つくろう、島の未来

2024年12月22日 日曜日

つくろう、島の未来

人口約12万人が暮らす奄美群島(あまみぐんとう|鹿児島県)には3,800もの島人ブログがあり、島人たちが投稿する日々の話題でにぎわっています。「島々仕事人」は島と島をつなぐ仕事に携わる仕事人の想いを紹介する企画。今回は、奄美のブログサイト『しーまブログ』編集長・深田小次郎さんです。

#04 表現の一つとして「島」がある。そうなればおもしろい

『しーまブログ』やさまざまなイベントを通して、目の前に現れた課題を越えていくアイデアを考えようとする深田さん。最後に、これからについて伺いました。

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深田:

僕がやるというよりは、そこにいる人たちがやる形にしたかったんですけど、そこがまだうまくいってなくて。実行委員とかを島の人で作ってくれて、その人なんかがどんどん運営してくれて、下につないでいくっていうほうがいいなあと思うんですけど。

鯨本:

たしかに。実行委員は必要ですよね。

深田:

なかなか続かないんですよね。そういうと、奄美会が100年続いてるっていうのは、やっぱりすごいとおもうんですよね。

鯨本:

100年ですか。すごい……。

深田:

ほんとはそういうのが根付いて、島の若い人がそういう活動を知って、それが代々伝わっていくというのがあれば、いいんだけどなあ。やるのは簡単なんですよね。ちょっと頑張れば。ただ、続けるっていうのがすごく難しい。どうすればいいんだろう。

鯨本:

どこもそうですよね。島のことも本業の傍らでやってる人が多いから、続けるのが難しくて。誰かひとりががんばっていても、その人がいなくなると終わるパターンだったり。続けるためのアイデアとか欲しいですよね。

深田:

そう思いますね。

鯨本:

島に限ったことではないですが、大体どこも同じ問題にあたっている気がしますね。

深田:

なるほど、そうですかあ。なんか、若い人たちでも「島のこと」をするのが自分を表現するひとつのような感じになれば、おもしろいんだけどなと思うんです。

鯨本:

「表現のひとつに」というのは確かにですね。昔だったら、島が大変そうに捉えられていた時期もあるんですけど、最近はそうでもなくて。島出身の人達とかが、島という場所で育った良さを武器にして、自己表現ができますよね。

深田:

そうなんですよね。

鯨本:

島があるっていいですよね。

深田:

帰る場所というか、田舎がああいう景色ていうのは良いと思いますよね。

鯨本:

ですよね。最後に、深田さん自身はこれからなにをしていきたいですか?

深田:

そうですね。郷友会とかに、もっと若い人が入ってくる瞬間っていうのは見たいなあと思いますね。

鯨本:

若者たちと先輩たちが一緒になる瞬間。それいいですね。

深田:

若い人が何かを立ち上げて、そこに島の人も一緒になっていくみたいな。そういうのを見たいなって思ったりはあります。

鯨本:

そういった場にいること自体が楽しいわけですよね。

深田:

そんな感じですね。あとは、7月からバニラエア(格安航空会社)っていうのが飛んで奄美大島(あまみおおしま|鹿児島県)まで片道8000円で行けるんですが、「いつまで続くのか?」とか「マイナスの面もあるんじゃないか?」とか言われてるんだけど、おおむねみんな喜んでいて。僕もそれを考えてたときに、島に新しいお客さんが来たときに、そのお客さんに対して、もっと島の良さを伝えられるような、活動はしたいかなと。

鯨本:

お客さんは増えそうですもんね。

深田:

オーソドックスな島のツアーはあるんだけど、まだ発掘してない部分があったらそこを発掘して、それを巡るような感じの。それは『しーまブログ』でページを作るなり、冊子を作るなりしたいなあと思ってたり。

鯨本:

奄美のおもしろさはなかなか紙面だけで伝えきれないですもんね。あのその場に居ないと。「原ハブ(毒蛇であるハブについて学ぶことができる奄美の名物ショー)」のおじちゃんのおもしろさって絶対わからないですし。

深田:

笑。

鯨本:

でも、映像とかであんまり出すとネタバレで、現地で見るおもしろさがなくなってしまう。そのさじ加減がむずかしいですよね。

深田:

そういうのも島の良さなんで、「これが良いんだよ」っていうのを共有できれば。現地のローカルなおもてなしの仕方にも、決まりとかはあまりなくて。

鯨本:

奄美は本当に集落ごと、島ごとに個性が違っているからおもしろいですね。 笠利と南部でも全然違いますよね。

深田:

僕も南部の方は全然分からなくて。『しーまブログ』を始めてから行きだしました。

鯨本:

最後に何かメッセージがあればお願いします。

深田:

準備中なんですが、8月1日に初めて、『ミショランガイド』という紙媒体をだします。ちょうど取材等まわってるところです。

鯨本:

紙媒体を出されるんですね。

深田:

もともとウェブサイト上にあったんですけど、ネットを見れない人ってけっこういるんで、紙でも作ったらどうかって意見が前からあって。初回は2万部なんですけど、空港とかに置きたいなと。

鯨本:

読みたい人はたくさんいそうですね。

深田:

奄美の本でもグルメに特化したものは少なくて。あと、グルメだけじゃなくて、たとえば奄美北部だったら何時間で1周回れるみたいな時間が書いてあって、ここからここまで何分という時間軸もありながら、そこに点在するお店とかカフェとかを紹介するような内容を考えています。

鯨本:

ますます忙しくなりそうですが、楽しみにしています!


深田小次郎(ふかだ・こじろう)

奄美大島笠利出身。高校時代は鹿児島で野球に励み、21歳でロックバンドでプロを目指し上京。27歳まで音楽活動を続けた後、夢をリセットし司法書士の試験を受けるも合格には至らず。通信社での経験を活かして2010年2月に『しーまブログ』を立ち上げ、編集長に就任。

(文・鯨本あつこ/写真・大久保昌宏)

     

離島経済新聞 目次

『季刊ritokei(リトケイ)』島々仕事人

「島々仕事人」は島と島をつなぐ仕事に携わる仕事人の想いを紹介する企画。日本全国の「島」にかかわる、さまざまな仕事人をご紹介します。

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