2017年7月、これまでに訪れた日本の島は83島、島旅関連の著書も多いイラストエッセイスト・松鳥むうさんの新著『あちこち 島ごはん』と『日本てくてく ゲストハウスめぐり』が出版された。著者の松鳥むうさんに、旅先での出会いや交流、島ごはんの楽しみなど、島旅の楽しみ方について話を聞いた。
左:『あちこち島ごはん』(芳文社)/右:『日本てくてくゲストハウスめぐり』(ダイヤモンド社)
島旅に出たくなる『あちこち 島ごはん』
松鳥むうさんのコミックエッセイ『あちこち 島ごはん』(芳文社)が、2017年7月に出版された。
本著では、北は礼文島(れぶんとう|北海道)から、南は波照間島(はてるまじま|沖縄県)まで、全国の島々で味わったおいしい島ごはんや旅のエピソードが臨場感たっぷりに描かれている。本の後半は、島以外の旅ごはんや日々の食事についてのエピソードが綴られている。
これまでに訪れた日本の島は83島にも及び、島旅関連の著作も多い松鳥さんは、「各地の海山の恵みを活かした独特の『島ごはん』とともに、旅先での人との出会いや大切な思い出を描きました」と語る。
礼文島では、鮭と野菜を味噌ダレと共に鉄板で蒸し焼きにする北海道の郷土料理「ちゃんちゃん焼き」のアレンジレシピ「ホッケのちゃんちゃん焼き」に遭遇。「こんな身厚でぷりっぷりなホッケ人生初!!」とのけぞり、ホッケを焼いてくれた大将の優しさに感動するむうさん。
また、小豆島(しょうどしま|香川県)では、素麺工場の娘さんから干しているうちに折れてしまった素麺の切れ端をもらい、その場でパクリ。「このしょっぱさッ!!止まらーん!!日本酒ほしいーッ」と脳内で素麺革命が起きた様子がユーモアたっぷりに描かれている。
さらに、椿で赤く染まった冬の伊豆大島(いずおおしま|東京都大島町)では、摘んだばかりの明日葉が柔らかく苦味のないことに驚き、居酒屋の主人が工場から直接仕入れた、加工途中の「くさや」を食べ、柔らかく独特の臭みが少ないくさやに感激したと言う。
そのほか、弓削島(ゆげじま|愛媛県)の野草をつかった「摘み菜ごはん」、福江島(ふくえじま|長崎県)の「鬼鯖(鯖寿司)」、御所浦島(ごしょうらじま|熊本県)の「鯛茶漬け」、鹿児島県・トカラ列島の諏訪之瀬島(すわのせじま)で体験したトビウオ漁と自作した「トビウオの炊き込み御飯」、鹿児島県の口永良部島(くちのえらぶじま)、屋久島(やくしま)、奄美大島(あまみおおしま)のジビエ(※)にまつわるエピソードなどが展開。
※ジビエ…狩猟によって食材として捕獲された、野生の鳥獣や狩猟肉
読み進むほどに、島に行かないと食べられない数々の「島ごはん」を想像して、お腹が空いてくる。そして、まだ見ぬ味を求めて旅に出たくなってくる一冊だ。
小笠原諸島のホエールウォッチングなどの体験レポートも
世界自然遺産の小笠原諸島(おがさわらしょとう|東京都)の「ホエールウォッチング」や、琵琶湖に浮かぶ沖島(おきしま|滋賀県)の「千円畑」、漁業の盛んな篠島(しのじま|愛知県)の「しらすの水揚げ」など、楽しく興味深い体験レポートコーナーは、細かく描き込まれたイラストの隅々まで目をこらしたくなる。
なお、カバーを外した表紙と裏表紙にも4コマ漫画が隠れているので、お見逃しなきよう。
同じく7月に発売の『日本てくてくゲストハウスめぐり』(ダイヤモンド社)では、松鳥さんがこれまで泊まり歩いた全国100軒以上のゲストハウスの中から56軒のおすすめ宿をピックアップ。天草下島(あまくさしもじま|熊本県)でゲストハウスを営む家族との交流をはじめ、地元の方々との温かな触れ合いが描かれている。
掲載されている島宿の一例:
天草西海岸 Backpackers 風来望/天草下島(あまくさしもじま|熊本県)
ゲストハウス花野/淡路島(あわじしま|兵庫県)
FIELD INN 星観荘/礼文島(れぶんとう|北海道)
出羽島ゲストハウス シャンティシャンティ/出羽島(でばじま|徳島県)
ゲストハウス 雨通宿/福江島(ふくえじま|長崎県)
みなとやゲストハウス/壱岐島(いきのしま|長崎県)
シェアハウス宝島/宝島(たからじま|鹿児島県)
7/21東京、7/30大阪で、出版記念イベント
新刊2冊の発売を記念して、7月21日(金)に東京の「旅の本屋のまど」で、7月30日(日)に大阪の「あたらしい旅と暮らしの発信基地 wanderers!(ワンダラーズ)」で発売記念トークライブが開催される。詳しくは、各イベントのホームページでご確認を。
(文・石原みどり)
【イベント情報】
旅の本屋のまど(東京・西荻窪)
(イベントページ「日本のゲストハウスを巡ってみよう!~おいしい島ごはんもね~ in 旅の本屋のまど」よりお申込み)
松鳥むう×ゲストハウスプレス
日本のゲストハウスをてくてくめぐる in OSAKA
【書籍関連サイト】
『あちこち島ごはん』(芳文社)
『日本てくてくゲストハウスめぐり』(ダイヤモンド社)
東京在住、2014年より『ritokei』編集・記事執筆。離島の酒とおいしいもの巡りがライフワーク。鹿児島県酒造組合 奄美支部が認定する「奄美黒糖焼酎語り部」第7号。著書に奄美群島の黒糖焼酎の本『あまみの甘み 奄美の香り』(共著・鯨本あつこ、西日本出版社)。ここ数年、徳之島で出会った巨石の線刻画と沖縄・奄美にかつてあった刺青「ハジチ」の文化が気になっている。