奄美群島、種子島、屋久島など、28島の有人離島を誇る鹿児島県には、飛行機で渡ることができる島も多くあります。「島々仕事人」は島と島をつなぐ仕事に携わる仕事人の想いを紹介する企画。『季刊ritokei』05号で掲載された人気企画が、WEBリトケイにも出張公開。2人目は人目は島人、旅人、ビジネスマンなど多くの人が行き交う鹿児島空港のカウンターで島人を笑顔で迎える空港職員 五田加代子さんです。
■人が行き交う空港で島人を笑顔で迎え、送り出す仕事
日本航空
鹿児島空港所職員 五田加代子さん
■私を支えてくれる言葉はお客さまからの「ありがとう」
空港でお客さまを迎える空港職員の仕事は、カウンターでのチェックイン業務、荷物の預かり業務、搭乗口でのゲート業務、お手伝いを希望されるお客さまのお手伝いや誘導など、多岐に渡る。こうした仕事に五田加代子さんは幼い頃からあこがれを抱いていた。
「母から聞いた話ですが、私が生まれて初めて歩いた場所は空港だったそうです。空港職員の人や客室乗務員の人に見守られて。空港は多くの人が集まるエネルギッシュな場所で、そんな活気のあるところで働きたいという気持ちが幼い頃からありました。空港は私にとって特別な場所です」。
夏休みになると増えるのが、お子さまひとり旅。空港に大人の見送りと出迎えがあれば、お子さまひとりでも搭乗することもできる。ひとり旅に出る子どもたちを万全の体制でフォローするのも空港職員の仕事のひとつだ。長期休暇のシーズンは、さながら先生のように子どもたちの列を誘導することもある。
「以前、ひとりのお子さまが喜界島へ向かうことがあったんです。でも喜界島が悪天候で奄美に着陸する可能性があって、念のため奄美空港にお迎えに来てくださる方を探さなくてはならなくて。そこでお見送りのご家族と一緒に、搭乗時間ギリギリまで奄美の知り合いに連絡を取ったことがありました」。
無事に子どもを送りだした五田さんは、後日そのご家族にお礼を伝えられる。「街で突然”先日はありがとうございました。娘はおかげさまで無事に喜界島へ到着できました”と声をかけていただいたんです。顔を覚えていてくださったのが嬉しかったですね」。
■「あなたがいないと」その言葉に島々を繋ぐ仕事していると実感
日々の仕事では、離島から病院に来られる車いすの方の搭乗などをお手伝いすることも少なくない。「あなたがいないと飛行機に乗って病院へ行けないのだから、あなたがいないと生きていけないわ」。あるお客さまにそう告げられたとき、五田さんは涙が出るほど感激したそうだ。
離島のお客さまからは、ときに「ありがとう」のメッセージとともにサトウキビやサーターアンダギーなど、島ならではの差し入れをいただくこともあるという。そんなときは地上での業務でありながら、「島々と繋ぐ仕事をしている」と実感するという。
「飛行機は旅行で利用する人も、仕事で利用する人も、生活で利用する人もいます。私たちはどなたにも安心して乗っていただけるように、少しでも不安がある方にはそれを取り除いてあげられたらと思っています。そして、ゆったりとした気持ちで離島の景色を見ながら、空の旅を楽しんで欲しいですね」。
■日本一の空港を目指して
飛行機が定刻に出発するために空港では多くの人が働いている。それをあらためて感じたのは自身がプライベートで旅行に出掛けた時だった。「昨年、屋久島へ行くために飛行機に乗ったとき、忙しそうに働く同僚たちを見て1便を飛ばす責任と大変さを痛感しました」。
部署ごとに最高のバトンタッチをすることで安心のフライトが実現できるという五田さん。「私の仕事は空港に訪れるお客さまと一番最初に接するので、客室乗務員の方にもできるだけお客さまの情報はお伝えするようにしています」。
五田さんは仕事に対する真摯な姿勢が評価され、この春から“CSサブリーダー(カスタマーサティスファクションサブリーダー)”に任命された。
「今、鹿児島空港を日本一の空港にするために頑張っています。リーダーになったことで、待ちの姿勢は止めました。まずは自ら一歩前へアプローチする。自分から変わっていこうと思っています」。とはいえ、カウンター業務ではお客さまから直接ご意見をいただいたり、時間に追われたりすることも多い。それでも毎日、さまざまな目的をもった島人や旅人、ビジネスマンが空港に訪れる。「いつも笑顔を心がけて、気持ちの切り替えを大切にしたいです」と五田さんは笑顔で語った。
五田加代子(ごだ・かよこ)
南国交通株式会社所属の空港職員。
入社4年目。鹿児島市出身。鹿児島空港にてJALとJACのお客さまへサービスを提供している。今年度CSサブリーダーに任命され“鹿児島空港を日本一の空港にする”ために奮闘中である。
日本エアコミューター株式会社(JAC) http://www.jac.co.jp/
1983年設立。奄美空港を拠点に喜界島、徳之島、沖永良部島、与論島を結ぶ4路線で運航をスタートし、1988年に鹿児島空港に移転。現在は日本航空(JAL)グループの一員としてQ400、SAABの2機種で28路線を運航。今年で設立30周年を迎え島人の暮らしを支えている。