つくろう、島の未来

2024年11月21日 木曜日

つくろう、島の未来

地域おこし協力隊として答志島(とうしじま|三重県)に来て半年が経った。島の日常は、私にはとってもたくましく尊く見える。港にはサワラを釣る船がずらりと並び、歩く人々の肌は褐色に焼けている。

彼らの大半は漁師で、食べきれぬほどのワラサやエビをおすそわけしてくれる。しかも無理して気を遣うのではなく、陽気に世話を焼いてくれる。食べものを自らの手で得る営みの基盤があるからだろうか。そのどっしりと肝の座った笑顔がいつも眩(まぶ)しい。

先日は12年ぶりに、とある供養行事がなされた。筆で記された式次第や収支表が残され、人伝てに継承された作法で粛々と支度が進んでいく様子に驚嘆した。地縁の繋がりが濃密で、人の入れ替わりが穏やかな島内では、些細な事さえ蓄積され強靭な情報網が形成されているみたいだ。

島ではいつでも何でもできるわけじゃない。でも、これなら負けないという屈強な矜持(きょうじ)があるように感じる。それは漁という営みや伝承される祭りかもしれないが、それ以上に、人としての凄(すご)みとも言える、揺るがない頑丈さを島の人に感じる。

私の活動は、子どもの居場所づくり。島の交流拠点「ねやこや」に集まる子どもたちがいつか大人になって、あの凄みを身に纏(まと)った人でいてくれたらと思う。

私にできるのは一緒に遊ぶことくらいだけれど、子どもたちがここで安心と好奇心を持って過ごせるようにしたい。これからも時間をかけて地道に活動を続けていくつもりだ。(2023年11月発行『季刊ritokei』44号掲載)


三好美咲(みよし・みさき)
生活環境や人間関係の変化による思考の展開に興味を持つ。京都大学文学部哲学専修を卒業後、現在は公認心理師を目指して大学院進学のため勉強中。今年度鳥羽市の地域おこし協力隊として、子どもの居場所づくりを行なっている。

     

離島経済新聞 目次

島人コラム

島々で暮らす人々による寄稿コラム。離島経済新聞社が発行するタブロイド紙『季刊ritokei』の定番企画「島人コラム」に掲載された中から、抜粋してお届けします。

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