つくろう、島の未来

2024年11月23日 土曜日

つくろう、島の未来

お話を聞かせてくれた森谷哲さん、 末岡真理子さん。 末岡さんの営む 「100日荘」 にて

全国に今や 9,000以上 こども食堂からみえること

子どもが1人でも行ける無料または低額の食堂「こども食堂」。この10年ほどで一気に広がり、今では全国9,000ヵ所以上にあるという。その数はおよそ公立中学校の数に匹敵すると聞けば、浸透度を実感できるだろうか。

今回話を聞いた「むすびえ」が目指すのは、こども食堂がよいかたちで運営され、広まること。いずれ全国の公立小学校の数と同等の2万ヵ所のこども食堂ができることを目指している。

「活動の3つの軸は、地域内の支援の輪を広げるための地域ネットワーク支援事業、企業がこども食堂に対して社会貢献するための企画や助成などを行う企業団体との協働事業、調査研究事業です」と説明してくれたのは、自身も東京都葛飾区でこども食堂を運営する森谷哲さん。むすびえの活動を通して、鹿児島県における離島のこども食堂の立ち上げ支援や、東京島しょ部でのこども食堂の調査などに関わるようになった。

むすびえの調査によると、東京都内のこども食堂の数は都道府県別で最多の1,010。例えば渋谷区には小学校の数18に対して70ヵ所近くあるが、東京の島しょ部では長らくこども食堂が0という島がほとんどだった。

「私たちとしては、少人数だとしても子どもがいる地域には、学校と家庭以外の居場所が必要だと考えています。そこで東京の島々にこども食堂を立ち上げる支援を行ってきたのです」(末岡さん)

森谷さん、末岡さんの両人に加え、実際に長崎・壱岐島、東京・三宅島、山口・周防大島(屋代島)でこども食堂を運営する人々もゲストとして登場した。なかでも、三宅島の浅沼里沙さんは、前回のサミットに参加したことで一念発起しこども食堂を始めたばかりだったそう。そんな確かな広がりもあり、島ならではの悩みを共有するために、今後の開催を望む声が多く集まった。

こども食堂立ち上げ支援は「シマ育」につながる

離島の密さがあるからこそ「おかえり」と言える居場所に「離島をフィールドに活動する人たちとつながりたい」とリサーチして見つけたのがリトケイの存在。やりとりをしてみると、リトケイが取り組むテーマである「シマ育」とこども食堂は非常に親和性が高かったそうだ。

2023年7月にはむすびえ主催の「こども食堂オンライン離島サミット」にリトケイを誘い、2024年3月にはリトケイと共に『シマ育コミュニティ』で「こどもの居場所・最前線」と題した勉強会を開催。

後者では森谷さん、末岡さんは、実際に伊豆諸島に足を運び、こども食堂の立ち上げ支援を継続的に行ってきた。「大島でこども食堂を立ち上げる際には、たまたまむすびえに親族が大島出身者というメンバーがいたことから、すんなりとキーマンにつながれました。こういった、人と人のつながりの重要性は、離島で特に感じたことです」(森谷さん)

また、改めて知ったのは、こどもと高齢者それぞれの支援が存在しても、世代間をつなぐ施策は少ないこと。さらに、コロナ禍などを経て、かつては当たり前だった交流も乏しくなっていたことだ。

「離島に限りませんが、こども食堂への理解を更新していく必要性も感じます。親密なコミュニティであるほど、貧困対策としてこども食堂を捉えると難しい側面があるでしょう。多世代交流の場としての可能性も伝えていきたいですね」(森谷さん)

「こども食堂は、島を出た子どもたちが、Uターンしたときの居場所になると思います。そういった価値を伝えていくサポートもしていきたいです」(末岡さん) 離島だからこそ浮き彫りになる多面的なこども食堂の価値は、全国のこども食堂の支援にも生かされていきそうだ。

森谷哲(もりや・さとし) 
東京都葛飾区在住。2019年よりむすびえに参画。プログラミングの普及を行う一般社団法人PCN理事、テクノロジー教育と表現教育を実践する一般社団法人ココロエデュケーションラボ代表理事も務める。本業はIT企業の取締役

末岡真理子(すえおか・まりこ) 
2016年からこども食堂を運営。個人の活動で届けられる範囲に限界を感じ、2022年からむすびえに参画。現在、東京都あきる野市で10代を中心としたネオおやすみどころ「100日荘」を主宰している

認定NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえ
「こども食堂の支援を通じて、誰も取りこぼさない社会を「つくる」をミッションに2018年に設立。代表理事は社会活動家の湯浅誠氏。Webサイトは、調査・研究の成果をはじめ、こども食堂についての情報を得ることができる

【申請受付期間11/15まで!】ファミリーマート&むすびえ 2024年度こども食堂スタート応援助成プログラムのお知らせ

ファミリーマート&むすびえ「こども食堂スタート応援助成プログラム」では、こども食堂を新たに立ち上げたい団体を募集しています!

同プログラムは「ファミリーマート夢の掛け橋募金」(店頭募金)をもとに、こども食堂の新規開設費用を助成。より多くの方が安心してこども食堂の立ち上げに取り組むことができるよう、オンラインでのこども食堂立ち上げ勉強会も同時に実施します。

公募締切:2024年11月15日(金)15時

応募方法など詳細は、認定NPO法人 全国こども食堂支援センター・むすびえHPよりご確認ください。>>ファミリーマート&むすびえ 2024年度こども食堂スタート応援助成プログラム

     

離島経済新聞 目次

『季刊ritokei(リトケイ)』島々仕事人

「島々仕事人」は島と島をつなぐ仕事に携わる仕事人の想いを紹介する企画。日本全国の「島」にかかわる、さまざまな仕事人をご紹介します。

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