つくろう、島の未来

2024年11月21日 木曜日

つくろう、島の未来

野宿で日本各地の島を旅していた10年前、偶然出会った島の祭に魅せられたカメラマンの島祭コラム。島々に息衝く、祭の魅力をお届けします。

香川・小豆島の虫送り(中山)2

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太陽が西へと傾く17時頃から、地区の人々が湯船山に集まり始め、18時半頃、本堂から持ち出された提灯の灯を護摩木の中に移し、住職による祈祷が始まった。祈祷終了後、護摩木の火を千枚田近くの篝火に移し、島内外から集まった親子らが、火手(ほて)に火を灯し、標高差約100mの棚田をゆっくりと下っていった。

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美しい青々とした棚田が夕暮れに染まる中、火手の灯りを順々に灯した人々が、「とーもせ灯せ」の声とともに下っていく様は、本当に幻想的で美しい。中山千枚田の緑と揺らめく火手の橙のコントラストが、まるで一枚の絵画をのような光景を生み出す。きっと300年前から、同じ光景が繰り返されて来たのだろうと思うと感慨もひとしおだ。

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その後、農村歌舞伎が行われる中山春日神社に到着し、虫送り行事は終了となった。今年も稲につく虫を無事に追い払えたので、秋には見事は稲が収穫できるだろう。しかし、撮影していた僕につく虫は追い払えなかったようで、体のいたるところを蚊に刺されていた。撮影には虫よけが必要なことを再確認したので、次回来る時は大丈夫だろう。

一度途絶えてしまった中山の虫送り行事だが、観光客も参加できる行事として復活したのには、多くの人々の尽力があったからに違いない。この300年前から続く幻想的で美しい行事がこれから先も伝えられていってほしいと切に願いながら、小豆島・中山地区を後にした。

◆祭情報◆

日程 毎年7月上旬(※2014年は、7/5)

場所 小豆島(香川県小豆島町)

     

離島経済新聞 目次

【連載】百島百祭

野宿で日本各地の島を旅していた10年前、偶然出会った島の祭に魅せられたカメラマンの島祭コラム。島々に息衝く、祭の魅力をお届けします。

黒岩正和(くろいわ・まさかず)
写真家。21歳より、日本の島の風俗・祭事を撮影(2013年現在300島以上を撮影)。主な撮影テーマは、日本の島・山岳少数民族の風俗・メコン河流域の風俗・ 棚田などの稲作文化・戦国史跡など。
http://kuroiwamasakazu.com/

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