つくろう、島の未来

2024年12月04日 水曜日

つくろう、島の未来

島の祭に魅せられたカメラマンの島祭コラム「百島百祭」。今回は、良好な「いりこ」(煮干しいわし)の産地として有名な伊吹島 波切不動尊の桜まつり 後編。島々に息衝く、祭の魅力をお届けします。

香川・伊吹島 波切不動尊の桜まつり 2

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燧灘(ひうちなだ)と満開の桜が眺められる絶好の場所に、一組の夫婦がいた。とても穏やかな光景で、連れ添ってきた年月が二人の背中に表れていて、とても微笑ましい。こういう光景に出会いたいがために島旅を続けているような気がする。瀬戸内の波のような優しいひとときだった。

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燧灘を見下ろしながら、見事な桜並木を歩き、波切不動尊の本堂へと向かうと、様々な「お接待」が行われていた。島四国の文化が残る伊吹島には、「お接待」の風習があるのだが、さすが「うどん県」であり、いりこの島・伊吹島。いりこでダシをとった讃岐うどんが「お接待」として振る舞われていた。のどごしの良いうどんは、もちろん絶品で、いりこの旨みたっぷりのダシとの相性も抜群だった。春の陽気の中、外で食べる讃岐うどんに、お腹も心も満たされたので、アップダウンのある崖道も軽快な足取りで歩き、波切不動尊の本堂へと到着。

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断崖にぽっかりと空いた岩の窪みに祀られた不動尊では、島の女性が蝋燭を灯し、祈りを捧げていた。信仰心が厚いと言われる島人達の姿を間近で見て、海と共に暮らす人々の大変さと自然への感謝を感じた。

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島の春を満喫できる波切不動尊の桜まつりは、穏やかでアットホームな祭りだった。お接待の文化にも触れ、桜と瀬戸内海のコントラストを眺めていると、四季のある国・日本に生まれた事に感謝の気持ちが溢れてきて、誇らしい気持ちになれる。そんな感謝の気持ちを抱きながら、伊吹島を後にした。日々の生活も、優しい気持ちで生きていきたいものだ。

 

 

◆祭情報◆
日程 毎年4月の第2日曜日
場所 伊吹島(香川県観音寺市)

     

離島経済新聞 目次

【連載】百島百祭

野宿で日本各地の島を旅していた10年前、偶然出会った島の祭に魅せられたカメラマンの島祭コラム。島々に息衝く、祭の魅力をお届けします。

黒岩正和(くろいわ・まさかず)
写真家。21歳より、日本の島の風俗・祭事を撮影(2013年現在300島以上を撮影)。主な撮影テーマは、日本の島・山岳少数民族の風俗・メコン河流域の風俗・ 棚田などの稲作文化・戦国史跡など。
http://kuroiwamasakazu.com/

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