つくろう、島の未来

2024年11月23日 土曜日

つくろう、島の未来

30代独身。働くことが好きで、20代は常にダブルワーク。さまざまな人と出会い、経験を積む中で、将来目指す方向性がまとまり、ワインソムリエの資格を取得。何不自由のない一人暮らし生活を満喫していたはずが、心の不調を抱えてしまった。心身の充電期間を設けるため退職し、日本各地のサウナを巡る自転車旅へ出発。

名古屋から四国を目指す道中の出会いで224ワイナリーの志賀さんご夫婦をご紹介いただき、当時は委託醸造で造られていた島シャン(スパークリングワイン)の味わいに瀬戸内で造るワインの大きな可能性を感じた。お話を伺うと個人経営で、ご夫婦2人で切り盛りしているというから驚いた。

2カ月後の8月、収穫のお手伝いへ。1カ月間だけの予定が、収穫、醸造機材の搬入、いざ醸造が始まると果物だった葡萄がワインへ刻一刻と変化してゆく過程からひと時も目が離せない。気付けばワイナリースタッフとして島の住人になっていた。

島暮らしは思った以上に性に合っていたようで、何気ない日常の景色が素晴らしく、都会ですり減った心はあっという間に癒された。島の人々も移住者に優しく「ずっと島にいてね」とまで言ってくれる。移住から定住に繋がらない人がいるのも事実なのだろう。

葡萄は大切に育てれば、人間よりも長生きする樹。ワイン造りは長い年月を見据えた仕事だから、大丈夫。小豆島初のワイナリーの物語はまだ2年目。これからも、まだまだ目が離せない。(2023年8月発行『季刊ritokei』43号掲載)


土屋実季(つちや・みき)
北海道札幌市出身。調理師学校卒業後、名古屋市内のフレンチやイタリア料理店に勤める。30歳でワインソムリエ取得。2022年、小豆島へ移住。いつかワイナリーレストランをオープンさせることを目標に奮闘中

     

離島経済新聞 目次

島人コラム

島々で暮らす人々による寄稿コラム。離島経済新聞社が発行するタブロイド紙『季刊ritokei』の定番企画「島人コラム」に掲載された中から、抜粋してお届けします。

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