つくろう、島の未来

2021年12月06日 月曜日

つくろう、島の未来

生まれ故郷の粭島(すくもじま|山口県)で大正元年に建てられた空き家を購入、改修し「ホーランエー食堂」を開業したのは2015年9月のことでした。

「ホーランエー(宝来栄)」とは、島の貴船神社の夏祭りで海を渡る金色の神輿を御旅所まで先導する櫂伝馬船の名と、「ホーランエー、ヨヤサノサー」の掛け声に合わせ16人の漕ぎ手が櫂をそろえて船を進めるその姿にあやかりました。これまで飲食店のなかった島にとっての宝になるようにとの思いも込めたのです。

といっても飲食店で働いた経験すらない私と妻の2人だけの船出です。けして無理はせず、身の丈に合わせゆっくり進んでいくことにしました。営業は土曜日の昼だけ。平日は友人の鉄工所で働き最低限の収入を確保し、外に向けたPRはせずにまずは地域に受け入れてもらうことを目指しました。

毎週通ってくれる島の常連さん、手伝ってくれる同級生、改修でお世話になった大工の棟梁、店を通して繋がった多くの方々に支えられ、いつの間にか6年目。今は、毎週月曜日に島の高齢者へ弁当を配達、火、水曜日は「そらとうみ」さんがランチ営業し、日曜日は「まりか」さんがカフェを営業。週1営業だった島の大衆食堂はシェアキッチンという思いもよらない形へと変貌しています。

昨年はコロナにより2カ月の休業も体験しました。飲食店にとっては厳しい状況が続くでしょうが、生きていくうえで食は不可欠。家には台所が必ずあるように過疎高齢化の島にとって、なくてはならないみんなの台所にしたいと思っています。(2021年2月発行『季刊ritokei』34号掲載)


温品 徹(ぬくしな・とおる)
1969年、山口県周南市粭島生まれ・在住。築110年の空き家を「土に還る家づくり」をモットーに改修し、食堂に。店主手打ちの蕎麦、自作の薪窯でピザ、地魚で手づくりじゃこ天などを提供している。

離島経済新聞 目次

島人コラム

島々で暮らす人々による寄稿コラム。離島経済新聞社が発行するタブロイド紙『季刊ritokei』の定番企画「島人コラム」に掲載された中から、抜粋してお届けします。

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