つくろう、島の未来

2024年11月24日 日曜日

つくろう、島の未来

島の祭に魅せられたカメラマンの島祭コラム「百島百祭」。今回は、遣唐使の寄留地や倭寇の根拠地として、大陸との交流の中継基地として栄えた福江島の天下の奇祭「へトマト」全4編の第2編。島々に息衝く、祭の魅力をお届けします。

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長崎・福江島のへトマト2

奉納相撲が行われる白浜神社は、海近くにある神社で、漁師たちの信仰が厚い海の神様だ。ちなみに大草履を奉納する山城神社は、山神様を奉っており、一つの祭で、豊作・大漁両方の祈願ができるのが「へトマト」だ。

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白浜神社での迫力ある宮相撲も佳境を迎え、島人たちの温かい声援に支えられながら無事奉納が終わる頃、海岸近くの路上に晴れ着姿の女性2名が現れた。これまた不思議な光景なのだが、その2名の女性が酒樽の上に乗り、羽根突きを始める。濁流のように押し寄せる奇祭のオンパレードに撮影するこちらはというと、若干パニック気味になりながら、必死についていっているという感じだ。

島の方に聞いた話だと、この羽根突きは、農業や漁業の豊凶を占う意味合いがあると言い、羽根突きが長く続けば続くほど豊作豊漁になるらしい。ちなみに、この羽根突きを行うのは新婚女性と決められており、昨今の過疎化で、島外に嫁いだ方にもお願いしているとのこと。他の地域では、なかなか見ることのできないめずしい風習だった。

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羽根突きが終わると、「ヘグラ」と呼ばれるススを塗り付けた若者たちが、縄で巻き取柄のついた藁玉を激しく奪い合う「玉蹴り」が始まった。この藁玉は、鯨の目をかたどっており、捕鯨が栄えた古の時代を彷彿させるものだった。この玉蹴りの最中、若者たちが見物人たちにススを塗りつけていく。無病息災の効果があるというが、女性は逃げまどい、子どもは大泣きだ。

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「長崎・福江島のへトマト3」へと続く

◆祭情報◆
日程 毎年1月第三日曜(※2016年は、1/17)
場所 福江島(長崎県五島市)

     

離島経済新聞 目次

【連載】百島百祭

野宿で日本各地の島を旅していた10年前、偶然出会った島の祭に魅せられたカメラマンの島祭コラム。島々に息衝く、祭の魅力をお届けします。

黒岩正和(くろいわ・まさかず)
写真家。21歳より、日本の島の風俗・祭事を撮影(2013年現在300島以上を撮影)。主な撮影テーマは、日本の島・山岳少数民族の風俗・メコン河流域の風俗・ 棚田などの稲作文化・戦国史跡など。
http://kuroiwamasakazu.com/

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