つくろう、島の未来

2024年11月21日 木曜日

つくろう、島の未来

北風がビュービュー吹く季節がやってきた。移住前、長崎・五島と言えば暖かいイメージがあったが、冬の北風は、季節が違うと台風と名前を変えるほど強い風が吹く。カラリと晴れているのに家がなぜか水浸し、よく見ると波しぶきがシャワーのように集落に降り注ぎ壁を濡らしていた。

こんな日は「カンコロ日和」と呼ばれ、薄くスライスし、湯がいたさつま芋を海岸沿いに竹で組んだ棚に干し、カンコロをつくる。この風が吹かないとカンコロは腐ってしまうそう。昔は焼酎の原料として鹿児島へ出荷され、今は主にお餅と一緒についてカンコロ餅になる。

風に恵まれている五島には、海に浮かんだ風力発電があり、耕作放棄地は太陽光発電の設置が進んでいる。2018年「五島の風と太陽から生まれた電気」の家庭や企業への販売が始まり、現在は市役所の本庁舎や縫製工場、割烹料理店、石材店などさまざまな場所で、再生可能エネルギー100%・島で発電された電気を使った事業が行われている。

島のソウルフードである魚のすり身や椿油を生搾りする工房などでも安心な材料と安心な電気による商品づくりが進んでいて、島を何とか盛り上げようとする経営者の情熱に「あ〜素敵な島に移住させていただいたな」と感じることが多い。

先進地視察も年々増加し、都会からの評価は抜群に高いが、島民の関心は今からである。紛争、災害で関心が高まるエネルギー問題、電気も自給できる島をみんなで盛り上げていきたい。(2022年11月発行『季刊ritokei』40号掲載)


宮本恭子(みやもと・きょうこ)
大阪府池田市出身。広告代理店勤務中にヨーガにはまり、より学びたい意欲がでて鍼灸学校へ。2018年長崎県五島市に地域おこし協力隊として移住。現在は島内企業のマーケティング企画、鍼灸師、ヨーガ療法士として活動

     

離島経済新聞 目次

島人コラム

島々で暮らす人々による寄稿コラム。離島経済新聞社が発行するタブロイド紙『季刊ritokei』の定番企画「島人コラム」に掲載された中から、抜粋してお届けします。

関連する記事

ritokei特集