つくろう、島の未来

2024年11月21日 木曜日

つくろう、島の未来

佐賀県唐津市沖に浮かぶ玄海諸島7島のうち、馬渡島(まだらしま)と加唐島(かからしま)の2島では、島内の小中学校で学ぶ「島留学生」を募集し、2017年春から受け入れを開始する。児童生徒の島での豊かな自然体験と学び、第二のふるさとづくりを島ぐるみで応援する。(写真提供:からつ七つの島活性化協議会)

馬渡島港より、唐津市立馬渡小中学校を望む

少子高齢化の解決策としての「島留学」

玄界灘に浮かぶ、高島(たかしま)、神集島(かしわじま)、小川島(おがわしま)、加唐島(かからしま)、松島(まつしま)、馬渡島(まだらしま)、向島(むくしま)の有人7離島(※)を有する佐賀県唐津市では、各島の少子高齢化が課題となっている。
※呼子大橋で本土と架橋された加部島(かべしま)を除く

2011年に神集島の小学校が廃校になり、2012年には向島と松島の小学校分校が休校。他島の小中学校でも、生徒数の減少により存続への危機感が高まっている。

7島では、住民や唐津市の職員らが集まり2014年に「からつ七つの島活性化協議会」を発足。島々の魅力をPRし、物産の販売や、島の子ども達と本土の子ども達を結ぶ交流イベントなどを行ってきた。

時を同じくして、島外の子どもたちを島の学校で受け入れる「島留学」も発案され、3年前に準備がスタートした。まずは受け入れに関心のある住民を募り、毎年20〜30名が鹿児島県 硫黄島(いおうじま|三島村)の「しおかぜ留学」や下甑島(しもこしきじま|薩摩川内市)の「ウミネコ留学」、福岡県 地島(じのしま|宗像市)の「漁村留学」などの先行事例を視察。

これらの地域を参考に、馬渡島と加唐島では、受け入れ地域の区長や校長・里親・民生委員などの民間と、教育委員会などの行政で組織する実行委員会を立ち上げ、島ぐるみでの協力体制を整えた。

保護者・里親らの負担を軽減する費用補助も準備

現在、馬渡島と加唐島では留学生の募集が始まり、2017年4月から1年間の受け入れを開始する。受け入れ体制は島内の里親宅に住み通学する「里親留学」、家族と一緒に島に住んで通学する「家族留学」、島内の祖父母宅から通学する「孫留学」の3通りを想定している。

島留学にかかる費用には補助も準備。保護者や里親らの負担を軽減するため、「孫留学」で子どもを受け入れる世帯と「家族留学」で転入する世帯に、月3万円が実行委員会より助成。「里親留学」の場合は、里親へ支払う月額6万円の委託料を、実行委員会と実親で半額ずつ負担する。助成金の財源は、公的な補助金を見込んでいる。

島留学生は、島の子どもたちと同様に季節折々の行事に参加するなど、温かな雰囲気の中で島の文化や伝統にふれながら1年を過ごすことができる。島暮らしを通じて、海で遊んだり、漁師をしている里親から釣りや魚のさばき方を教えてもらう機会もあるという。

島留学中に困りごとが生じた場合は、実行員会が相談の受け入れ窓口と調整役を担い、児童生徒の島での豊かな自然体験と学び、第二のふるさとづくりを応援する。

「島においでね」。小さな島にある温かな教育環境

加唐島で実施された島留学現地説明会の様子

1月28日に、島留学の現地説明会が行われ、子ども達や保護者が島内を巡りながら小中学校や里親宅、診療所などを見学した。

事業を支援する唐津市離島地域コーディネーターの小峰朋子さんは「初めて島を訪れて、島の学校の生徒の少なさに驚いた様子の子もいましたが、校長先生から『一人一人が活躍する場のある学校です』とお話がありました。『しっかり教育しますのでお任せください』と言っていただき、保護者の方も安心した様子でした」と話す。

「説明会の日は晴天に恵まれ、まるで島が良いところを見せようと頑張ったかのようでした。景色も素晴らしく、島内を散策した子ども達からは『自転車を持ってこようかな』との声も聞かれました」(小峰さん)。

島を見学中に通りかかったおばさんからも「島においでね」と声がかかるなど、地域で温かく子どもを見守る雰囲気が伝わる見学会になったという。

協議会は今後、馬渡島と加唐島以外の島でも島留学を広げたい考え。問い合わせは、唐津市地域づくり課内「からつ七つの島活性化協議会」へ。


【関連サイト】

唐津市地域づくり課「からつ七つの島活性化協議会」

     

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