海なし県である滋賀県の琵琶湖に離島があるのはご存知でしょうか。
初めて琵琶湖を見た人は海のような広さに驚き、地元の漁師も琵琶湖のことを「湖(うみ)」と呼びます。
およそ800年以上前、かつて神の島として崇められた琵琶湖の無人島に、7人の源氏の落人が渡り住んだことから沖島(おきしま|滋賀県)の暮らしは始まりました。今でも、島民の多くは最初の7人の苗字を名乗っています。
結婚などの理由以外で、移住者が沖島にやってくるようになったのはここ数年のこと。私もその一人で、地域おこし協力隊として2020年の春に移住しました。
沖島には、琵琶湖と共に生きてきた人々の独特な暮らしがあります。毎日違う表情を魅せる湖の美しさを眺め、湖の幸を捕って味わい、濃密なコミュニティで支え合う島の人々を見ていると、昔から育まれてきたけれど今は薄れつつある近江(滋賀県)の暮らしそのものが、この島に詰め込まれているように感じられます。
琵琶湖の水産業の重要拠点でもある沖島ですが、魚食離れや漁業の担い手不足が課題となっています。協力隊の活動では、島の漁業の広報活動、淡水魚料理の楽しみ方の提案イベントなどに力を入れました。
協力隊卒業後は、沖島漁業協同組合の職員になりました。琵琶湖と共にある沖島の暮らしを守り、未来へ繋げていくためにも、地元の漁協が存続し続けることに大きな意味があると思っています。(2023年5月発行『季刊ritokei』42号掲載)
川瀬明日望(かわせ・あすみ)
1993年滋賀県日野町生まれ。京都芸術大学卒業。離島で働くことに興味があり、2020年、沖島町の地域おこし協力隊に。2023年4月より沖島漁業協同組合の職員として沖島で働く。