人口約12万人が暮らす奄美群島には3,800もの島人ブログがあり、島人たちが投稿する日々の話題でにぎわっています。「島々仕事人」は島と島をつなぐ仕事に携わる仕事人の想いを紹介する企画。今回は、奄美のブログサイト『しーまブログ』編集長・深田小次郎さんです。
#03 昔ほど、島に劣等感ってないのかもしれない。
「郷友会」や「若手のイベント」はあっても、世代を越えた島人が集まる機会がなかなかできないことに課題を持つ深田さん。続いては、同じく奄美出身のアーティスト我那覇美奈さんや、奄美好きパーカッショニストのスティーヴ・エトウさんらとはじめた、島人の口から島を伝えるイベントについて伺います。
- 深田:
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今の人ってあんまり島に対してあんまり「劣等感」がないと思うんですよ。
- 鯨本:
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よく聞くのは元ちとせさんが有名になるまでは「奄美」自体があまり知られてなかったから、出身者の方が「奄美出身」ではなくて「鹿児島出身」と言われていたと。
- 深田:
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そうですね。僕らの頃もまだちょっとあった気がするんですよね。
- 鯨本:
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たしかに。それからすると、最近は離島ってイメージが変わってる気がしますね。
- 深田:
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そうですよね。離島経済新聞さんのご尽力もあったり、離島っていうものの見方を変えてくれた。
- 鯨本:
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ありがとうございます。以前は離島の話題でも、もうちょっと暗い話が多かったように思います。もちろん課題はありますが、最近は島の方ががんばってる活動のほうがが目立ってきたように思います。深田さんは「しまっちゅ先輩」のほか、さらに「dearどぅしでぃや」というイベントもされていますよね。
東京の真ん中で、奄美群島のコアな情報をお届けする「Dear どぅし でぃや」。ライブ中の1枚
- 深田:
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「dearどぅしでぃや」の「どぅし」は「友達」で「でぃや」は「だろ」という意味。「友達になりましょー」的な意味のイベントです。
- 鯨本:
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いつ頃から始めたんですか?
- 深田:
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これは2012年の夏に、我那覇美奈さん(奄美大島出身のアーティスト)が東京でライブをするのに「何かできませんか?」という話が僕のとこに来たので「ふるまい酒でもやったらいいんじゃないか?」と話したのがきっかけで。黒糖焼酎をふるまいながらPRして、我那覇美奈さんがライブして、そのバックでスティーブ・エトウさん(パーカッショニスト兼奄美はぶ大使)がパーカッション叩くイベントにしました。
- 鯨本:
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楽しそうですね。
- 深田:
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その後、3人で島のイベントをやったらどうかねという話になり。ライブにちょっとトークを加えて、島人の口から島の良さを語る場にしてはどうかな……ということで、島人が島の良さを都内で語るイベントとして2012年10月にはじめました。
- 鯨本:
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私もおじゃましたことがありますが、結構、開催されてますよね。
- 深田:
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3ヶ月に1回くらいのペースでやってますね。
- 鯨本:
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ハイペースですね。少し前に渋谷のクラブで開催された「dearどぅしでぃや」におじゃましましたが、渋谷のクラブに幅広い世代の人が集まっていて。赤ちゃんからおばあちゃんまで、奄美に縁にある人たちがクラブにいるわけですよ。それがすごくおもしろかった。毎回、たくさん集まっていますよね。
「Dear どぅし でぃや」。イベント参加者との集合写真
- 深田:
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「dearどぅしでぃや」は毎回、テーマを変えていて、今回が「屋仁川(やにがわ)」という奄美大島の繁華街特集なら、その次は喜界島特集……と、その土地のおもしろさを再発見したり、ちょっとマニアックな情報を教えてあげたりというイベントです。今度もまた、今度は徳之島特集なんですが、徳之島は「闘牛の島」なんで、闘牛博士を招いて闘牛の話を……。
- 鯨本:
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闘牛のお話、面白そうですね。
- 深田:
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徳之島の人に家に遊びにいくと、「いいもの見せるから!」と言って、見せられるのが闘牛のビデオだったり。
- 鯨本:
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熱がものすごいですよね。
- 深田:
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なんであんなに熱狂するのかが知りたくて。
- 鯨本:
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でも、深田さんの奥さまは徳之島ですよね。
- 深田:
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うちの嫁も、みんな同じTシャツを着て(闘牛の)応援してる写真があったり。Tシャツとかタオルとか、そういうのも全部作るんですよ。
- 鯨本:
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島の人たち、タオルとTシャツ好きですよね(笑)。
- 深田:
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Tシャツだらけですよね、島はなにかにつけてすぐ作る(笑)。絆を高め合うのが好きっていうか。
- 鯨本:
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おもしろいですよね。「dearどぅしでぃや」は奄美群島をまわっているから、島によって全然違うところが面白いですよね。喜界島と徳之島では全く性質違いますもんね。ヤギとウシぐらいの違い。
- 深田:
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うまい!ヤギとウシだ!たしかに(笑)。
- 鯨本:
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それで深田さんが以前おっしゃっていたんですが、最近はイベント諸々を開催するにあたって、島の人たちが集まって楽しむ目的もあるけど、「都会の人に島の良さをおすそわけしたい」と。それがいいなぁと思ったんです。離島経済新聞でも、最初は「島のために」が強かったんですけど、最近は都会の人たちに「おすそわけしたい」という気持ちがあります。
- 深田:
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東京にいると、島の良さを求めてるのがすごい分かるんです。だから、これをやったら内地の人は喜ぶだろうなっていうアイデアがいくつかあって、そういうのを提供できるようになれば、おもしろいなと。ただ島のものですよと商品を並べるより、そういうアイデアと奄美をパッケージにして出していくのが、良いんじゃないかなと思ってます。
- 鯨本:
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良いですね。
- 深田:
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それが強引な形でじゃなくて、自然な形でできるのが一番良いんだけど。もっと自然発生的に誰かがやりはじめんかなあって、そういうのが出てきたらそこを後押しして、やれーみたいな感じにしたいっていうのがあって、「しまっちゅ先輩」とかもほんとはそうなんです。
〈「#04「表現の一つとして「島」がある。そうなればおもしろい」へ続く〉
深田小次郎(ふかだ・こじろう)
奄美大島笠利出身。高校時代は鹿児島で野球に励み、21歳でロックバンドでプロを目指し上京。27歳まで音楽活動を続けた後、夢をリセットし司法書士の試験を受けるも合格には至らず。通信社での経験を活かして2010年2月に『しーまブログ』を立ち上げ、編集長に就任。
(文・鯨本あつこ/写真・大久保昌宏)