私が2015年、地域おこし協力隊として移住した「大島」は愛媛県八幡浜市にある。大小5つの島を総称して「八幡浜大島」と呼ばれ、昔ながらの漁村風景と龍神伝説が伝わる島。移住当初、島民は約260名いたが、現在は約160名で高齢化率約75%という超高齢化が進んでいる。
「今さら何するん?」一移住してから、ある島民に言われた。島民は 「何もない」と言うが、海や山と共に生活する日常は私にとってすべてが貴重な体験。この「いやしの楽園」は特別な魅力を持っていた。
移住から3年後、交流人口の増加を目的に、島民も観光客も集える場所として「大島交流館」がオープン。私は施設管理者となった。島初の食事処も併設され、 島のお母さんがつくるさざえカレーや島で捕れた魚を使った定食を提供したり、イベントを開催したり。大島の魅力を楽しむ観光客が増加した。
しかし、2020年からのコロナ禍で状況は一変。島外とのつながりを継続するためSNSで島の魅力を発信し続ける一方、オンラインストアを開設して特産品を購入できるサイトをつくったが、高齢の島への誘客は困難な日々が続き、しばらくして私は約8年間の島暮らしから離れ、定期船会社に転職した。
今、施設は新たな管理者と地域おこし協力隊が中心となり盛り上げ、観光客も戻りつつある。私は今後も船で島と関わりながら、「いやしの楽園」を応援し続けていく。
乗松稔明 (のりまつ・としあき)
愛媛県松山市出身。 地域づくりに興味があり2015年に島へ移住。趣味だった写真撮影で島内の日常などを撮影しSNS等で発信。移住期間中に Instagramで発信した写真を厳選し、大島交流館内で写真展を開催