つくろう、島の未来

2024年12月04日 水曜日

つくろう、島の未来

島の祭に魅せられたカメラマンの島祭コラム「百島百祭」。今回は、人口に対して牛の数が10倍以上という、のどかな牧場風景が広がる放牧の島、黒島(沖縄県竹富町)の旧正月中編。島々に息衝く、祭の魅力をお届けします。

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沖縄・黒島の旧正月2

正月ユンタの掛け合いで、会場が盛り上がってくると、「ツナヌミン」の披露となった。南から槍、北から鎌を持った武者が、青年たちが支える舞台に乗って登場する。武者が舞台に乗っているのは、地面に直接触れることは、戦に負けることを意味するので、それを避けるためだと言われている。

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武者が威嚇したポーズをとったり、周りの群衆を睨みつけたりしながら、中央に進み、二つの舞台がぶつかると、武者による戦いの所作が披露される。男たちが担ぐ舞台の上で繰り広げられる戦いは、躍動的で勇ましい。この戦いは引き分けに終わり、二つの舞台はもときた方向へと帰っていく。古より伝わる「ツナヌミン」の勇壮な所作が披露された後は、参加者総出による大綱引きへと進んでいく。

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昔は南が勝った方が良いとされてきた大綱引きだが、近年は「北が勝つと畜産繁栄、南が勝つと豊作」とされ、両陣営ともに気合十分だ。通常なら「北が勝つと豊漁」と言いたいところだが、畜産繁栄となるのが、牛の島・黒島らしい。

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支会役員の合図で引き合いが始まると、勝敗を決する中央の棒の上に役員が乗り、周りを鼓舞する。引き合う不安定な綱の上で、両陣営に檄を飛ばし大綱引きを盛り上げる様子は漢気があり、格好いい。鐘や太鼓の音が大音量で響き渡る大綱引きは、綱を引く人だけでなく、周りの観客まで巻き込んで笑顔にさせる明るく賑やかな行事だった。

「沖縄・黒島の旧正月3」へつづく

◆祭情報◆
日程 旧暦1/1(※2016年は、2/8)
場所 黒島(沖縄県竹富町)

     

離島経済新聞 目次

【連載】百島百祭

野宿で日本各地の島を旅していた10年前、偶然出会った島の祭に魅せられたカメラマンの島祭コラム。島々に息衝く、祭の魅力をお届けします。

黒岩正和(くろいわ・まさかず)
写真家。21歳より、日本の島の風俗・祭事を撮影(2013年現在300島以上を撮影)。主な撮影テーマは、日本の島・山岳少数民族の風俗・メコン河流域の風俗・ 棚田などの稲作文化・戦国史跡など。
http://kuroiwamasakazu.com/

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