は全国の設置ポイントにてご覧いただけます。

取材・石原みどり 撮影・鯨本あつこ

お話を聞かせてくれた株式会社Retocos代表取締役・NPO法人リトコス代表理事 三田かおりさん

「化粧品の原料」という宝を唐津の島々で探す

高島、神集島、加部島、小川島、加唐島、松島、馬渡島、向島。佐賀県唐津市沖に浮かぶこれらの島々で、化粧品原料を生み出す「オーガニックアイランドプロジェクト」が進む。原料となる植物が育つのは“元”耕作放棄地。島の風土に合わせ、お年寄りでも栽培しやすい植物を自然農法で育てながら、安全で高品質な原料を育てている。

発起人の三田かおりさんは、佐賀県佐賀市の出身。農地再生や教育事業に取り組むNPO法人リトコスと島々で栽培する自然素材の販売や商品化を手がける地域商社・株式会社Retocosの代表を兼務、子育てにも励むパワフルな女性だが、花のようにふわりとした優しい笑顔が印象的だ。

大学卒業後、一時は外資系化粧品メーカーの販売に携わっていた三田さんだったが、扱っていた商品は自分の肌に合わなかった。しかし、客は自分の言葉を信用して高額な商品を購入していく。「自信を持って人に勧められるものを売りたい」という思いがその心に宿った。

その後、三田さんが島と出会ったのは2017年。当時、在籍していた「ジャパン・コスメティックセンター(以下、JCC)」(※)で、化粧品の原料となる素材を探すため、唐津の島々を訪れたことがきっかけだった。

※佐賀県唐津市及び玄海町を化粧品産業の集積地とする「唐津コスメティック構想」を推進するため2013年に設立された産学官連携組織

JCCの任務として、島々に自生するヤブツバキから採れる椿油を求めて島々を巡り始めた三田さんの目に、島の素材は宝物のように映ったという。

初めに商品化できたのは、4万5千本の椿が自生する加唐島 (かからしま|佐賀県) の椿油だった。人口は約100人、昔から漁師が副業として椿油を生産していた小さな島だけに、伊豆諸島の大島(おおしま|東京都)・利島(としま|東京都)や長崎県の五島列島(ごとうれっとう)に比べると、加唐島産椿油は知名度が低く生産量もはるかに少ない、知る人ぞ知る存在だった。

「島の椿の実を採るため、加唐島つばき工房の皆さんと一緒に、剪定を行い椿園を整地しました」(三田さん)。

抽出に時間がかかり少量生産ではあるが、非加熱製法で搾油される加唐島の椿油は、オレイン酸が豊富で質の高い油が採れるため、差別化が図りやすかった。生産者の顔が見える野菜のように、つくり手の顔が見える椿油としてブランド化したところ、有名アパレルメーカーのコスメブランドの原料として採用された。

島々の課題を解決したい NPOと株式会社で未来へ

化粧品の原料を探すため、島々を巡ってきたが、そこで目にした多様な地域課題も無視できなかった。例えば、人口減少に空き家問題、耕作放棄地、イノシシなどによる獣害被害、漁業衰退など。それらを解決するべく2020年にNPO法人リトコスを立ち上げ、加唐島での成功をもとに島々の耕作放棄地を再生し、化粧品の原料を育てるプロジェクトに乗り出した。

島の人々の反応はさまざまで「初めは『草に興味を示す変な人』だと思われていたようです」と三田さん。島々に通いながら、各島の環境や状況に理解を深め、島の人々との関係も深めていった。現在は各島の特性に合わせ、ローゼルやホーリーバジル、キヌアなどの原料生産を担い、リトコスの原料生産に関わる島の関係者は100名を超える。

いずれの島も、目下の課題は若い担い手の不足だ。島の未来を見据え「雇用を創出できるよう、原料の買取価格を上げたい。そのためには付加価値を高めることが重要」と考えた三田さんは、耕作地のJAS認証取得を進めている。人口約200人の高島(たかしま|佐賀県) ではすべての耕作地でJAS認証を取得し、国際的なオーガニック認証の取得も視野に入れる。さらに、畑づくりやオーガニックコスメづくりに参加できる体験型ツーリズムを企画し、小さな島だからこそ可能な高付加価値化を進めている。

2021年には株式会社Retocosを設立し、島の地域課題を解決するNPOリトコスから原料をバトンタッチし、販売や加工品を手がける地域商社との両輪を回しはじめた。現在は唐津市内のオフィスに加え、高島にもオフィスを建設中。高島では離島留学の運営を支援するなど、さらなる地域活性化に突き進む三田さんが胸に描くのは「人々が自然と共生しながら豊かに暮らす持続可能な社会」。その熱意もまた、島々の未来を形づくる宝のひとつである。


三田かおり(みた・かおり)さん
佐賀県佐賀市出身。外資系化粧品メーカーに就職後、出産を機に佐賀県内の商工会連合会に転職。JCCを経てNPO法人リトコス及び株式会社Retocosの代表を務める

【関連サイト】
株式会社Retocos

離島経済新聞 目次

『季刊ritokei(リトケイ)』島々仕事人

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