つくろう、島の未来

2024年11月21日 木曜日

つくろう、島の未来

佐渡島(さどがしま|新潟県)の真野湾を見下ろす丘の上に立つ、「日本で一番夕日がきれいな小学校」と呼ばれた西三川小学校。少子化で2010年に廃校になった同校を、私たちは2014年に当社の第二酒造「学校蔵」として再生させた。

同蔵では「オール佐渡産の酒造り」をモットーに、原材料は減農薬の朱鷺米や棚田米を使用し、島に降りそそぐ太陽光による再生可能エネルギーを使った酒造りに取り組んでいる。

学校蔵では、酒造を行うだけでなく酒造りも教えている。2015年から始めた「一週間の酒造り体験プログラム」は、本格的に酒造りや生産地を知ることができると口コミで評判となり、気付けば参加者は10カ国以上から100名以上を数えるほどに。

2014年からスタートした「学校蔵の特別授業」は日本酒の枠を超えた学びの場だ。島内外から多種多様な背景を持つ約100人が佐渡に集まり、「佐渡から考える島国ニッポンの未来」をテーマに語り合う、年に一度の白熱ワークショップである。今年は藻谷浩介さんと養老孟司さんを迎え、4年ぶりに現地開催を実現。

課題先進地の佐渡島は、見方を変えれば課題解決の先進地。小さな学校蔵から大きな島国ニッポンの未来に役立つヒントが生まれるように、との思いで続けている。

多様な人が混ざり合い学ぶ学校蔵の理念は、「幸醸心」。酒を醸し、幸せを醸すという意味だ。学校蔵の酒造りは、地域創りそのものである。(2023年8月発行『季刊ritokei』43号掲載)


尾畑留美子(おばた・るみこ)
「真野鶴」尾畑酒造(株)専務取締役。慶応大学卒業、映画会社を経て蔵を継ぐ。廃校を酒蔵として再生させた「学校蔵」は、資源もエネルギーもヒトも循環させるサスティナブル・ブリュアリーとして進化中

     

離島経済新聞 目次

島人コラム

島々で暮らす人々による寄稿コラム。離島経済新聞社が発行するタブロイド紙『季刊ritokei』の定番企画「島人コラム」に掲載された中から、抜粋してお届けします。

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