「島々仕事人」は島々に携わる仕事人の想いを紹介する企画。今回は、大阪を拠点に独自の切り口で離島・地方の問題解決を図る「アイランデクス株式会社」を立ち上げ、代表取締役を務める池田和法さんが登場。2018年の創業以来、離島専門の引越し業務を中心に急成長を遂げているビジネスについて聞きました。
文・小野民 写真・編集部
※この記事は『ritokei』29号(2019年8月発行号)掲載記事です。
池田和法(いけだ かずのり) アイランデクス株式会社代表取締役。1987年、愛媛県生まれ。神戸大学大学院在学中に自営業を始め、2018年にアイランデクス株式会社を創業。現在も主に現場となる島々を転々としながら年間100日間はリモートワークで業務を行う。
「離島への引越しは高い」常識を疑ったことで開けた道
池田和法さんは、持ちかけられ た相談を持ち前のバイタリティで解 決していく。アイランデクスを立ち上 げたきっかけも、まさにそんな理由からだった。
ある時、池田さんは 大阪に暮らす知人夫婦から、故郷・奄美大島(あまみおおしま|鹿児島県)にUターンするための引 越し費用が60~70万円もかかると 聞いて驚いた。
池田さんには学生時代に汽船会社でアルバイトした経験があった。そこで、引越し費用の捻出に困っていた2人に「池田さんならいくらでできる?」と聞かれ、かつての経験をもとに工夫した結果、35万円ほどの原価で運べることが分かり、実際に奄美大島へ家財を運ぶことができた。
常識と思われていた高額な引越し費用を大幅に減額できたのは、船で荷物を運ぶ相場感や、起こりうるリスクなどがある程度想定できたから。神戸大学在外中は神戸商船大学を前身に持つ海事科学部の学生たちと仲が良く、すっかり「船好き」になっていたことも起業を後押しし、アイランデクスを設立。以降、主に離島地域の困りごとを解決する企業として成長していくこととなった。
(提供:アイランデクス株式会社)
困っているのは、引越し業者も同じだった
「運送会社は全国にたくさんありますが、離島の引越しを日常的に取り扱うことはほとんどありません。離島への引越しが敬遠される大きな理由は、遠くて非効率だからですが、そもそもやり方が分からないから引き受けたくないのが本音なのだと思います」(池田さん)。
アイランデクスは離島専門となり、島と本土をつなぐ各航路の情報を集約し、船会社と独自のパイプを持つことで、コストを下げることに成功。設立からわずか1年で、奄美群島(あまみぐんとう|鹿児島県)、宮古島(みやこじま|沖縄県)、石垣島(いしがきじま|沖縄県)、屋久島(やくしま|鹿児島県)、佐渡島(さどがしま|新潟県)への引越しがサービス化され、今後も規模を拡大していくという。
(提供:アイランデクス株式会社)
「周りからは『離島の引越しなんて月に1、2件でしょ?』と言われてきましたが、おかげさまで年間5,000件以上のお問い合わせをいただきます。現在は島に車を運ぶサービスの需要も増えています」(池田さん)。口コミで客は途切れず、全国に67拠点、離島に11カ所の協力会社がいる状態だ。
池田さんを含む常勤のスタッフは5人。副業や非常勤でサポートにあたるスタッフを含めると、20人ほどの体制で会社を運営している。
自然には敵わないから人が対応できる最大限を
高価なもの、思い出が詰まったものを運ぶ引越しの責任は重大だ。「安全に荷物を運ぶことが最優先。きちんとできたときには喜んでもらえるし、感謝されるのがやりがいです」と池田さん。ただし離島専門ならではの苦労も大変なものだ。
(提供:アイランデクス株式会社)
「天候はもちろん、島のお祭りや行事も影響しますから、陸続きの引越しでは 想像もできないリスクがあることを、 お客さんにいかに知っていただけるか。いつも試行錯誤しています」(池田さん)。
安心を得るためには、船会社と連携し、航路上にある荷物の状況を把握しておくことも大切。
(提供:アイランデクス株式会社)
「困っている人の役に立ちたい」という実直な想いが、多くの協力会社との連携を実現し、依頼者との信頼関係につながっているようだ。池田さんは新しい島へ行くときには必ず、市役所、観光協会、不動産会社へ顔を出すという。そこで行うのは、「御用聞き」。あいさつはもちろん、島の課題を知ることでビジネスにもつながっていく。
最近力を入れていることのひとつに、宮古島全域で取組んでいるシュノーケリング・サップツアー「浮人」がある。島の観光が盛り上がるなか、海の知識や安全性を担保したマリンガイドが不足していることを知り、事業化したという。
「会社が成長して仲間が増えると解決できることも増えていく。自分が好きな海や島に関わって、これからも課題解決を第一にやっていきたいです。引越しのお客さんはUターンの方が多いのですが、彼らの島への想いを聞いているうちに、僕自身、自分の実家や故郷の愛媛県に興味を持つようになりました。それは離島に関わり始めたときは予想しなかった自分自身の変化ですね」(池田さん)。
