つくろう、島の未来

2021年09月17日 金曜日

つくろう、島の未来

「島々仕事人」は島々に携わる仕事人の想いを紹介する企画。今回登場するのは、2019年10月に誕生したEAS LLPの事務局長を務める畑山博康さん。九州を拠点とする航空会社3社と日本航空(JAL)、全日本空輸(ANA)の大手2社が協業する新しい取り組みについて伺った。

※この記事は『季刊ritokei』33号(2020年11月発行号)掲載記事です。フリーペーパー版は全国の設置ポイントにてご覧いただけます。

取材・小野 民

お話を聞かせてくれた地域航空サービスアライアンス有限責任事業組合(EAS LLP)事務局長 畑山博康さん

垣根を超えて手を組んだ離島地域をつなぐ空のインフラ

島々にはそれぞれの島でしか見ることのできない多様な風景があるーー。日本の大手航空2社と、天草エアライン、オリエンタルエアブリッジ、日本エアコミューターの3社が共同で立ち上げたEAS LLPで事務局長を務める畑山博康さんは、島々の航路を支える仕事を通じて、そんな実感を抱いている。

EAS LLPに加盟する地域航空3社はいずれも九州に拠点を置き、離島地域への航路をもつ地域に根差した航空会社だ。それぞれ地元と連携しながら独自に会社を運営するが、利用者の母数が限られるなど、共通する課題も多い。島に暮らす人々にとって航路は生活に欠かせないインフラであるため、運営を維持するための施策が長年求められてきた。

左:天草エアライン/右:オリエンタルエアブリッジ

JALとANAという全国に航路を持つ航空会社を加えての有限責任事業組合(※LLP)設立は、地域の航路を維持するチャレンジとしてスタートした。その展望は、優劣のない独立共同体として協業し、地域航路の維持に成果を上げていくことだ。

まずは、運航維持のための技術力と安全性の向上を目指し、機材や乗務員の融通を円滑にするための相互支援が始まっている。また、販売強化を期待する声も多いことから、旅行商品の共同開発や合同プロモーションも計画。LLPという柔軟さを生かせば、これまで実現しなかったJALとANAのコードシェア便の運航も夢ではなくなる。

希少な体験へ 距離を縮める航路の魅力

LLPの具体案の検討・立案は5社のエキスパートによって進められ、畑山さんはJALから派遣されている。長野県飯山市の出身で、島とは縁遠かった畑山さんだが、各地の島に出張するようになって感じたのは、ぐるりと山に囲まれたふるさとと島には、共通点が多いことだった。「少子高齢化や交通の不便さなど苦労が分かる。地域航空を持続していくためにどうにか役に立ちたい」(畑山さん)。

対馬、壱岐、奄美大島、天草など、EAS LLPの航路を飛びまわるようになった畑山さんは最近、旅行者の目線で見る島の魅力を、「希・離・近」の3つの漢字でプレゼンしている。希少な自然や文化に触れられること。海に囲まれ独立した島は、普段の喧騒から離れられる環境でもあること。とはいえ飛行機を使えば案外近く、窓から見える海原や地上の景色を近くに感じることにも魅力を感じたという。

左:日本エアコミューター/右:機上から見た風景

「離島地域にはそれぞれ、全く違った趣があると感じました。例えば対馬に行った時には、海の先に韓国の釜山が見えて、国境の島なんだと実感しましたし、万関瀬戸と呼ばれる運河には歴史の重みを感じ圧倒されましたね。それぞれの島でしか見ることのできない固有の歴史を体感したんです」と語る畑山さんは、自らが島の魅力を発見しながらの仕事に確かなやりがいを感じている。

コロナ禍の1年目を超えて 今こそ離島地域への足を支えたい

EAS LLP設立から1年。その間の半分はコロナ禍で、予定していたシステム改修の着手をいったん見合わせざるを得ないなどの事態にも見舞われた。そんななか水面下で準備を進め、これまでに関連商品として離島地域へのパッケージツアーが4つ発売された他、チャーター機を使ったアイランドホッピングなど新たな試みも始まった。海外旅行がままならない今だからこそ、海を渡る島旅に注目する機運もある。

「これからリモートで仕事ができる環境が整ってくれば、島にいながら働くワ―ケーションなどの可能性は現実味を増すでしょう。関係人口が増えれば、島に暮らす人々が行き来する航空便の持続可能性にもつながります。5社それぞれが強みを持ち寄って未来への課題を解決して行きたいです」(畑山さん)

※LLP……有限責任事業組合。出資金の多少に関わらず、自由な割合で利益配分できる事業体で、ルールを独自に決定して運営できる。それぞれ規模が違う法人同士でも対等な関係を結んで協業する仕組みとしても有効

※地域航空サービスアライアンス有限責任事業組合(EAS LLP)
離島地域やそれに準じる地域の生活に重要な役割を果たす路線を持続可能とするために、九州に拠点を置く地域航空3社の経営の独自性は維持しながら、大手2社の協力を得て協業を深化させる取り組みを促進していく組織として設立された。


【関連サイト】
地域航空サービスアライアンス有限責任事業組合(EAS LLP)

離島経済新聞 目次

『季刊ritokei(リトケイ)』島々仕事人

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