つくろう、島の未来

2024年12月21日 土曜日

つくろう、島の未来

人口約12万人が暮らす奄美群島には3,800もの島人ブログがあり、島人たちが投稿する日々の話題でにぎわっています。「島々仕事人」は島と島をつなぐ仕事に携わる仕事人の想いを紹介する企画。今回は、奄美のブログサイト『しーまブログ』編集長・深田小次郎さんです。

#02 ピラミッド型の出身者組織。でも若い人がいない。

3,800ものブログのうち9割8分は島人が書いているという『しーまブログ』。最近では地元新聞とのタイアップ企画なども実施しながら、着実に成長を遂げています。さらに深田さんは、奄美のしまっちゅ(=島人)が集まるイベントなども企画。その理由も伺いました。

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鯨本

『しーまブログ』のなかでも人気のあるブログ記事はどういったものでしょう?

深田

やっぱ、グルメですよね。『しーまブログ』のほとんどは島の人が見てるんで、たとえば「あの店行ってきたよ」みたいな記事があがると、「その店に行きたい」と思っている人が見てくれたり。あとは、行ったことがある店でも食べたことのないメニューの写真が載っていたりすると、今度はあれを食べてみようなかなとか……。多いっすよね、グルメ。どこでも一緒かもしれないですね。

鯨本

グルメは人気ですよね。また、最近は地元新聞さんともタイアップしていますよね。

深田

奄美大島には2つ新聞社があるんですが、地元紙でも他島の情報は意外と手薄になりがちで。そこで他島のブログを見ることで参考になることがあるらしくて。奄美新聞社と島を盛り上げるためにクロスメディアで何かできないか?ということで月に一度「奄美新聞記者が選ぶしーまブログベスト10」がスタートし、新聞紙面と『しーまブログ』上で発表しています。

鯨本

地元新聞に評価されるとなると、ブロガーのモチベーションアップにもつながりますよね。インターネットを見ないおじいちゃんやおばあちゃんでも、なぜか孫が地元新聞に褒められているとわかったり。

深田

あと、商売やってる人だと宣伝になったり。ブログランキングは年末12月に年間のアワードを発表したりで、これまで第2回目までやらせてもらってます。

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しーまブログアワードの受賞者たち

鯨本

なんか良い流れになっていますね。今後、『しーまブログ』としてはどんなことをされたいですか?

深田

やりたいことはいろいろありますね。そうしてると、よく「原動力ってなんですか?」「なんでそんなに島が好きなんですか?」って言われることがあるんですけど「好きだから」よりは、やっていたら「ここが問題がある」と気付いて、問題を解決しようとしたことが、今につながっているというのが強いイメージです。

鯨本

その感じすごくわかる気がしますね。

深田

たとえば、「東京で開かれてる島の郷友会に若い人がいない」という話を聞いたら「どうやったら若い人が来るのか?」と考えはじめて、じゃあ、若い人が集まるイベントをやって、そこから郷友会に案内できないかと考えたり。

鯨本

そのイベントのひとつが「しまっちゅ先輩の情熱教室」ですね。

深田

「しまっちゅ」っていうのは、奄美大島の方言で「島人」。奄美群島出身者で内地で活躍してる先輩を呼んで、その人に授業してもらおうっていう企画で3回やりました。第2回までは東京でやって、第3回は初めて関西でやってみました。

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しまっちゅ先輩の情熱教室の様子

鯨本

傍目から見ると本当に島が大好きな人が集まってがんばってるのかなって思うんですけど、いざ深田さんとお話すると、ある課題のもと、わりとさっぱり活動されているところはありますよね。もちろん島に対して想いはしっかりあるけど、無駄に熱いということではなくて。

深田

そうなんですよ。

鯨本

「郷友会(きょうゆうかい または ごうゆうかい)」とは、たとえば島出身で東京に暮らしている人の集まりのことですが、奄美にはものすごくたくさんの郷友会がありますよね。

深田

奄美はすごいですよ。「東京奄美会」っていうのがどーんとあったら、その下に東京奄美大島会(奄美大島の郷友会)、東京喜界会(喜界島の郷友会)、東京徳之島会(徳之島の郷友会)と、各島に分かれてて、それがさらに各市町村に分かれてて、東京笠利会、東京名瀬会とか。さらに笠利のなかでも集落ごとに分かれていて……もうすごいんです。組織がピラミッドになっていて。

鯨本

すごいですね。

深田

年間のスケジュール見たら土日は絶対どこかの会合が入ってます。だから役員になったら全部に顔を出さないといけない(笑)。

鯨本

いやぁ、すごいですね。それで、そこに若い人がいないんですね。

深田

理由はよくわかりますよね。ありすぎなので……。

鯨本

それで「しまっちゅ先輩」を始めたわけですよね。そういえば、この間、深田さんのFacebookを見ていたら、東京で島の若い人が集まるイベントに参加されていましたよね。

深田

あれは同級生の繋がりですね。若い人が50人とか80人とか普通に集まるんですよ。学校は違うけど同級生ってことで求心力がすごいんですよ。

鯨本

へえ。

深田

年齢層見たら28歳から32歳くらい。50人が集まるというので、ちょっと行ってみようかなと思ったんです。

鯨本

そのイベントはどうやって知ったんですか?

深田

LINEでまわってきた、ただそれだけなんですよ。しかもみんな知り合いかといえば、あんまり知らないんです。

鯨本

不思議ですね。イベントが「五島会」という名前だったので五島列島かと思ったんですよ。そうじゃなくて、奄美5島の意味なんですよね。

深田

その前は徳之島、沖永良部島、ヨロン島の3島で一度やったみたいなんですよ。それが5島になって「お前どこ?」「俺、奄美」「俺、徳之島」とか。ノリが若い(笑)。

鯨本

出身島が違う島人でも、東京で集まるとおもしろいですよね。もしかすると昔、部活とかで会っていたりするんでしょうね。

深田

そんな感じだと思います。まさしく。

鯨本

なんだかんだ、東京に居る人たちって集まってるんですね。

深田

集まってますね。

鯨本

「しまっちゅ先輩」に集まっている人はどんな感じですか?

深田

イメージしているよりは、まだ若い人が来てないのが正直なところです。若い人たちはなかなかコンタクトが取れないんですよね。

鯨本

「若い人たち」というと20代くらい?

深田

そうですね、20代前半。学生とか。

鯨本

若い人たち皆さん、何をしてるんでしょうね。かつての深田さんのようにバンド活動とか……。

深田

バンドかぁ……。

〈#03「昔ほど、島に劣等感ってないのかもしれない。」へ続く〉


深田小次郎(ふかだ・こじろう)

奄美大島笠利出身。高校時代は鹿児島で野球に励み、21歳でロックバンドでプロを目指し上京。27歳まで音楽活動を続けた後、夢をリセットし司法書士の試験を受けるも合格には至らず。通信社での経験を活かして2010年2月に『しーまブログ』を立ち上げ、編集長に就任。

(文・鯨本あつこ/写真・大久保昌宏)

     

離島経済新聞 目次

『季刊ritokei(リトケイ)』島々仕事人

「島々仕事人」は島と島をつなぐ仕事に携わる仕事人の想いを紹介する企画。日本全国の「島」にかかわる、さまざまな仕事人をご紹介します。

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