【関連サイト】
アイランデクス株式会社
2015年、島の物流を担う会社として産声をあげ、2018年より株式会社に。離島専門の引越しや車両運搬、不動産事業、デザイン事業や地域活性など多岐にわたる事業を展開している。



離島経済新聞 目次
『季刊ritokei(リトケイ)』島々仕事人
「島々仕事人」は島と島をつなぐ仕事に携わる仕事人の想いを紹介する企画。日本全国の「島」にかかわる、さまざまな仕事人をご紹介します。
- 島々仕事人 #042 認定NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえ 森谷哲さん、末岡真理子さん
- 島々仕事人 #041 テクノラボ 林光邦さん・田所沙弓さん
- 島々仕事人 #040 シャボン玉石けん株式会社 松永康志さん
- 島々仕事人 #039 株式会社てしま企画 林亮平さん・林紗里さん
- 島々仕事人 #038 天草エアライン株式会社 営業部長 川﨑茂雄さん
- 島々仕事人 #037 株式会社おてつたび 代表取締役 永岡里菜さん
- 島々仕事人 #036 アンター株式会社 代表取締役 中山俊さん
- 島々仕事人 #035 株式会社萌す 代表取締役CEO 後藤大輔さん
- 島々仕事人 #034 株式会社Retocos 代表取締役 NPO法人リトコス 代表理事 三田かおりさん
- 島々仕事人 #033 株式会社かもめや 取締役COO 宮武周平さん
- 島々仕事人 #032 南西旅行開発株式会社 代表取締役 内山貴之さん
- 島々仕事人 #031 海と人をつなぐプロデューサー 長谷川琢也さん
- 島々仕事人 #030 一般社団法人 離島振興地方創生協会 理事長 千野和利さん
- 島々仕事人 #029 地域航空サービスアライアンス有限責任事業組合(EAS LLP)事務局長 畑山博康さん
- 島々仕事人 #028 KabuK Style Co-CEO 大瀬良亮さん
- 島々仕事人 #027 ジーエルイー合同会社代表 呉屋由希乃さん
- 島々仕事人 #026 上場企業を育てあげ、ふるさとの島に新会社を設立 サンフロンティア不動産株式会社 堀口智顕さん
- 島々仕事人 #025 「離島への引越しは高い」常識を疑い起業。アイランデクス株式会社 池田和法さん
- 島々仕事人 #024 minne GMOペパボ株式会社 阿部雅幸さん
- 島々仕事人 #023 「しまものプロジェクト」推進チームKDDI、ルクサのみなさん
- 島々仕事人 #022 「どこでもオフィス」「LAMP壱岐」 株式会社LIGのみなさん
- 島々仕事人 #021 「伝泊」山下保博さん
- 島々仕事人 #020 離島キッチン 代表取締役 佐藤 喬さん
- 島々仕事人 #019 合同会社GENEPRO(ゲネプロ) 齋藤 学さん
- 島々仕事人 #018 婦人倶楽部プロデューサー ムッシュレモンさん
- 島々仕事人 #017 「技術で島に貢献したい」T・プラン株式会社 寺下満さん・溝辺有さん
- 島々仕事人 #016 旅の輪九州 戸田慎一さん
- 島々仕事人 #015 アカデミック・リソース・ガイド 岡本真さん
- 島々仕事人 #014 株式会社エー・ピーカンパニー バイヤー 倉本満隆さん
- 島々仕事人 #013 SIMPLICITY(シンプリシティ) 飲食部門総括 梅原陣之輔さん・総料理長 渡辺一貴さん・プロダクト担当 井出八州さん
- 島々仕事人 #012 旅作家 小林希さん
- 島々仕事人 #011 東京愛らんどシャトル ヘリコプターパイロット 小野寺剛志さん
- 島々仕事人 #010 五島列島支援プロジェクト 小島由光さん
- 島々仕事人 #009 pokke104
- 島々仕事人 #008 せとうち暮らし編集部
- 島々仕事人 #007 離島引っ越しレスキュー隊
- 島々仕事人 #006 『しーまブログ』編集長 深田小次郎さん 4
- 島々仕事人 #006 『しーまブログ』編集長 深田小次郎さん 3
- 島々仕事人 #006 『しーまブログ』編集長 深田小次郎さん 2
- 島々仕事人 #006 『しーまブログ』編集長 深田小次郎さん 1
- 島々仕事人 #005 東海汽船船長 加藤治樹さん
- 島々仕事人 #004 「しま体操」島系のみなさん
- 島々仕事人 #003 佐渡料理店 きたむらさやかさん
- 島々仕事人 #002-2 鹿児島空港職員 五田加代子さん
- 島々仕事人 #002-1 副操縦士 水口健一郎さん
- 島々仕事人 #001 客室乗務員 林美穂さん