つくろう、島の未来

2021年09月19日 日曜日

つくろう、島の未来

父は春飛魚を追う漁師。子どもの頃は朝一番に港へ行き、捕れたての春飛魚を木箱に詰め、築地に送る段取りを終えてから小学校に通っていた私は25年前、北海道から八丈島(はちじょうじま|東京都)に帰り両親がはじめた「くさや」屋を継ぎました。春は春飛魚、初夏は夏飛魚、夏から年末に掛けて青ムロアジと、年間を通して捕れたての魚を原料にできるのが八丈島産くさやの特徴です。

八丈では世界に50種類ほどいる飛魚の中で最も大型と言われるハマトビウオを「ハルトビ」と呼びます。八丈町の町魚でもある春飛魚ですが、昨年は一尾もそのくさやを製造することができませんでした。不漁の原因はよく分かっていませんが、冷水塊、異常気象、回遊の変化、産卵場所の移動等々。ちょうど1回目の緊急事態宣言が出された頃でした。

今年も漁師さんから「トビヨ(飛魚)は見えんなっきゃ(トビウオの姿は見えない)」と口々に言われ、製造を諦めていましたが、4月4日早朝。今春初めて飛魚漁に出漁した船の元に行くと「いくつ買お〜(何尾買う?)」と2つ上の先輩漁師さんから声をかけられビックリ。

地元の方は「よかろうじゃ〜今年はトビヨが捕れて!(よかったね 今年はトビウオがとれて)」「くさやはいつできやろ〜(くさやはいつできるの)」と喜び、母も「島寿司のがらよけときやれ(島寿司用に分けておいて)」と。その日の晩は春飛魚の島寿司でした。

店では「春飛魚くさやのお腹を見てください。お腹が真っ白でしょ!新鮮な証しなんですよ」と説明しています。魚屋で飛魚を見かけたら、ぜひお腹を見てくださいね。(2021年5月発行『季刊ritokei』35号掲載)


長田隆弘(おさだ・たかひろ)
八丈島出身。北海道で11年間水産増養殖に携わり帰島。くさや屋を継ぐ。八丈島の伝統文化であるくさやを次の世代に託すため、小学生から大学院生を対象にくさや文化を継承する授業・研究を行っている。

離島経済新聞 目次

島人コラム

島々で暮らす人々による寄稿コラム。離島経済新聞社が発行するタブロイド紙『季刊ritokei』の定番企画「島人コラム」に掲載された中から、抜粋してお届けします。

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